011_微睡みの中で
今日はぬるま湯のような暖かい日だ。こんな日は一日惰眠を貪りたくなるな……
「おにいちゃーん……いますか?」
その声が阿地のものであることは分かった。ただ、今は眠気の方が強い。自分の意志の弱さが嫌になるが、そのまま寝続けることにした。
カチャリ
何かの音がしたのだが、もう意識は半分……いや八割くらいが眠りの世界に飛んで行っていてそれが何かを考えるような余裕は無い。家の鍵だってきちんとかけているのだからそれほど危険は無いだろう。
「お兄ちゃん…………よし、……てますね……うちに……」
柔らかいぬくもりの中で眠気に包まれていたのだが、何か声が聞こえているうちに日が高くなってきたのだろうか? なんだか温かさが強くなった気がする。ただ、もうすでに暖かさに包まれていたので、気持ちの良い天気だなと思いながらそのまま寝てしまった。
いつ頃だろうか? かなり寝たような気がするし、実はわずかに微睡んだだけかもしれない。たっぷり寝たかどうかは分からないが、なんだかスッキリした気分で目が覚めた。ここのところ予習を必死にやっていたので明日が休日の日は随分とゆっくり眠れた。
ふと窓の外を見ると、茜色の光が差し込んできている。どうも夕方まで寝てしまったらしい。
夕食を作るかとキッチンに向かうと、もうすでにそこにはブロック栄養食がサラダチキンと一緒に並んでいた。
「どうぞ」
阿地としてはごく一般的なメニューだが、今日は俺が夕食の担当ではなかっただろうか?
「ええと……夕食、用意してくれたのか?」
その問いかけに、阿地はなんだか機嫌がよさそうにしていた。
「ええ、お兄ちゃんには随分とお世話になりましたから」
「お世話にって……最近なんかしたっけ?」
「ほう……記憶に無いんですか。それは結構なことです。お兄ちゃん、また料理はいくらでも用意してあげますから、たまにはちゃんと寝てくださいね、体を壊しますよ」
俺に注意しているようなのだが、怒りを持っているわけでもなく、機嫌は良さそうにニヤけていた。何か良いことでもあったのだろうか? そんなことを疑問に思いつつも、阿地に問いかけるのはプライベートに踏み込むことになりそうだったのでやめておいた。
その晩、昼寝をたっぷりしたせいで眠気が来なかったのだが、眠れないのはそれだけが理由ではなく、隣の部屋から笑い声やバタバタする音が薄い壁のせいで聞こえてきたからと言うのも理由の一つだった。




