第九十六話 期待しないなんて無理
気づけば二月、あっという間だ。
「おい、悠太。二月だぞ二月!」
やけにテンションの高い、多田が来た。
「どうした?」
「どうした、じゃねぇだろ!」
「何かあったのか?」
「おい、嘘だと言ってくれ。二月といえばだよ。」
「二月……節分か?」
「それもそうだけど……あ〜もういい。バレンタインだろ!」
「あ〜そういえばあったな。」
「そういえば、じゃないだろビックイベントだろ!」
「でも節分のほうが先じゃないか。」
「違うんだよ。二月はバレンタインなんだよ。」
「そういうもんなのか?」
「そうだよ。今年は、貰えるかな?」
「貰ったことあるのか?」
「こう見えても小学生の時は、モテモテだったんだぜ。」
「小学生なんていつの話だよ。」
「おい!馬鹿にするなよ。そういう、悠太は、貰ったことあるのかよ。」
「ないけど……」
「無いのかよ!」
「あ、ちっちゃい時に貰ったけど……そういうのじゃないと思う。」
「確かに、お前は貰えなさそうだな。」
「おい、言い過ぎだろ。」
「今年は、どうかな〜?結果で見ようぜ。」
多田は、そう言って何処かへ行ってしまった。バレンタインか……気にしたこと無かったな。チョコを貰ったのは、小さい時だったし、友チョコ?みたいな感じだったからな……
その後、教室でりおとひまりも見たとき、もしかしたら、チョコをもらえるかもしれないと、変に意識してしまった。
「馬鹿だ。期待は、しないでおこう。」
「ゆうくん!」
ひまりが来た。
「どうしたんだ?」
「え、あの……チョコ好き?」
「え?」
なんだその質問は。どういう意図なんだろうか。
「いや、その……聞いてみただけ。」
誤魔化して聞いたつもりなのだろうか。
「まあ、好きだけど……」
「そうなんだ。ありがとう。バイバイ。」
「え?それだけ?」
気づいた頃には、去っていた。
「今、ひまりと話してたよな。」
自分を疑うほどあっという間のことで驚いた。
「どうしたの?ゆうくん。」
そこには、りおがいた。
「今度は、りおか。」
「ひまり、どこ行ったの?まさか、何か言ったの!?」
「言ってないよ。」
「じゃあ、どうして?」
「いや……チョコ好きって聞かれたから好きって、言っただけなんだけど……」
りおは、笑ってる。
「二人とも子供だね。」
「何だよそれ。もういいよ。」
何か見透かされてる感じがして、居心地が悪かった。
帰り道、その話を思い出した。ひまりがあんな事を聞いてくるなんて、バレンタインしか思い当たらない。僕は、期待しないなんて無理だった。その日は、軽い足取りで、家まで近く感じた。




