第九十三話 至難のテスト(後編)
テストが返却される日だ。いつもより、緊張感がある。ひまりの方を見るとソワソワしている。
「ふぅ〜」
学校が終わり、家で待っているとひまりが来た。
「こんにちは。お邪魔します。」
「どうぞ。」
「今日は、リビングなの?」
「ばぁちゃん、今居ないから。」
「空き部屋に行くか?」
「うん。」
「この部屋、良いだろ。」
「なんか落ち着くんだよな。」
しばらく、静かな時間が流れていた。だけと、僕はテストが気になりすぎて落ち着かなかった。
「で、ひまり。テストは、どうだったんだ。」
ひまりからテストを手渡された。少し悲しそう、とういうより悔しそうな顔をしている?その理由は、何となく分かった。約束が関係あるのだろうと……
勉強を教えていたあの日。
「だいぶ出来てきたぞ。ひまり。」
「うん。」
顔が暗い。らしくない。
「どうした?大丈夫か。」
「ごめん。ゆうくんも勉強したいはずなのに……」
「何だよ、そんなこと気にするな。ひまりに、教えても点数は、取れるくらい勉強してるから。」
ひまりが呆れるように笑った。
「何よそれ。僕、頭良いですよってアピール?」
「違うよ。応援してるんだ。というか、ひまりなら出来る。両方8割取ろう。」
「8割!?高くない?いつも良くて5割だよ。」
「出来たら何か聞いてやる。ジュースとかだったから奢るぞ。ご褒美は、いるだろ。どうだ?」
「分かった。頑張るから。達成したら聞いてよね。」
ひまりは、柔らかい顔で笑った。
ということがあったから……察しがつく。多分、良くない点数だったんだろう。良く出来ていた、英語から見ることにした。ひまりの顔を見ようとしたけど見ない方が良さそうだった。
あんな約束しちゃったんだからやるしかない。
「今日は、頑張るぞ!」
その夜、自分でもびっくりするくらい勉強した。気づけば、外が明るくなっていた。
「はぁ〜疲れた。もうこんな時間か……よし。」
学校に着いた。
「ひまり、おはよう。」
「りっちゃん!おはよ〜」
ゆうくんは、少しあとに教室に入ってきた。私のほうを見て頷いた。
「よし。頑張ろう。」
テストが終わった。ゆうくんは、特に何も聞いてこなかった。私は、自信があった。今までには、無いくらい出来た。これで8割取れた!
返却の日。ウキウキで学校に行った。英語が返された。点数を見たとき、私は喜べなかった。
「79点だ……」
高校に入って、最高点数なのに……喜べない、悔しいその後は、しばらく何も考えれなかった。
次に化学が返ってきた。
「62点……」
いつもは、30点くらいなのにすごく高い。だけど、喜べない。早く帰りたかった。学校では、ゆうくんのことは、見れなかった。すると、連絡が来た。
ゆう【家に来てくれたら良いぞ。待ってるから。】
ひまり【うん。分かった】
そう答えたけど、怖かった。ゆうくんが期待してたら楽しみにしてたら、がっかりされたら……そう思うと、ゆうくんの家に行く気には、なれなかった。だけど、今更逃げるなんてことはしない、重い足で家に着いた。
ゆうくんは、特に何も思ってなさそうな顔だった。テストと関係の無い話でも盛り上がった。それが逆に怖かった。ゆうくんに、テストを渡した時、それを観ようとした時、私はどんな顔をしていただろう……考えたくもなかった。
僕は英語の点数を見た。驚きしか出てこなかった。
「ひまり!良くやった凄いじゃないか。」
ひまりは、びっくりしていた。何も分かってなさそうな顔だった。
「いや……でも……」
「一日でここまで取れるとは、凄いよ!頑張ったんだな。」
ひまりの目から涙が溢れた。僕は、戸惑った。
「え……どうしたんだ?体調でも悪いのか……」
「違うよ。ゆうくん。」
詰まらせながら言う。
「安心したのかも。」
「ごめん。」
「え?」
「8割とか目標作って、無理させたな。」
「いや、そのおかげで頑張れた。あの後、家に帰ってからも頑張れた。だから、ありがとう。」
僕は思わず、ひまりの手を握った。
「教えて良かったと思ったから、僕は嬉しいよ。」
「うん。」
ひまりは、落ち着いていつも通りの調子で返事した。
「そういえば化学は?」
「62点だった……」
「凄い……そんな上がるのか。」
「8割は、いかなかった……」
「良いんだ。少しずつだぞ。というか、思った2倍くらいの点数で驚いたよ。」
「何点だと思ってたの?」
ひまりが詰め寄ってくる。
「悪い悪い。でも、本当に頑張ったんだな。」
「次も8割行けたらご褒美くれる?」
「ひまりがいいなら全然構わないよ。」
「分かった頑張るね。」
「ちなみにお願いは何だ?」
「それは、教えない。今日も勉強?」
「いや、ちょっと待ってて。」
あるものを取りに行った。
「今日は、勉強しないぞ。息抜きだな。はい、これ。」
「うん?クリームパン?でも私、8割……」
「そんなの関係ないだろ、一緒に食べよ。」
「うん!ゆうくん!」
ひまりの顔を見て、僕は少しドキッとしたのだった。




