第四十三話 リベンジ
気づけば、僕は校舎の間の物陰に居た。
「何をしてるんだ……僕は……」
グラウンドに入れず逃げてしまった。午後の部は、始まっているだろうに。でも、あの日のことが蘇り、頭から離れなかった。それは、中学生の頃だった。
「悠太、リレー頑張ろうな。」
「多田、アンカーは、まかせたぞ。」
僕は、中学一年の時の体育祭でリレーに出ることになった。メンバーも良く。みんなからは、多田が最後にいるから何とかなると言われていた。しかし、そう上手くはいかないものだった。一人抜いて三位で最終コーナーを周り、多田へのバトンパスをするときだった。
「多田……行け!……あっ……」
バトンを落としてしまったのだ。多田は、すぐに拾って走った。けれど一位には少し届かず二位だった。
「多田……ごめん。」
「お前だけの責任じゃない。」
多田は、そう言ってくれたし、これ以降この話題を言ったりすることもなかったが、クラスでは、僕への冷たい態度や目線がずっと続いた。元々、友達が少ないからか影で凄い言われようもしていた。
「どうでもいい……」
強がって表面上では、そう言っていたが内心は、ボロボロだった。次の年も、その次の年もリレーには、出られなかった。いや、出させてもらえなかった。
「多田、ごめんな。今年もリレーは、出れなかった。」
「そうか……また、お前と戦いたかったんだけどな。」
僕は、その言葉を思い出した。
「多田は、僕を待っていたんだ。そして、あの二人も僕の背中を押してくれてる。」
自信が戻ってきて、恐怖は無くなった。
「他の奴らなんて、どうでもいい。――今度こそ、証明してやる。」
そう思って、グラウンドに戻った。
「ゆうくん、どこ行ってたの?」
ひまりが心配そうに聞いてきた。
「ちょっとお手洗い、行ってたら……」
「部活動リレー終わっちゃったよ。」
「私のだし巻き、ダメだった?」
りおも心配そうに聞いてきた。
「いや、少し緊張してるのかも……」
「そう。じゃあ、本番前うちらで背中押してあげるよ。」
「分かった。でも次は、大縄跳びだろ。」
大縄跳び、大玉転がし、綱引きと午後の部も終盤に差し掛かり、いよいよリレーの前になった。
「ここで、最終種目リレーの前に得点をチェックしたいと思います。現在一位は、赤団。二位は黄団。三位は青団。そして緑団。今年は、稀に見る接戦です。三位の青団までこのリレーの結果次第で優勝があります。」
ついに、来たか……
「ゆうくん、頑張ってね。」
「優勝だよ!約束!」
りおとひまりが僕の肩を叩いて、喝を入れてくれた。
「ありがとう。勝つよ……」
僕は、招集場所に向かった。――その時の僕は、今までにないくらいこの状況を楽しんでいた。心臓の音も、周りの歓声も、すべてが遠くに聞こえる。ただ一つ、ゴールだけがはっきりと見えていた。




