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第二十五話 思い出の味

※本日はもう一話、20時に投稿予定です。

 いろんなことがあった夏休みも、もうすぐ終わる。けれど、僕にはもう一つ大きなイベントがある。それは、今日だ。

「あんた、お父さん迎えに来てるわよ。」

 祖母にそう言われて急いで玄関に向かう途中、棚の中のアルバムを見つけた。

「妹にも見せようかな……」

「まだ用意できてないの?」

 そんなことを思っていると祖母に急かされた。とっさにリュックにアルバムを入れた。

「今、行くから。」

 玄関に行くと祖母がいた。

「楽しんできなさいよ。話、聞かせてね。」 

「分かった。行ってくるね。」

 そう言って家を出て、父さんの車に乗った。

「よし!忘れ物ないか?行くぞ。」

 父さんが元気よく、そう言うと車が走り出した。


 少し走り出したところで父さんが聞いてきた。

「昼ご飯、もう食べたか?」

「まだだけど……」

 僕は、彩葉についてのことかと思ったが違った。

「なんか食べたいものとかあるか?」

「ないな……」

「いつもないから聞いた俺が馬鹿だったわ。」

「なくて、悪いな。」

「じゃあ、あそこ行くか。」


「ここって……」

「そうだろ。懐かしいだろ。」

 ここは家族でよく来たところだ。この町も久しぶりに見る。母さんと弟は、今もこの町にいるのだろうかそんなことを少し思った。席に着き、メニューを見ると父さんが言った。

「結構、変わったなー。」

「父さんも久しぶりなの?」

「まあ、こっちのほうは来ないからな。」

「ふーん。でも、どれも美味そう。昔、よく食ってたハンバーグあるかな……」

「あるぞ。これ。」

「じゃあ、それにしよ。」

 少しして、僕の前にハンバーグが来た。

「いただきます。」

 一口食べた瞬間、びっくりした。

「この味だ……」

 美味しかったがその感想より懐かしさが湧いてきた。家族五人で食べたこの味、もうそろうことはないかもしれないけど……

「また、みんなで来れたらいいね。」

 僕がそう言うと父さんも笑顔で言った。

「そうだな……」

 皿が綺麗になるほどしっかりと思い出の味を噛み締めた。


 また、車に乗っての移動中、父さんに聞かれた。

「妹の件。考えてくれたか?」

 僕は、この質問はいつか来ると思っていた。

「まあ……いろいろ考えたんだけど……いまは、前向きに思ってる。」

「そうか……今日、会って決めてくれていいから、緊張すんなよ。彩葉も楽しみにしてたぞ。」

 そうだ僕は、今日、五年ぶりに彩葉に会うんだ。

「そういうこと言うから緊張してきた……」

「すまんな。楽しんでくれたらいいから。」

 そう言うと父さんは、音楽を掛けながら上機嫌で運転していた。僕は緊張がほぐれて寝てしまった。


 目が覚めると車がそこで止まった。家に着いたのかどうか分からなかったが心の準備は、まだできていなかった。――五年ぶりに会う妹が、どんな顔をしているのかも、まだ想像できなかった。

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