112_妹と特別な日
「お兄ちゃん! 今日は何の日か知っていますか?」
阿地がなんだか嬉しそうに俺に訊ねてきたので考えて見たのだが、カレンダーに視線をうつしても何か特別な物は無い。何かの記念日なのかと考えたがやはり記憶が出てこない。
「悪い、忘れてるな」
妹は『まったくもう、お兄ちゃんはダメですね』と前置きしてから回答を言った。
「いいですか? 今日の夜には妹ヒロインのアニメが放映されるんですよ! 最近供給の少なかった兄妹モノのアニメですよ!」
クッソどうでもいいなと言いたいのを黙っておきながら、『そうなんだ、良かったな』と必死に顔色を取り繕って答えた。そんなことを兄に報告しないでくれよ、どうしろってんだ?
「ということで一緒に今晩は見ましょうか!」
「断る!」
俺は即断した。
「何でですかー! しばらく無かった実妹がヒロインの久しぶりのアニメですよ! これを放っておく手は無いじゃないですか!」
そんなどうでもいいことをしなくちゃならないのか……?
そもそも兄妹モノを兄にお勧めする妹ってどうなんだよと言いたくて仕方ない。しかも深夜帯だ。
「なあ、俺にそれを見せてどうしたいんだ? 面白いアニメなのか?」
「さぁ? ネットだとヒロインが実妹で実妹ルートに原作が入ったって書いてあったので面白いんじゃないでしょうか」
面白いの基準がヒロインの俗世で決まったら楽だろうな……ただ、ヒロイン次第で円盤の売り上げが違うってのは知ってるんだがな、それでもそれだけで評価を決めるのはどうなんだろうな。
「まあ今日は眠いから見ないが、面白かったら言ってくれ、配信で追うから」
行けたら行くレベルの適当な返事を返して話を流した。そうして妹と二人の夕食を食べて、一通りのことは終わったので寝ることにした。その時にふと、そう言えば今日でサブスクの更新期限だったな』と思いだし、更新するヤツとしないヤツを選別しようと枕元のスマホを手に取った。
それからサブスクの管理画面を出して、それとにらめっこをしていると、何か不自然な音がした。おかしいなと思いながらスマホを耳に近づけたのだがさっぱり音はしていない。おかしいなと思って聞き耳を立てると、なんだか熱狂的な声がドアの向こうから聞こえているようだ。
ふとスマホの時計に目をやると、現在は深夜、アイツの言っていたアニメの放映されている時間だった。
限界オタクみたいな声を聞きながら、妹が限界オタクやってるってまあまあキツいなと思った。せめて兄妹モノでなければ……などと思ったが、アイツはそういうヤツだな、と言うたった一言で納得してしまった。




