第七十三話 ケーキ作り
「ま〜ぜ、まぜ〜」
ひまりが機嫌よく歌いながら混ぜている。
「何だ、その歌は?」
「オリジナル混ぜ混ぜソング!」
「楽しそうだな。」
「ゆうくんは、楽しくないの?」
「楽しいよ、ひまりも居るし。けど大変だから。」
「大変?混ぜるの楽しいよ。」
「今は、そうだけどな。」
「りっちゃん、これどのくらい混ぜるの?」
「生地はそれなりで良いけど、メレンゲは、しっかり泡立つまでお願い。」
そう言われると、ひまりは僕の方を見てきた。
「ゆうくん、変わらない?」
メレンゲを混ぜているのは、ひまりだ。
「ダメだ。というか僕はもう大体出来たから。」
「そんな……これ、泡立つの?」
「さっきまでの楽しげなひまりは、どこいったんだ。」
「だって、もう大変だから。」
「美味しいの作るんだろ。」
「うん。」
「手伝うし、一緒に頑張ろう。」
ひまりが僕を見つめてきた。
「なんだ?」
「ありがと!」
僕は、咄嗟に目を逸らした。
その後、二人で一緒に混ぜたり、交互に混ぜたりした。最後の方は、ひまりはサボっていて僕がほとんど、やっていた。
「出来た……」
「ゆうくん、凄い!」
「はぁ、言いたい事はあるが疲れたからそれどころではないな。けど出来て良かったな。」
「美味しそう。」
「まだ、メレンゲだぞ。」
「りっちゃんこっからどうするの?」
ひまりが聞くとりおが来た。
「生地とメレンゲを何回かに分けて合わせていくの。」
「また、混ぜるの!?」
「そんなに混ぜなくて良いよ。」
「良かったー」
ひまりが安心したように言うと、りおは不思議そうな顔をした。
「混ぜるの大変だったの?」
「うん。めちゃくちゃ大変だったよ。混ぜても混ぜても泡立たないから。ゆうくんも力尽きちゃったし。」
「調子悪かったの?」
「調子?何の話?」
りおは、生地とメレンゲが置いてある所を見て、ハッとした顔をした。僕は、その顔で何となく分かった。りおがこの場を去ろうとしたので止めた。
「りお。待って。もしかしてだけど……」
「うん。言いにくいんだけど……」
「だよな。アレあるよな。」
「アレあったね。確か。」
「やってくれたな。」
「ひまりもゆうくんもごめんね。」
「りお、許されると思うなよ。」
「待って待って!二人とも何の話してるの?アレとか、許さないとか……」
ひまりは、話の内容が分からず置いていかれてた、みたいだ。
「りお。」
僕は、りおから話してもらうように言った。
「はい。実は……ハンドミキサーあったんだよね。」
「……え!?りっちゃん!それは、重罪だよ。ゆうくんも私も死ぬ気で頑張ったのに。」
「ごめんね。」
「りお。ひまりは、死ぬ気では頑張ってないから謝らなくて良いぞ。」
「でも、二人が頑張って作ってくれたから、きっと美味しいよ。」
「確かにりっちゃんの言う通りかもね。とびっきり美味しいのがきっと出来るよ。」
「二人がそう言うならそうだな。」
「じゃあ仕上げよう!」
型に入れて、オーブンで焼き終えた。
「いい匂いだね。」
「楽しみだな。」
「絶対美味しいよ。」
「ていうか、生地作ってるときから思ってたんだけど……」
「何?」
「このケーキ大きくない?」
「そりゃ、二人の誕生日分だから大きくなきゃ。」
「こんなデカいの食えるのか?」
「私とりっちゃんなら心配に及ばないよ。」
「そう言えばそうだったな。」
「男の子の前だから少食アピールしちゃおっかな?」
「じゃあ、僕がひまりの分も食べるよ。」
「ダメダメ!食べる!」
「今からアピールしたって手遅れだろ。しかも、いっぱい食べてるひまりのほうが好きだぞ。」
僕は無意識にその言葉が出た。ひまりのほうを見ると少し顔は赤かったが引いてるように見えた。
「え……」
「いや……もちろん、変な意味じゃないぞ。」
「わ、分かってるよ。」
「ご飯までゆっくり待っとこうか。」
パーティが始まるまで、少し気まずい空気が流れていた。




