107_妹にフラグは要らない
「退屈ですねえ……お兄ちゃんが唐突に愛の告白でもしてくれないでしょうか?」
「無茶振りすんな、出来ることとで気ないことがあるんだよ。というかなんのフラグも立ってないのに告白してくる男とか怖いだろうが……」
「私は生まれたときからお兄ちゃんルートのフラグは立ってますよ? あとはお兄ちゃんがルート選択をするだけでハッピーエンドです!」
どんなチョロさだよ……生まれを呪うのに理由は必要無いかもしれんが、誰かを愛するなら理由は必要だろうに……
コイツはなんの疑問も抱かずそんなことを言っているのだから怖くて仕方ない。本気で言ってるのだから手に負えない。良くそんなことを当たり前のように言えるなと思う。
「もう少し考えろよ、俺の人柄も知らない時点からフラグが立つってどう考えてもおかしいだろうが……」
「くだらないことを聞きますね、私が立派な人間なんですから血縁者のお兄ちゃんだって素晴らしい人に決まっていますよ! 考えるまでも無い事じゃないですか」
透き通った曇り無き眼でそう言うものだから正直怖いまである。どうしてそんな何の根拠もなく人を信じられるんだ……信じてもらえるってのは悪いことではないと思っていたが、ここまでの盲信は正直怖い。
「もう少し人を見る目を持てよ……俺なんか無条件に信じるとか兄として妹の将来が不安だよ……」
「お兄ちゃん、自信持ってくださいよ、私はお兄ちゃんを信じているんだから私以外の人にどう思われようが自由でしょう? お兄ちゃんに私以外の判断なんて要らないんですよ。私以外の誰が必要だって言うんです? 私はお兄ちゃんの全てを受け入れてあげるんですよ、それなのに他の誰かなんて必要無いでしょう?」
ヤンデレの発想ってこういうのを言うのかな? 正直ヤンデレが怖いといわれる理由の一端に触れたような気がする。正気かよと思わなくもないが、よく考えたら昔っからコイツが俺に関して正気だったことはないような気がする。そういうものだと思って気にしないようにしてきたが、生まれつきの信者ムーブをしてたな。
人はなんにでも理由を求めると言うが、それは理由がないと怖いからではないだろうか? 別に阿地が俺を信じるのは自由だと思うんだが、こじつけでもいいから理由が欲しいと思ってならない。
「まーたお兄ちゃんは考えてる。いいんですよ、妹に甘えるのは恥じゃないですから。甘々な私に存分に甘えてくれて構わないんです。他の誰かに甘えられるより私に無理な要求をされる方がよほどマシですから」
迷いなくそう言う阿地の笑顔はまぶしく見えた。ただ、その眩しさが正しいものかは分からない。ただ、この少し歪な関係をしばらくは続けてもいいかなと思う笑顔だった。




