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第六十話 気まずい再会

※本日はもう一話、20時に投稿予定です。

 玄関に置いてあった靴を見て、僕は察した。今日、文化祭で彩葉が来ていたことを。つまり、彩葉は、今この家にいる。

「まじか……」

 疲れ果てた僕にとって、今、一番会いたくない相手だった。玄関でそんな事を考えてると祖母の声がした。

「あんたなの?何してるのよ。」

 重い足を上げて廊下を一歩ずつ歩いた。


「って……」

 リビングに行っても、彩葉は居ない。

「何よ、驚いた顔して、彩葉なら二階の部屋だよ。」

 祖母からそう言われた。少し期待した自分が馬鹿だった。祖母に彩葉の様子を聞くことにした。

「いつ帰ってきたんだ?」

「夕方過ぎくらいには。文化祭行ってたみたいだけど見てないの?」

「いや……見たと言うか、来たから……」

「私もあんま詳しいことは、知らないから。本人に聞きなさいよ。」

「分かったよ……」

 素直に諦めることにした。

「風呂入ってくる。」

 そう言って風呂場に向かった。


 脱衣場の扉を開けるとタオル一枚の姿の彩葉がいた。

「あ……」

 僕は、何も出来ず固まってしまった。

「きゃ〜、ゆうにい、最低!」

 そう言って強く扉を閉められてしまった。

「ごめん、彩葉。知らなくて。」

「そんなの良いから、どっか行っといて。」

 僕は、状況が悪化する前に自分の部屋に戻った。


「最悪だ……」

 今の自分からは、その言葉しか出てこない。どうするべきか……

「見えてしまったのは、しょうがないから……」

 と開き直るべきだろうか。それとも、

「ばぁちゃんが部屋にいるって言うから。」

 そう弁明するべきだろうか。こんな事を考えているが僕には、どっちのプランも彩葉には、響かないことが読めていた。

「どうしよう……」

 悩んでいると祖母が僕を呼ぶ声がした。

「あんたご飯できたわよ。」

 とりあえず階段を降りて、食卓へ向かった。


 そこには、もちろん彩葉も居た。正直、気まずすぎる。彩葉は、僕に目も合わせてくれない。

「いただきます。」

 食べていると祖母に言われた。

「二人ともどうしたの?何かあった?」

 あんたのせいだろ。と言いそうになったが何とか抑えた。

「いえ、私が久しぶりなもので緊張してるのかも……」

 彩葉がそう言って上手く誤魔化してくれた。その後は、自然な会話もして、気まずさはいつの間にか無くなっていた。けれど、さっきのことを話すことはなく、時間だけが過ぎていった。


 僕が風呂から上がり、リビングに行くと、彩葉がソファで一人くつろいでいた。気になって声を掛けた。

「何してるんだ?」

「ゆうにい、お風呂入ってたんだ。おばあちゃんもう寝たから電気とか消しといてね。」

 そう言って、彩葉は立ち上がり、部屋に戻ろうとした。

「待って。」

 僕は、話すチャンスは今しかないと思い、彩葉を止めた。反射的に止めたから、それ以降の言葉が出てこないでいると彩葉が喋った。

「分かったよ。聞くわ。」

 そう言って彩葉は、またソファに腰掛けた。僕の心が読まれてるかのような言葉に驚いたがソファに座って話すことにした。


「さっきは、すまなかった。」

「良いよ。事故なんだからしょうがないでしょ。」

 僕が予想していたのとは、全くの別角度からの返答だった。

「怒ってないのか?」

「そんなわけ無いでしょ。でも、ちょっと見すぎな気がしたけど……」

「あれは、びっくりしてただけだ。」

 僕は、強く安心した。もう言えることは言ったし、話を切り上げようとしたが彩葉が別の話題を切り出して喋りだした。

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