012_妹と朝活
「コーヒーでも飲むか……」
今朝はなんだか目覚めが早かった。その事について、阿地のヤツがここ数日俺の寝ている横で正座して待っていたことが無関係ではないだろう。念のため五時にアラームをセットして寝ていたときに、アラームが鳴ったのですぐに起きたら横に妹が上からニヤニヤ俺の顔を見ていたのが正直怖かった。
いや、その顔がなんとも恍惚としていてこちらをニコニコ見ているので不気味でしょうがない。それに起きたのは五時なので、いつも六時に起きていることを考えると阿地のヤツは一時間以上俺の隣で顔を覗き込んでいたことになる……怖っ。
ここ数日、阿地が「料理は完璧に理解しました! 朝ご飯は任せてください!」と言っていた理由がこの時間を確保するためだと分かったときには正直怖いまである。
確かに妹は可愛いが、朝起こしてくれるならともかく、隣でじっと俺を見ているのは不気味なんだよ……俺の顔なんて見て何が楽しいんだ。
「違うんです! たまたまお兄ちゃんを起こしに行こうと思ったら寝ていて、起こすのも悪いかなって……」
などと当人が語っているが、起こせば良いし、そもそも眺める理由なんて無いだろと言いたいのだが、それを言ってしまうとなんとなく空気が悪くなりそうなので言わないでおく。
にしても朝目が覚めたら妹の顔のアップが目に入って、思わず体を起こそうとしたとに顔をぶつける距離感は詰め過ぎだと思うぞ。
「とりあえず朝飯にしようか」
会話をするとぎこちなくなりそうなので、とりあえず食事をしよう。コーヒーの一杯でも飲めばお互い冷静になれるかもしれない。
淡い期待を抱いたまま、二人してリビングに行った。
「……」
「いや、お兄ちゃんなんか言ってくださいよ」
「はいはい、俺の顔なんぞ見て何が楽しいのか知らんが、程々にしてくれよ」
「はい! 程々にしておきます!」
妙に威勢の良い返事だな、何かマズいことを言っただろうか?
「これからは程々にお兄ちゃんを観察することにします!」
程々と入ったけどさあ……普通はこういう時やめるじゃん? 今の一言は告白の返答で言うなら『友達でいましょう』くらいの意味で言ったんだが、字面通りに受け取ったら確かに程々なら許されると取れてしまう発言だった。次からは反射的に返事をするのは気をつけた方が良さそうだな。
「コーヒー飲むか?」
「そうですね、砂糖ミルクマシマシでお願いします」
なんとなくどこぞのラーメン屋のような注文だがまあいいか。席を立って二つのカップにコーヒーをいれてお湯を注いだのだが、その間ずっと阿地からの視線が気になった。怖々しながら何か用かと聞くと……
「え? 程々ならお兄ちゃんを眺めて体言っていったのはお兄ちゃんじゃないですか?」
そうですね、程々という言葉はどうとでも取れる曖昧な言葉でしたね、次から気をつけようと思います。
俺は安直な返事をすることの恐ろしさをよく知ることになり、正直少し後悔するレベルの無責任な発言を悔いた。




