第二十九話 観覧車
「ここか?」
がった息と混ざるような声で僕が聞くと、彩葉はうなずいた。そこは、観覧車だった。入口には、父さんもいた。
「急にどうしたと思ったら、観覧車?言ってくれたらいつでも乗ったのに。」
「今、乗るの……。三人で。」
そう言って、父さんのもとへと向かった。
「ごめん、お父さん、少し遅くなって。」
「全然構わないよ。」
二人の会話も、なぜ観覧車なのかも、僕には分からなかった。
「最後、観覧車楽しもっか。」
彩葉がそう言うと一気に空気が明るくなった。三人で観覧車に乗った。それぞれ、窓の外を見てると少しづつ上がっていく。
「夕焼け、綺麗だな……」
写真を撮って、風景に見とれていると。僕は、アルバムのことを思い出した。
「せっかくだし、写真とらない?」
「ゆうにい、写真なんてどうしたの?私はいいけど……」
「俺もか!?まぁ入ってやるよ。」
三人で綺麗な夕日を背景に写真を撮った。
「ありがとう。いいのが撮れたよ。」
今日、ここに来て良かったと心から思った。そう、三人の写真を眺めていると、あることを思い出した。
あれは、弟が生まれる前、家族四人で遊園地に行った。ここではなかったが今日のように一日中、遊び回った。父さんがみんなで観覧車に乗りたいと言っていたが、僕がすっぽかして乗れなかった。
父さんは、その日のリベンジをしようとしてるのではと思った。けど、もう母さんが揃うことはない。僕は、過去の自分に腹が立った。観覧車が頂上に近づいたとき、父さんが口を開いた。
「二人とも今日は、楽しかったか?」
「楽しかったよ。」
彩葉はそう言ったが、僕は考え事をしていた。
「悠太、どうした?」
「父さん、彩葉、ありがとう。こんな家族の温かさを感じることなんてないから……嬉しかった……」
「そうか、それは良かった。俺も仕事で忙しくなるから、こうやって最後に楽しめて良かったよ。」
その言葉を聞いた瞬間、僕の苛立ちは無くなり、本当に良かったと思った。観覧車が一周しそうなとき、僕は言った。
「父さん、彩葉のことは任せてくれ。いや、彩葉なら大丈夫だろうけど、海外でも安心して仕事、頑張って。」
「決めたんだな悠太、本当にありがとうな。」
「僕も、成長したんだよ。」
「そうだな。俺も成長してくるよ。約束だ。」
この日、この観覧車で交わした約束は、一生切れることがないと感じた。観覧車を降り、車に向かっていると、彩葉が腕をつかんできた。
「なんだ?彩葉。」
「ゆうにい、かっこよかったよ。あんなこと、言えるようになったんだね。私、少し侮ってた。」
「なんだよ急に。少し以上に侮ってただろ。」
「バレた?」
「彩葉、今から好感度上げようなんて無理だぞ〜」
僕は、彩葉からそんなことを言われるのが恥ずかしくて、照れ隠ししてしまった。あんなことを言ったけれど、春から本当にうまくやっていけるのだろうか。決めた道なのにどこか心に不安が残っていた。




