010_教師が人間だとは限らないでしょう?
「さてお兄ちゃん、今日は夕食に私が作った卵焼きは如何ですか?」
「なんだよいきなり、珍しいな、いっつも自分が当番の日は買ってきて『こっちの方が美味しいから』でゴリ押ししてたじゃないか」
「失礼ですよ! 私はきちんと料理を勉強したんですよ!」
「この小さな家の中で誰に習ったって言うんだよ? 外出は設定が固まるまで出来ないだろ」
自分でもメタネタ言ってる自覚はあるのだが、誰に学んだのだろう? 男が関わると妹へのユニコーンたちが黙っちゃいないと思うのだが……
「いいですか、時代はAIなんです! AIに料理の作り方を聞けば完璧に堪えてくれるんです」
堂々と言い切ったな……本当にそれでいいのか? 正直嫌な予感しかしないんだがな……
「で、本当にまともな料理ができるんだろうか? 今から不安要素が多すぎるぞ」
「任せてください! 最先端技術の力を教えてあげますよ!」
大丈夫かなあ、今から不安しかない……と思っているあいだにアイツはキッチンに向かった。早速卵と塩を用意しているが、砂糖が見えないような……もしかして砂糖入りの出汁でも使うのだろうか?
そんなことを考えていたら早速フライパンを出してきた。卵焼きだよな? ウチって四角い専用の卵焼き機があったような気がするんだが、早速道具の選定から間違えているような気がしてならない。
なんだか怖くなってきたし、一応キッチンには火災報知器とコンロの安全装置があるから大丈夫だろうしその場を離れることにした。危険は無いのだろうが、そこにいると気になって仕方ない。
キッチンから出ながらなんだかジュウジュウという卵焼きに似つかわしくない音を聞いたような気がする。
そんなことを考えながら部屋でソシャゲのデイリーを消化したところで声がかかった。出来上がったから食べようと言うことだ。
呼ばれてキッチンに行ったのだが、思っていなかったものがテーブルにはあった。
「これ、目玉焼きだよな?」
俺はテーブルに乗っているものを確認する。どう見ても目玉焼きだった。卵を焼いたものには違いないのだが、卵焼きを想像していた身としては意外だった。
「そうですよ、上手な卵の焼き方を調べたらこれが出てきたんです!」
曇りなき眼でそういう阿地に対して否定は出来なかった。確かに目玉焼きの周辺が少し黒ずんでいる。なんなら油を敷いていなかったこともあって黄身が潰れたりもしている。
だとしても、だからなんだと言うのだろうか? 自分の可愛い妹が兄に対して真摯に作ってくれた料理だ。マズいなんて事があってまたるか。これは世界一美味しい卵焼きだし、それを誰かに否定されるいわれもない。
その日の昼食は、随分と久しぶりに晴れやかな気分で食べた気がする。




