115_妹は退屈をしている
「お兄ちゃん、暇です」
妹がド直球で応えようのないことを言ってきた。そんなもん知らんがな……といいたいのだが、コイツがそう言うということは『自分を楽しませろ』ということなので何か考えないと不機嫌になる。
「何をご希望で? ゲームでもするか? 最近出た新作買ってたろ?」
「なんでお兄ちゃんがご存じなんですか?」
「大喜びで居間で開封してたろ、それさえ忘れたのかよ」
「見られていたとは……お兄ちゃんに恥ずかしいところを見られましたね」
「いや、ゲームを開封して喜ぶのは恥ずかしくないだろ、手に入れにくいゲームだったしさ」
それでも納得いかないのか、阿地は恥ずかしそうにしながら話を変えた。
「お兄ちゃん、人はパンのみにて生くるものに非ずと言います。つまり娯楽はとっても大事だということです。だから私は悪くない、あと何か面白いことを考えてください」
俺は考えた末にスマホを取り出した。
「じゃあチーム組んで対戦でもするか? 暇なんだろ?」
「いいですね、じゃあお兄ちゃん! 私が強キャラを選ぶので、お兄ちゃんは支援キャラを選んでください! 二人で突破しましょう!」
威勢よくそう言っているのだが、阿地はゲームを始めてすぐにそのゲームではバランスが壊れるとまで言われているキャラを選択した。そのキャラを使うなら誰でも勝てるだろ、支援必要か? とは疑問に思ったが口には出さない。妹の機嫌を損ねることもないだろう。
「お兄ちゃん、このゲームには慣れていましたっけ? 私がリードしてあげますからきっちり敵を殲滅しましょうね」
自信満々にそう言っているのだが、コイツは俺がいないと大戦に手を出していない。おそらく今の環境すら知らないだろう。
「じゃあ案内を頼む」
そんなことは百も承知で白々しく俺は言った。
それから数回の対戦後……
「ぐぬぬ……何故勝てないんですか! これが定石の先述のはずなのに……」
そりゃあ最強なんて言われてたからみんな環境メタを考えるもんなあ、そう都合良くいつまでも同じ先述が使えるはずないだろう。
と言っても阿地の機嫌を損ねるだけだろうから……
「もう一試合やろうか」
「そうですね、次は上手くやりますよ」
俺は戦闘の準備欄で自キャラのコマンド編成を変えた。バフの種類を変えて支援しつつデバフもかけられる新しい方の先述に切り替えた。これでいい、負けないはずだ。
それから少しして……
「勝ったああああああああああ!!!!!!!!!」
バカみたいに叫ぶ妹を見ながら、必死にサポートをしていたこちらのことも考えろよ。必殺技撃たれたときにどれだけカバーしたと思ってんだよ。とは流石に言わないが、俺の事も少しは考えてほしい。
「良かったな」
そう白々しい言葉をかけると阿地からは、嬉しそうな「お兄ちゃんを勝たせてあげられました!」という言葉が出てきた。いろいろ思うことはあるのだが、阿地が俺のために何かをしてくれたと言うだけでも喜ぶべきなのだろう。
俺はそっと『ありがとな』、と言ってアプリを終了した。阿地も俺のために何をしようとしてくれたのがなんだか嬉しかったが、それを言うと調子に乗りそうなので黙っていた。




