第六十七話 二人きりの勉強会
僕もひまりも立ったままで少し気まずい空気が流れていた。
「とりあえず座って良いぞ。」
「あ……うん。」
「紅茶飲むか?いや、オレンジジュースにするか?」
「ゆうくんと一緒ので良いよ。」
「じゃあ、紅茶にするよ。」
「うん。」
僕が貰ったティーポットで紅茶を淹れている所をひまりが、じっと見ていた。
「これ、気に入ってるんだ。」
僕がそう言うと、ひまりは、目を逸らして言った。
「あ……ありがとう。嬉しいよ。」
ひまりの声から様子がいつもと違う気がした。僕は、あまり気にしないようにした。
早速、勉強を始めた。たまに話す程度で僕もひまりも黙り込んで机に向かってペンを動かしていた。
「ゆうくん、ここの問題分かる?」
「あーこれは……いや、僕のノート見たほうがすぐ分かるかも。」
「ありがとう。字、綺麗だね。」
「そうか?字のこと褒められたこと無かったな。」
「初めてだね。」
「そんなことより、分かったのか?」
「うん!ありがと!……でも、なんで私にそこまで?」
「……頑張る人を見捨てるなんて出来ないから。」
「え……」
僕の言葉を聞いて、ひまりは頬を赤くした。
「いや……ほらな、二人でやった方が高め合えるし、僕もアウトプットしたらより定着するだろ。」
「そうだね、うん。ありがとう。勉強続けよっか。」
ひまりの違和感にソワソワしている自分がいた。
朝から勉強して、気づけば昼過ぎになっていた。
「一回、休憩するか。」
「疲れた〜。でも、ゆうくんも頑張ってたから頑張れた。」
「ひまり、良く頑張ってたぞ。」
「ありがと。」
「昼ご飯、僕が作るか、いや、出前でもいいか?」
「あ〜。でも、ゆうくんの料理食べたいな。」
「そんな上手くは作れないぞ。今、何があるか、確認してからにさせてくれ。」
僕は、冷蔵庫の中を見て考えた。
「オムライスくらいなら作れそうだけど……」
「本当に!?」
「うん。アレルギーとか嫌いなものとかあるか?」
「特にないよ。ゆうくんの料理食べれるの楽しみ。」
「そんなに、期待するなよ。」
「うん。」
ひまりは、そう言いながらもキラキラ目をして待っていた。気づかれていないと思っているのか、ひまりは、チラチラと僕の方を見ていた。そんな視線に、僕は少し緊張していた。
「出来たぞ。下手くそだけどな。」
「やった。食べていい?」
「どうぞ。」
「いただきます。」
ひまりが食べるのを見守った。一言目何を言うか、僕は心構えをして待った。
「うん。美味しい!」
「良かった。僕も食べよ、いただきます。」
良く出来ていて、安心した。黙々と食べ進め、気づけば無くなっていた。
「美味しくてあっという間だったよ。」
「そう言ってくれて嬉しいよ。」
「また、他のも食べたいな?」
「分かった。頑張ってみるよ。」
「やったー。楽しみが増えちゃった。」
「片付けたら勉強再開しようか。」
「うん。」
片付けが終わり勉強を再開した。朝からやっていることもあるからか眠気が凄い。ひまりも、眠そうだ。
「美味しいご飯、食べて眠いね。」
「僕も眠いよ。」
「お互いに寝ないように監視しとかないとね。」
「寝たら叩き起こしてやるよ。」
「寝たらジュース奢りはどう?」
「それ良いな!」
そんな冗談を言って笑っていた。――この冗談がそうでなくなることをこの時は、知らなかった。




