第二十八話 手と手
こういうところに来るのは、いつぶりだろうか……僕の心の中では、彩葉と同じくらいテンションが上がっていた。
「あれ、乗りたい!」
彩葉は、そう言ってジェットコースターを指さした。
「いきなりか!?」
父さんがそう反応すると彩葉は、うなずいた。そういうわけで、三人で乗った。彩葉は、楽しそうだったが父さんは、もう無理そうだった。僕は、怖かったけど楽しかった。
「次はあれ!」
「今度は、あれやりたい!」
彩葉が楽しそうに、僕と父さんを連れ回していく。そんな彩葉を見てると嬉しくなってきた。
「一回、休憩だ。」
そう、父さんが言って三人で昼食を取った。
「彩葉、悠太、楽しいか?」
「すごく楽しいよ!」
彩葉がそう答えると、僕も言った。
「楽しい。」
僕は遊園地も、もちろん楽しかったが、それ以上に三人でこうして過ごせることが嬉しかった。そんなことを思っていると、父さんが言った。
「俺は、疲れたから少し休むよ、二人で回って来なさい。」
「分かった!ゆうにい、行こ。」
そういうことで僕は彩葉と回ることになった。
「あれ乗らない?」
「コーヒーカップか。いいぞ。」
二人で乗ると、彩葉が聞いてきた。
「なんで父さん、ここに連れてきたと思う?」
僕は、彩葉との仲を深めるためだと思った。一方で、ただ三人で久しぶりに休日がしたかっただけなのかもとも思い、答えに悩んだ。
「楽しむためじゃない?」
「そう?私は、分からない。けど、楽しい。」
その時の、彩葉の笑顔は今まで見た、どんな時よりも美しかった。次の瞬間、コーヒーカップが回りだした。
「うわ〜目が回る。回りすぎじゃない?彩葉、回しすぎだって……もう、無理……」
僕は、回りすぎて何も考えられなかったけど彩葉は、楽しそうな笑顔を浮かべていた。
「楽しかったな。個人的には一番だ。」
「うん。ゆうにいがずっと……おかしいからほんと面白かった。」
「おいおい、馬鹿にしてないか。まったく。」
「回りすぎってなによ。ほんと馬鹿みたい。」
その後、しばらくそのことで笑っていた。
「次、これやらない?」
「屋敷脱出?これ?」
「そう、おもしろそうじゃない?」
「怖いやつか……まあ、妹のお願いだしやるか。」
僕は、怖いのが苦手だが渋々入った。
「結構怖いな……早く出よう。な、彩葉。」
僕が横を見るとそこには、彩葉ではなく、白い布を被った女の霊がいた。
「うわ〜〜彩葉は?彩葉はどこだ?」
僕がビビってそんなことを言ってると、彩葉が物陰から出てきた。
「ゆうにい、ビビりすぎ。」
「ビビってなんかないぞ。」
「じゃあ、ゆうにい先行って。」
「それは、別だ。」
「先行って!」
僕は、先に行くのだけは避けたかった。だから、僕は手を差し伸べて言った。
「……手、繋いでいこう。」
「まあ、いいよ。」
そう言って、出口の方に近づいてきた。
「もう終わりそうだな。」
そう思っていると、後ろから物音がして、何かが迫ってくる足音がした。
「なんだ、やばい。逃げるぞ。」
僕は、彩葉の手を引いて走って逃げた。
「ゆうにい、待って!」
「はぁ……なんとか出れた。」
「ゆうにい、なんで急に走るの……まったく……」
周りには、たくさん人がいて、屋敷から飛び出てきた僕たちに視線が集まっていた。そのとき、繋いだままの手が視界に入った。
「あ……ごめん……」
「ゆうにい、あの頃と変わらないね。ほんとに……」
彩葉が嬉しそうな顔で言った。
「まあ、ビビってなんか、なかったけどな。」
「手、繋いできたでしょ。」
「それは、悪かった。」
「女の子に急にあんなことしたらモテないよ、絶対、やりかえすからね。」
この時間が恋しくなるくらいには楽しかった。
二人で時間を忘れ、夢中になって遊んでいると気づけばもう日が傾いていた。
「そういえば父さんどこいったんだ?」
僕がそう聞くと彩葉は、何かを思い出した顔をした。次の瞬間、彩葉は僕の手を取り、走った。
「なんだ……急にやり返しか?」
「そんなんじゃない、急いで……」
何かが、大きく動き出しそうな予感がした。




