109_妹と夕食の価値とは
その日は夕食を用意していた。レトルトカレーだが夕食だと強弁すれば立派な夕食になる。細かいことは気にしないし、美味しければそれで十分だろう?
そう考えながらレトルトカレーのパックをレンジに入れて待っていると阿地がやって来た。
「お兄ちゃん、レトルトカレーで晩ご飯を済ませるのはどうかと思いますよ」
「でも美味しいじゃん」
「美味しいかどうかを問題にしてるんじゃないんですよ……メーカーだって毎日食べるのを想定して作ってないんじゃないですか?」
「もう少しメーカーも自信を持ってほしいな」
「そういう問題じゃないでしょう! もう少し栄養バランスを考えてってことです!」
妹のキンキン声に耳なりがしつつも俺は反論する。
「細かいこと気にしすぎだよ。料理なんて切ったり焼いたり立派な作り方をしなくてもいいんだって」
「今晩はお兄ちゃんが夕食当番の自覚あります? 私もお兄ちゃんと同じメニューを食べるんですよ?」
「じゃあ別に何か簡単なものでも作ろうか?」
「いや、お兄ちゃんと同じものを食べるから意味があるんじゃないですか。自分だけだったら適当にその辺にあるものを食べますよ」
そう断言する妹に呆れながら温め終わったカレーを取り出してもう一パック入れてレンジにかける。
「そんな深く気にすんなよ、生き辛いだろ? 一々完璧なんて求めても仕方ないんだって。程々ってもんがあるだろう」
我が妹ながら細かいことを気にしすぎな気がしてならない。料理なんてきちんと食べられて美味しければそれ以外まで求めるのは贅沢だと思うのだが、阿地からすればそういう問題でも無いのだろう。だったら自分が食事当番の時に頑張ればいい。
「まあ、お兄ちゃんが作ってくれたカレーなのでありがたく頂きますがね」
そう言いながら炊飯器からご飯をよそってカレーのパックを開けていた。なんだかんだ言ってもコイツは食べるんだよな。だから俺もそこまで凝った料理である必要はないと思うんだよ。
「さ、お兄ちゃんも用意をしてください! 一緒に食べましょうか!」
そう言っているときにレンジが音を立てた。よく出来上がるタイミングまで分かるものだと感心する。
カレーを一つ盛り、テーブルに着く。微笑ましい夕食を食べていたのだが、ふと聞いてみた。
「なあ、文句は言っても結局なんだかんだ言って食べるよな? この前肉をレンジで火が通るまで蒸してそれを出したときだって言わなかったよな? どこからが文句を言う料理なんだ?」
「ああ、そのことですか。お兄ちゃんの作る料理は大体『料理』としては失格ですよ。でも『お兄ちゃんの作った料理』としてなら何の文句もないですね。料理として文句はあってもお兄ちゃんの作ったものとしての価値はあるんですよ」
「そういうもんかね……難しいことはよく分からんな……」
そうして夕食を食べていった。阿地は『誰と食べるかが重要なんです』と熱弁していたのでそういう食事が好きなのだろうと思いながら自分のカレーを食べて夕食を終えた。




