第六十八話 二人だけの秘密
日も落ちて、そろそろ休憩するかと思い、顔を上げるとひまりが机に顔を伏せて寝ていた。
「おいおい……」
勉強に集中していて、気づかなかった。
「ひまり?おーい。」
声を掛けても起きない。身体が少し動いて顔が横に向いた。気持ちよさそうな寝顔だった。
「起こすのは、申し訳ないか……」
そう思ったけど、ばぁちゃんも帰ってくるので、リビングに居られたら困る。僕は、ひまりを抱きかかえて自分の部屋に行った。
「ここしかないよな……」
僕は、自分のベッドにひまりを寝かせた。
「おやすみ……」
そう言って部屋を出て、リビングで勉強を再開したが、気づけばウトウトしていて僕も眠りそうだった。
「やばい……寝るのは、まずい……」
そう言いながらも僕は寝てしまった。
次に目を覚ました僕はすぐに時計を見た。
「もう八時か……」
気づけば夜になっていた。
「あんた、いつまで寝てるのよ。」
ばぁちゃんの声で完全に目が覚めた。
「びっくりした。てか、ひまりは!?」
「ゆうくん、ごめん。」
「悪い、僕も寝ちゃったよ。」
「ううん。私が深い眠りだったから。」
「いつ起きたんだ?」
「さっきだよ。そしたらおばあさん居てびっくりしたよ。」
すると、ばぁちゃんが会話に入り込んで言った。
「あたしも、びっくりしたわよ。もう夜も遅いからひまりちゃん送って行きなさいよ。」
「分かったよ。行こうか。」
「うん。」
家を出て、ひまりの帰る方に向かって歩いた。
「ごめんね。勉強の邪魔して。」
「全然。ひまりも頑張ってたし、何より一人でやるより楽しかったからな。」
「そうだね。ゆうくんの料理も食べれたし。」
「りおには、内緒だぞ。」
「二人だけの秘密だね。」
「にしても、ひまりめちゃくちゃ寝てたな。」
「もしかして、寝顔見たの!?」
「いや……あれは、不可抗力だろ……」
ひまりは、顔を赤くして目を逸らした。
「悪かったよ。」
「起こしてくれても良かったのに。」
「あんな寝顔の人、起こせないよ。」
「くぅ〜ゆうくん、中々パンチ力あるね。」
「写真見るか?」
「え!?写真!?」
「あ……」
「ゆうくん、何の写真なの?」
ひまりが真剣な顔で聞いてきたので、答えないわけにはいかなかった。
「それは……まあ、寝顔の写真だよ……」
「馬鹿なの!?何でそんなの撮ったの?」
「いや、その……か……可愛かったから……」
ひまりは、さっきよりも顔を真っ赤にしていた。
「そんなの言ってもダメよ!」
「でも寝た方は、ジュース奢りだからその代わりってことで、どうですか?」
「そんなに私の寝顔の写真消したくないの?見せてよ。」
「はい、これだよ。」
「恥ずかしい〜。けど……まあ、可愛いって言ってくれてるなら良いよ。特別にね。」
「自分だけの家宝にするよ。」
「絶対それ見せて、いじってくるでしょ。」
「そんなことしないよ。」
「その言い方はやるね。やったらやり返すからね。」
「はい。分かりました。」
これもまた、二人だけの秘密になった。
「ちなみに、ゆうくんの部屋初めて入ったけど、意外と綺麗だったね。」
「意外とは、一言余計な。」
「運んでくれたのゆうくん?」
「そうだぞ。」
また、ひまりは、顔を赤くした。
「私のこと、抱えたの?」
「それは、そうだろ。どうやって運ぶんだよ。」
「そっか……女の子を抱っこだなんて……」
「仕方無いだろ……てか、寝た奴が言うな!」
「でも、ありがとね。明日は、一人で勉強するよ。ゆうくんも最終日くらい自分のためにね。」
「そうだな。一緒に頑張ろう。」
家に帰ってからまた、自分の部屋で勉強を始めた。ベッドを見ると、ここでひまりが寝てたのか……そう思うと、少し落ち着かなくなった。ひまりも僕も、勉強会の成果を出すことができるのだろうか。




