106_妹は知らないことを知りたい
「お兄ちゃん! 新作のスマホ買ったので設定してくれませんか?」
その言葉に違和感を持った俺は訊ねる。
「いや、お前スマホのヘビーユーザーだろ。俺の助けなんてなくても設定くらい出来るだろ?」
そんなこと手伝わなくても設定を出来るのを俺は知っている。だというのに何故そんなことを言うのだろう?
「そりゃ初期設定のやり方くらい覚えてますよ。ただ、お兄ちゃんの連絡先を登録しなくちゃなりませんからね」
「電話帳と同期すれば大体勝手に入るだろ?」
当然の方法を提案すると阿地は世にも恐ろしい話をしてきた。
「お兄ちゃんのSNSアカウントもしっかり繋がっておきたいですからね、この際全部教えてもらっとこうかと」
おっと、突然危ない話を始めたな。SNSのアカウントなんてプライベートな情報を教えるわけがないだろう。家族にばれるなんてどんな罰ゲームだよ……ってか、繋がっておきたいってことは自分のアカウントもバレるだろ、ソレが平気ってことだよな? どれだけメンタルが強いんだよ……
「そこら辺は自分で探して見つけるのには何も言わんが、俺は教える気はないぞ」
「何でですか! 妹とSNSでも繋がっておきたいって考えが無いんですか!?」
いや、何を驚いてんだよ。そんなリスクをとるなんてやりたいはずが無いだろう?
「俺はネットはネット、リアルはリアルで分けておきたいんでな」
「何を言ってるんですか! 私はお兄ちゃんのことなら頭からつま先まで知っておきたいと思いますよ! まさかお兄ちゃんは私のことを知りたくないとでも!?」
普通に全部は知りたくないんだが……
「いや、全部はいいかな。知らなくてもそれでいいんじゃないかと思うぞ」
「え……ああ! お兄ちゃんなら私の全てを知っているからそんなことを改めて知る必要も無いってことですね! でも妹の最新情報を知りたいとか思ったりはしませんか?」
「そんな情報商材の宣伝文句みたいなことを言われてもな……別に全部は知らなくても支障は無いしな」
「えー……私がお兄ちゃんのことを知りたいんですからお兄ちゃんも渡しに興味を持ってくださいよ、妹に興味があるのは兄として当然じゃないんですか?」
別にそんなことはないだろう。というよりも知ってどうするんだよということを先に考えてしまう。
「何でも知るだけが相手のためだとは思わないぞ。知らないなら知らないなりに相手を思いやればいいじゃないか。全てを知ったところで正しい対応が出来るかどうかはまた別の話だろう?」
その言葉に阿地は渋々といった感じで頷いていた。何とか説得が通じたようで何よりだ。
そうしてその日は無事個人情報を探られることはなかったのだが、SNSの一つでソシャゲーのガチャ報告専用にしているアカウントに妹からのフレンド申請が来た。どうやら教えてもらえなくても調べることは出来るようで、妹の調査力に怯えることになった。




