094_妹はライン上を動く
「お兄ちゃん、退屈ですねえ、チキンレースでもしませんか?」
「お前も俺も原付の免許さえ取れない年齢なのは分かってるよな? まあチキンレースする奴が免許持ってるのかは知らんが」
「いえいえ、そうではなくて表現のチキンレースですよ。私たちがこれから行動していってどこで怒られるかのチャレンジを……」
「辞めろ! それは俺ら以外にも迷惑がかかるからマジで辞めろ!」
あぶねえ……なんつー事を平気で言うんだ……正気の沙汰じゃないチャレンジを自然にするんじゃないよ。
「良いじゃないですかぁ……私だってお兄ちゃんと警告がつくようなことをしたいですよ」
「だから俺だけの問題じゃねえんだよ! 大事になりそうなことをするんじゃないって言ってるんだ」
「お兄ちゃん……私たちが目だったとして環境が変わるほど影響力があると思いますか?」
「……悲しくなるからそれは言うな……」
言ってはいけないことを言ったんだぞ、それは理解してくれよ。世の中欲望をさらけ出すのはリスクでしかないのを知らんのか。本当に疑問だが零細だって必死にネットを掘って叩きたがるヤツがいるという事実を理解しておいた方がいいぞ。
「つまんないですねえ……じゃあここで朝に場面転換して雀を鳴かせましょうか。それなら朝、雀が鳴いているだけのごく自然な風景ですよね」
「いやまあ……それはそうなんだが、世の中には想像力豊かな方がいらっしゃるから辞めとこう」
確かにそれだとただ単に鳥が鳴いているだけなんだが、場面的に不味いんだよなあ……理解してほしいもんだ。いや、その辺を理解してもらわない方が健全なのかもな。
「窮屈ですねえ、どうせ人間は大人になるんですから、潜在的に今は十八歳未満でもそのうち年を取るって強弁して十八禁の内容をぶち込んでも問題無いと思うんですけどね……」
「発想がおかしいだろ、その理屈で言えば年齢制限はなくなるし、お子様ランチはいずれ大人になるって理由で誰も食べられなくなるぞ」
詭弁を弄するのはやめて欲しいねえ。そんなことを安易に言うんじゃないっての。リスキーなことは避けるのが一番なんだよ。安全にはある程度マージンを取っておけ、いくら大丈夫だとしても溢れそうな用水路を見に行くような真似はするな。その時安全だとしても次の瞬間には氾濫している可能性を考えるべきで、安全にはそのくらいのマージンを確保しておくべきだ。
「分かりましたよ、じゃあお兄ちゃん、おやすみなさい」
「いきなりなにを言ってるか分からんがまあ一晩寝て健全な考えを養うんだな」
そう言って阿地の部屋を出た。それで済んだ話なのだが、俺が寝ようとしたときだ、薄い壁の向こうから咳が聞こえてきた。風邪でもひいたのかと心配になったのだが、咳がだんだん熱っぽい響きを帯びてきたので『ああ、そこは制限してなかったな』と諦め半分で寝た。




