第四十四話 全力
トラックの中に並んだ。
「走り切ろう……全力で……」
リレーは、各団ニチームずつで計八チームの戦いである。それぞれのチームには、各学年から男女一人ずつ、計六人でバトンを繋ぐ。走順は自由だが、タイムを測ったりして決めるところや年功序列の所もある。けれど、僕と多田は、アンカーになることができた。
「アンカーで一年は僕と多田だけか……」
そう思って、周りを見渡すとやはり、三年生が多い。そんな中、もう一人だけ一年生がいた。
「多田、あの人って一年か?」
「そうだ。サッカー部のエースで学校一のイケメンとか言われてる。名前は確か……しゅん、だった気がする。」
いかにも、速そうな感じがする。
「ありがとう。お互い楽しんで頑張ろうな。」
「そうだな。全力で来いよ。」
自分に向き合い集中しようとした。だが、トラックの向こう側で騒いでる女子に気が散る。
「しゅん様ー」
イケメンの世界は、違うな。しゅん様が、手を振り返した。すると、
「キャ〜返してくれた!私に。」
「私だよ絶対!」
女子は、なぜこんなことで騒げるのだろう。
「ダメだ。集中しないと。」
そんなことをしてると最初の八人がスタートラインに立っていた。
「ただいまより、最終種目のリレーを始めます。」
会場は静かになった。
「位置について、よーい。」
ピストルの音が鳴り響いた。すると、すぐにグラウンドには、声援が飛び交った。すごい熱量だ。バトンが次々に渡っていく。
「もうそろそろか……」
あっという間に五走目だ。僕のチームは、五位にいるがそこまで前と離されていない。僕は、立ち上がり準備を始めた。四位で最終コーナーを回って来た。
「やってやるぞ……」
僕は、震える手でバトンを受け取った。
「絶対に落とさない。」
バトンパスが上手く行き、すぐに三位に出た。
「多田は、一位。二位はしゅん様か……」
まだ二人とも追い抜ける距離に居る。スピードを上げて二位に迫っていく。
「しゅん様〜頑張って!」
「キャーしゅん様〜」
すごい歓声が聞こえてくる。こんなところで負けてられない。多田に勝つために。
「ゆうくん、頑張って!」
りおの声がした。
「ゆうくん、そんなやつに負けるな!」
ひまりの声もした。
「そうだ、二人が応援してくれてる。」
クラスのみんなも二人につられて声援を僕に送った。全身に力が入り、ついに二位になった。
「一位まで……少し……」
最終コーナーで多田の横についた。ゴールだけを見て、全てを出し切った。
「ゴール!一位は、どっちだ!?」
多田と握手をした。息が上がっていて、喋れなかったがこの良い勝負を互いに認め合った。
「リレー優勝は……青団チームだ!」
青団から凄い歓声が聞こえる。
「勝ったのか……」
多田が言った。
「リレーは、お前の勝ちだ。やるじゃねぇか。」
「ありがとう。」
「感謝は、やめろ。来年は、徹底的にやるからな。」
「そうだな。」
そう話していると、しゅん様が近づいてきた。
「二人とも、とても速いね。カッコよかったよ。だけど、次勝つのは僕だから……」
そう言って、去っていった。僕と多田は、戸惑っていた。けど、ライバルが増えた気がした。
「来年は、三つ巴の戦いになりそうだな。」
「僕もそう思ったよ。」
競うって楽しいな。僕は、そんな感情を初めて知った。
クラスのところに戻るとりおとひまりが駆け寄ってきたけど、落ち着かせた。
「結果発表、終わってからにしよう。」
僕は、多田に勝つ為には、リレーだけではいけなかったからだ。――僕はドキドキしながらその時を待っていた。




