第百二話 妹の姿
僕は、明後日までここに泊まることになった。
「明後日この家を出るから、その時に悠太も送っていくよ。だから、泊まっていけよ。」
そう言われて、僕は、ばぁちゃんの心配をしたが……
「ばぁちゃんには、もう言ってあるから。」
「ゆうにい、泊まりなよ〜」
二人にそう言われてしまえば断る理由は無かった。
「にしても、何にも無いな。」
「まあ、もう引っ越しだからね。それより、ゆうにい。私、引っ越して上手くやれるかな?」
「彩葉なら大丈夫だよ。優しい人ばっかりだし。ばぁちゃんも居るからな。」
「そう言ってくれて安心したよ。」
「なら良かった。」
「私、明日、中学校の友達にお別れするから……」
「しっかり挨拶して来いよ。」
「うん。で、ゆうにいも一緒に来て?」
「え?僕は、要らないだろ。」
「いや、ゆうにいに、会ってみたいって子も居て。」
「別れの場に居て良いのか?」
「お別れだけど、そんな遠くに行くわけじゃないからまた会えるし大丈夫!それに、いつでも連絡出来るしね。だから、来てくれない?」
彩葉がお世話になったし、来て欲しいって言ってるなら行くか。
「分かった。」
「やった!じゃあ、明日の朝ね。」
次の日の朝、少し早く起きてしまった。リビングには、彩葉が居た。
「おはよう。」
「おはよう、ってゆうにい!?」
「何か起きてな。」
「起こす手間が省けたわ。」
「自分で起きれるぞ。」
「はいはい。朝、食べる?」
何か上手く丸められたような……
「あ、うん。」
「いただきます。」
どんどん食べていく。
「やっぱり、彩葉の作るご飯は美味しいな。」
「そう?良かった。」
「早く起きて良かったよ。出来たてを食べないと勿体無いからな。」
彩葉がソワソワしている。
「どうしたんだ?」
「いや、何でも……」
「早く食べないと冷めるぞ。」
「う、うん。いただきます。」
何もない家に温かい時間が流れていた。
彩葉と出かける時間になった。
「それじゃあ、行こっか?」
「良い天気だな。知らない所を歩くのは楽しいな。」
「ゆうにい、こっち!」
「どこ行くんだ?」
「公園に集まってるから。」
「公園に行くのか!?」
「そんなに驚くこと?」
「一人一人、会うと思ってた。」
「言っておけばよかったね。」
「また、言ってないのか。緊張してきたぞ。」
「大丈夫!」
公園に着いた。見るからにそれっぽい子たちがいる。
「ゆうにい、自信持って、行けばいいから。」
不安そうな顔が出ていたのだろう、彩葉は、僕を見てそう言った。
「みんな、お待たせ〜」
彩葉入れて五人もいる。
「彩葉ちゃん!」
「急に抱きつかないでよ、みくちゃん。」
「今日で最後なの?」
「明日も居るけど、午後には出発するから。」
「ねぇ、その人お兄ちゃん?」
「うん。私のお兄ちゃんだよ。」
「はじめまして。みくです。」
「これは、どうも丁寧に。僕は、悠太です。」
「面影はあるかも。」
「そうか?」
「うん。」
「身長高くてお兄さん感あるね。」
「確かに。」
みんなが盛り上がってる中、彩葉だけニヤニヤしている。良かったじゃん、っていう感じで見ている。
「はい、これ。私たちから彩葉ちゃんへ。」
「え!?こんな物、用意してくれてたの……ありがとう!」
感動の場に僕は要らないな。そう思って少し離れた所に腰掛けた。本当に仲が良くて、良い友達だな。
すると、友達の仲の一人が僕のもとに来た。
「はじめまして。優奈です。」
「どうも。」
「お兄さん、彩葉ちゃんと仲良いですよね。」
「そうか?」
「はい。ここまで一緒に来てくれる時点でそうですよ。」
「確かに、ガチ喧嘩とかした覚えないな。」
「彩葉ちゃんは、本当に凄いです。私、尊敬してるんです。同い年とは、思えないほどしっかり者。だけど、おっちょこちょいなところもあってそこも可愛くて。」
この子、彩葉のことちゃんと見ている。
「僕もそう思う。」
「彩葉ちゃん、お兄さんの所に行くんですよね。」
「そうだけど。」
「なら、安心です。変な男が近づかないようにしてくださいね。モテモテだったんで。」
「モテていたのか?」
「もちろん!あの可愛さにあの性格。女の私だって憧れますよ。お兄さん羨ましいな。」
「そうかな。」
僕は苦笑いで言った。
「私も兄さんと仲良くできたらな。」
「優奈さんもお兄さんが居るのか?」
「はい。だけど……あまり仲良くなくて。」
「喧嘩とかでか?」
「いや、そもそも喋ることがなくて。二つ上で歳も近いんですけど……」
「昔からそういう感じなのか?」
「いえ、昔は仲良かったです。」
「なら、大丈夫だと思う。兄って言うのは妹の事を大切に思っているよ。必ず。」
「そうですかね。」
「本当にピンチの時は、一番に助けてくれるよ。兄は、妹には、楽しく自分らしくいてほしいはずだよ。」
「彩葉ちゃんのお兄さんが言うなら信じます。」
凄い真っ直ぐな目で見てきて、少し戸惑った。
「頭の片隅に置いとくくらいで良いよ。」
「彩葉ちゃんにたまにはこっちに来るように言っといてくださいね。」
「分かった。」
彩葉……楽しそうで僕は嬉しいよ。自分の事のように。
「ゆうにい〜」
彩葉が大きな声で僕を呼んだ。
「彩葉ちゃん、ゆうにいって呼んでるんだ。良いね!」
「うん。昔からこの呼び方なの。可愛でしょ?」
「私もそう呼ぼうかな?」
「みくは駄目!妹の特権なんだから。」
「みんなでご飯食べに行こ!ゆうにいも!」
「良いのか?」
「うん。みんなも良いって!」
こんな、すぐに仲良くなれることなんて今まで無かったのに……僕の中で何か変わっているのかもしれない。
「ゆうにい、何してるの?行くよ!」
「今、行くから。」
並んだ五人の後ろ姿を見て、思わず写真を撮った。五人は、目には見えない何かで強く結ばれているように思えた。




