第九十話 見覚えのある顔
※本日2話目です。
初詣に来ていた僕は、彩葉の要望でおみくじをする事にした。
「せ〜ので開けよ!」
「はい。」
「フライングなしね。」
「分かったから。」
「行くよ、せ〜の。」
自分のを見ると中吉だった。彩葉のほうを見ると、何か嬉しそうな顔をしている。
「その顔は聞くまでもないな。」
「え!?聞いてよ!ゆうにい。」
「どうせ、大吉だろ。」
「正解!何で分かったの?」
「顔に出過ぎなんだよ。」
「運勢全部良い感じ!」
「それは良かったな。」
「ゆうにいは、どうなの?」
「中吉だよ。」
「ふ〜ん。」
「何だその反応……」
「何が書いてあるか見せてよ。」
「良いよ。」
「ほら、ゆうにい、これ私の大吉。」
大吉なんて初めて見た。
「学問、安心して勉学せよ。彩葉良かったな。」
彩葉は、聞かずに僕のおみくじをジロジロ見ている。
「何してるんだ彩葉。」
「……ゆうにいの恋愛運、良い感じでびっくりしてた。」
「そういう所しか見てないのか……まったく。」
「だって、この人を逃すな、だって。誰なの?」
「はぁ?知らないよ。」
「ふ〜ん。待ち人も、すぐに来たり、だって。ほら、もう確定じゃん。」
「何が確定なんだよ。」
「もうちょっと、このおみくじ眺めさせて〜」
「ちょっ、おい、返せよ。」
「また、返すから。」
「まったく……」
彩葉は、僕のおみくじを持ったまま、上機嫌で鼻歌を歌い、人混みの中を歩いて行った。
人通りも少し減って、駐車場に着こうとしていた時、あることが起こった。
「まだ、人多いね。」
彩葉が言った。
「来年は、ここには来ないかな。」
「なんで?」
「やっぱり疲れるから。」
「そうなんだ……」
「でも、彩葉と来れたから楽しかった。」
「うん。ありがとう。私もゆうにいと来れて良かった。また、次は……」
その時、僕の視界が見覚えのある顔を捉えた。
「はっ!」
澄麗に見つからないように彩葉の手を取って、急いで木の裏に隠れた。
「ゆうにい、急に何よ!」
彩葉は、慌てていた。そして、何故か顔が少し赤かった。
「はぁ、少し熱いから離れて。」
「ごめん。」
「で、ゆうにい。急に何?」
「ほら、あの人。」
僕は、一人の女の子を指差した。
「何?ナンパでもするの?最低。」
「違うよ!ほら、あの人……澄麗じゃないのか?」
「え?」
彩葉がじっと見つめる。
「確かに、似てる。」
「だろ。今は、無理だ。」
「何で無理なの。早く声を掛けに行ったら……」
「駄目だ。とにかく今、会うのは、無理だ。」
「でも、もう会えないかもよ。」
「……彩葉、ごめん。」
兄としてまったく情けない姿を見せてるな。
「大丈夫。」
「彩葉……」
「きっと何か理由があるんでしょ。大丈夫だよ。だってゆうにい……だから。」
木の裏にしばらく二人で居たままだった。
帰りの車で彩葉は、爆睡していた。
「彩葉、ありがとう。妹が彩葉で良かったよ。」
彩葉にそんな言葉を掛けるとニッコリと笑った。
「幸せそうだな……」
この笑顔だけは、絶対に守りたいと思った。




