098_妹とバタフライエフェクト
「お兄ちゃん、学校でSNS禁止って言われましたね、どうしましょうか?」
「家でスマホを操作しながらその質問をするんだな……」
「いいじゃないですか、実際辞める人なんて居ませんって」
それはそうだろうが、体面というものがあるだろうとは思う。好き放題スマホを使わせていればそうもなる。
「あの規制なあ……現実的かどうかはともかくとして、バレないようにやれって事だろ。全校集会で言うようなことかねとは思うがなあ……」
「今はSNSでなければいいんだと思ってクラスでお金を出し合ってチャットサーバーを借りてるんですよ」
「そこまでやるか……つーかチャットサーバーなんてよく用意出来たな?」
「お兄ちゃんが存在すると噂していたIRCとやらのサーバーを立ててスマホアプリでチャットをしてます。SNSって概念ができる前のものですから、これをSNSじゃないって強弁することも出来ますしね」
「ソレは詭弁だと思うんだがなあ……」
「中にはゲームのマルチプレイ用サーバーを借りてそこでチャットしてる人だって居ますよ。そんな教師のお気持ちで封じられないってことです」
知っているのかどうかは知らないが、その辺のことに詳しくない先生方が家庭でプレイするゲームや古代の技術に関心を持つとも思えないので、実質生徒を野放しにした結果になる。お気の毒なことだが生徒を御せるほどご立派な先生はいない。
「というわけなのでお兄ちゃんもチャットサーバーに入ってくれませんか? 権限も渡しますので」
「人に面倒事を押しつけるんじゃない、お前絶対自分で始めておいて管理が面倒くさくなったろ?」
「むぅ……じゃあお兄ちゃんはSNS禁止って言われて素直に従うんですか?」
「俺はちゃんと匿名で使えるサービスで特定出来ないようにチャットをしてるからな。そんな言葉遊びをしなくても正面切って指導を無視してるぞ」
「お兄ちゃんの方がタチが悪いと思いますよ? あと、誰かのスマホが没収されても大丈夫なようにしてるんですか?」
「もちろん、ちゃんと暗号化して送信してるよ、面倒だがな」
「言いつけなんてどうでもいいと思ってることだけは分かりましたよ」
「そもそもの話、メッセージの九割以上はお前からなんだから一々細かいことを気にしてるほど困んないんだよ」
「あっ……」
「察するな! 勝手に人の悲しさを察するな! ただ単に仲良しが大勢居なくてもいいだけだから! そんな悲しいわけじゃないから」
「うんうん……お兄ちゃん、今晩は美味しいカレーを作ってあげるのでよく味わって食べてくださいね」
なんともはや、学校でSNSが禁止されると妹に哀れまれてカレーをご馳走になるとは思わなかった。世の中ってのはわかんねーな。




