第九十七話 甘くて苦くて甘い
更新が少し遅れてしまいすいません。第九十七話です!
バレンタインの日、14日になった。
「お!悠太、その不安そうな顔はどうした?」
「おちょくってるのか?」
「ちげぇよ。やっぱ、張り合いがないとな。」
「それは、おちょくってるの確定だろ。」
「バレたか?まあ、俺ら二人とも貰えたら良いな。」
「僕は……期待してないから……」
「そうか?期待してないやつそんな顔しないぞ。」
「見るな。もう授業始まるから。バイバイ。」
「報告楽しみにしてるぞ。」
まったく、多田も貰えるか分からないのにテンションが高いもんだ。
教室に入ると、男子がざわついていた。誰かの机にチョコが入っていたみたいだ。僕は、興味が無い雰囲気を出していたけど、正直少し気になった。
その日の授業は、とても長く感じた。昼休み、いつも通り、りおとひまりと三人でお昼を食べる。
その時、何とも言えない、距離を感じていた。会話も盛り上がっていなかった。そんな中、急にひまりが言った。
「ねえ、ゆうくん……」
「どうしたんだ?」
「これ……」
そう言って、渡されたのは箱だった。中身は、言うまでもなく分かる。
「下手くそだけど……頑張ったから、良かったら食べてね。」
ひまりが小さい声で言った。
「ありがとう。もちろん食べるよ。」
嬉しかった。心臓が苦しいほどに。
「うん。」
ひまりがいつも通りの元気な声で返事した。その声には、喜びと安心が感じられた。そのまま、いつも通りの昼が来ると思ったとき、りおが言った。
「ゆうくん。私からもこれ。」
「ありがとう。大事に食べるよ。」
りおは、あっさりだった。分かってはいたけど……ひまりも驚いていないから知っていたみたいだった。その後は、いつも通りで下校の時間になった。
りおが僕のところへ来た。
「今日は、ひまりと帰るからごめんね。」
「あ、うん。」
「大丈夫、気にしないで。チョコ、美味しく食べてくれたらそれでいいから。」
「分かった。」
「ひまり、頑張って作ってたから。渡すのも頑張ってたし、可愛かったでしょ。」
「そうだね……うん。」
「バイバイ。」
「バイバイ。」
急にあんな事を言われて、反応に困ってしまった。ひまりは、頑張ってたんだな。りおは、それを見守るお母さんみたいだった。楽しみだな。今日の帰り道も足取りが軽かった。
夜、食べることにした。
「まずは、ひまりのから。」
箱を開けるとクッキーとチョコが入っていた。形は、不格好だったけど、努力が見えた。
「いただきます。」
チョコを口に運んだ。
「甘い……」
それは、不思議な甘さだった。チョコの甘さよりも甘かった。次にりおのも開けた。中身は、生チョコだった。
「いただきます。」
食べると口の中でとろけた。
「凄い……」
りおのは、流石という味だった。ビターな感じで良かった。ひまりのを食べた後だからか少し苦かったけど僕好みの味だった。
そして、また、ひまりのクッキーを口に運ぶ。
「美味しい。けど、甘い……でも、それが良い。」
何か癖になる感じだった。ひまりのも、りおのもとても美味しかった。二つ交互に食べるともっと美味しかった。甘くて苦くて甘い、そんな繰り返しだった。部屋の中は、チョコの匂いで心地良かった。




