第百一話 別れの季節
春休みが始まった。僕は、父さんに呼ばれて、この家に来た。
「お邪魔します。」
「お、来たのか。悠太。わざわざすまないな。」
「うん。流石に二人じゃ、キツそうだから。」
「ありがとうな。とりあえず上がってくれ。」
家に入ると、段ボールがたくさん積まれていて、部屋は綺麗だった。
「だいぶ、片付いたんだが、仕分けも大変でもう少しあるんだ。手伝ってくれて心強いよ。」
「この家は、お別れか。」
「まあ、もうすぐ9年だが、ここに彩葉一人っていうのもあれだしな。無事に受かったからこれからは、そっちでな。」
「そういえば、彩葉は?」
「自分の部屋で片付けしてると思うぞ。」
「彩葉は、引っ越しの準備か。僕もそろそろ片付けやろうかな。」
「昼は、食べて来たのか?」
「うん。」
「じゃあ、あっちの奥の部屋、片付けてくれないか?」
「分かった。」
「奥の部屋は、ここか?」
扉の前には、中身の入っていない段ボールが置いてあった。
「まだ、片付いてないのか。」
扉を開けると僕は、驚いた。たくさんの物が置いてあった。
「まじか……全然、片付いてない……」
絶望してると、父さんの声がした。
「その部屋、物置なんだが、手つけれてなくて頼むよ。」
おいおい、仕事量いきなり最高レベルかよ……
ここにあるものは、基本的に捨てて良いらしく、その判断は、僕に任された。そんな中、片付けているとある物を見つけた。
「この辺のもの……だよな。」
そこには、弟の悠心が使っていたであろう、お絵かき帳や懐かしのおもちゃがあった。僕は、懐かしさと同時に寂しさも感じた。
「まだ、何かあるかも。」
そう思い、探すと写真が見つかった。それも、一枚ではなく数十枚の……
「こんなのがあったなんて……」
まさか、あると思っていなかった。家族の写真。母さんの写真。僕と彩葉、悠心の写真。しばらく、じっと写真を見つめたままだった。
すると、父さんの声がした。
「悠太、どうだそっちは?」
「あ、良い感じだよ。今、物を広げてるから入らないで。」
「分かった。怪我するなよ。」
父さんが来なくて良かった。僕の顔に涙が溢れていたから……写真は、持って行く段ボールに入れておこう。
気づけば夜になっていた。
「あ〜やっと終わった。」
やっぱり、物置部屋でも日頃から綺麗にしておくべきだな。リビングに戻っても誰も居なかった。
「二人ともどこ行ったんだ。」
すると、二階から父さんが降りてきた。
「お、悠太。終わったのか?」
「うん。」
「なら上から荷物降ろすの手伝ってくれ。」
「また仕事?」
「ゆうにい〜早く来て〜」
「勘弁してくれよ。」
片付けは、この後も続いた。
「今度は終わったよな。」
「うん。ありがとうな。二人とも。」
「ゆうにいも頑張ったんだね。」
「結構大変だったぞ。あのゴミ部屋。」
「ゴミじゃないよ!」
「物置じゃなくて物入れだったろ。」
「それはそうかも。」
「二人とも夜は、出前にするか?」
父さんがそう聞くと彩葉がすぐに反応した。
「私、ピザが良い!ね、ゆうにい。」
彩葉が、ピザが良いでしょ?っていう目で見てくる。
「良いなピザ。」
「なら決まりだな。」
「やった〜」
「彩葉ばっかり食べるなよ。」
「食べないよ。もう来年からJKだから。」
「それウザいからやめろ。」
「じゃあ、女の子にそういうの言わない事。」
「分かったよ。」
「うん。ならよろしい。」
僕は、負けた気がして、何か言い返したくなった。
「彩葉は、ちゃんと言う事は言えよ。合格したこととか……」
「そ、それは……その……ごめんなさい。」
謝られると少し申し訳なくなった。
「まあ、僕が忘れてたのも悪いかもだけど……」
「連絡したと思ってた。てへ。」
内心、謝る気、無いだろ。
「てへじゃねぇ。もうすぐ家、来るのか?」
「うん。来週くらいにはね。」
「父さんの出発はいつなんだ?」
「ゆうにい、知らないの?」
「父さん、特に何も言わないから。」
「明明後日だっけかな。」
「え!?家の片付け間に合うのか?」
「うん。もう荷物は、まとめたからあとはそれぞれ送ったり、捨てたりって感じ。明後日には、この家出るから。」
「え!?そしたら、こっちの家に?」
「うん。もちろん。」
「もっと後だと思ってた。」
「妹が早く来てくれて良かったでしょ?」
「え……うん。そうだな。」
「絶対、思ってない。」
彩葉が来たら、生活が整って、楽しくなりそうだが、休めるのだろうか。
「とりあえず、明明後日は、みんなで父さんの見送りだな。」
「一回、お別れだね。悲しいけど、また新しい生活が始まるし、ゆうにいも居るから安心だよ。」
「なら、良かった。」
インターホンが鳴った。
「ピザ、届いたんじゃない!?取りに行ってくる!」
そういうところは昔と変わらないな……




