第三十二話 図書館
僕は、毎週水曜日にりおと図書委員の仕事をしている。本の整理や貸出、返却の対応などをしている。図書館は、人が来ないことが多いから仕事も少ない。
「今日も全然、人いないな。」
「いつものことね。」
僕は、暇つぶしに気になった本をいつも読んでいる。
「ゆうくんは、また本読んでるの?」
「せっかくだしな。」
「たまには……ほら、二人で話さない?」
「まあ……いいけど……何話すんだ?」
「いいのよ。話すの。」
「分かったよ。」
「ゆうくんって本好きなの?」
「うーん。たまに読むくらいかな。」
「どんな本?」
「ジャンルは問わずって感じかな。」
「なにそれ?でも、ゆうくんっぽいね。」
「馬鹿にしてない?」
「してな……くはない。」
「っておい。」
「じゃあさ、好きなものとかあるの?」
「最近は……勉強か。」
「真面目かよ!」
「真面目ですまないね。また、りおにも勉強、教えてあげるよ。」
「それは、ありがと……てか、好きなものは?」
「うーん。なんだろな……強いて言うなら一つ。」
「なに?」
「写真かな。」
「写真?」
「昔の写真を見直すと思い出が蘇るからなんかいいなって思って……あと、いい写真撮れたら嬉しいだろ。」
「なるほどね。ありがとう。」
「なんだありがとうって。りお、大丈夫か?いつもより変なこと言ってると思うけど……」
「そんなことないよ。それより、本の整理しに行こ?」
「そうだな。」
りおと一緒に返却された本を戻しに行った。
「あと一冊で終わりだね。この本どこかな?」
「あそこの列じゃないか?」
「ほんとだ。行こ。」
最後の一冊を戻しに行った。
「上の方だな。届くか、りお?」
「私は、ひまりみたいにそんなに低くないから。」
「そうか?」
「余裕だよ。」
そう言って、りおが本を戻そうとしていると、本棚から少しはみ出た本が落ちそうになっていた。僕は、気づいて知らせようとしたが遅かった。
「ほら、出来たでしょ!」
りおがそう言った瞬間……
「りお、危ない!」
僕は気づくと、とっさに手を伸ばして、りおに覆いかぶさるように落ちてきた本から守っていた。りおが目を開けると、
「ちょっと……何してるのよ!?近いって……」
そう言って、僕を両手で軽く突き放し、顔を背けた。横顔でも顔が赤くなっているのが分かった。
「なにが余裕だよ……危ないだろ。大丈夫か?」
「大丈夫。ありがとう……」
「良かった。気をつけろよ。」
そう言いながら僕は、頭を二回、軽く叩いた。
「……何すんのよ……子供じゃないんだから……早く……どきなさいよ。」
弱々しい声でりおが言った。僕は、ようやくその状況がアレなことに気がついた。
「そうだな……ごめん。」
すぐに僕はどいて、本を戻していると、カウンターから声がした。
「カウンター行くから、本戻しといてくれないか?」
りおは、軽く頷くだけだった。僕は、悪いと思う気持ちもありながらカウンターに向かい仕事をした。その日は、いつもの空気には戻らなかった。
家に帰った僕は気になって、何事もあまり、手につかなかった。けれど、明日にはいつも通りだろう……そう思うしかなかった。




