水面に燻る冷たい炎
渾身の魔法。
今繰り出せる最大火力の雷撃は、至近から対象を劈いた。
表面は黒焦げ、人肉を燻る焦げた臭いが鼻に届く。リカルドの体からは、気化した水分が蒸気として立ち上っている。
──どうかこれで倒れてほしい。
エミリスの胸中は切実な願いで満たされていた。
度重なる魔法の連発に、肉体を酷使する近接戦と、たった今放った複合魔法。これらはエミリスの心身に多大な負担をかけていた。魔力量に人並み以上の自信がある彼女も、慣れない魔法を編み出すために無駄に漏出した魔力は少なくない。加えて命の瀬戸際に於いて、初見で成功しなければならないという重圧は、彼女の精神をひどく消耗させていた。
魔物を相手にする際は後衛として仲間のサポートを前提としていた。信用する仲間に命を預け、同時に預けられていた。だから今まで自分一人で戦うことの、孤独な戦いの苦しさを、本当の意味で知ることはなかった。
それでも、彼女は戦い抜いた。戦い切った。
だからそんな命を懸けた奮闘の対価に、この願いだけは叶って欲しい。そう心の中で切に祈った。
しかし、そんな彼女の願いが叶うことは、なかった。
至近距離からの複合魔法をその身に受け、リカルドは白目を剥いて意識を手放しかけた。だが、己の内側で蟠る激情と憤怒が、辛うじてそれを食い止めた。
ギョロリと双眸に理性の光を灯した取り戻したリカルドが、己に牙を突き立てた獲物へ憎悪を向けた。
「ハァ……ハァ……ヤってくれたじャねェかエミリス。まさかテメェが、こンな奥の手を隠し持ってたとはな……」
苦しそうに息をしながら、怒りとともに残り少ない魔力を振り絞る。
「テメェといいクソババアといい、無駄な足掻きを見せやがって。っとにイラつくゴミどもだぜ」
目前で自分を殺すため魔力を高めるリカルドに、もはやエミリスは何することもできない。清々この憎々しい男を、睨み殺さんと視線を鋭くするばかりだ。
そして、リカルドは徐に大剣を頭上に振り上げた。
「──死ね」
躊躇なく、一思いにそれを振り下ろした。
振り抜かれた刃はエミリスの胴体を的確に捉える。彼女の細い体を柔木のように断ち切った。得物が斜めに振り抜かれ、遅れてその剣線から赤い糸が浮き出る。そこから行き場を求めた流血が溢れ出す。
痛みをろくに知覚すること無く、エミリスの指先から徐々に感覚が消えていく。思考がだんだんと緩やかになり、確実に近づく死を自覚する。
己の人生を走馬灯のように想起し、鮮血を撒き散らし倒れゆくエミリスの視界に、黒い闇が翻った。
災害級の魔物を打倒し、すぐさま転移魔法で移動した私が目にしたのは、大剣を手にした大柄の男と、その男の向かいで体の表面から赤い液体を吹き出している、エミリスの姿だった。
「……魔法使いの分際で手こずらせやガッて、さっさと──」
何か言葉を発しているその生き物を容赦なくこの場から叩き出すと、私はすぐさま倒れるエミリスの体を支え、地面へと丁寧に寝かせた。状態を見るに彼女の体は左から右わき腹にかけてざっくりと斬られており、傷口からはとめどなく血が溢れ出している。
間違いなく瀕死の重傷だ。このままの状態では、もう何分も持たずに死ぬことになるだろう。
タイミングがいい筈もないが、それでも最悪ではないことに心の片隅で安堵した。
すでに指先一つ動かす力が無いのか。エミリスが僅かばかり残った力を振り絞って、目線で何かを訴えかけようとしている。その目元から透明の雫が滴っていた。
その涙を指先で優しく拭った私は、魔晶核から魔力を引き出し、彼女の傷を癒すための魔法を発動した。
色を与えられた四属性の魔力は濃密に絡まり合い、力強い波動を発しながら生命力のオーラを形作る。白く発光する生命の光は、裂かれた肉を、断たれた骨を、失われた血液を再生すべく、エミリスの体に吸い込まれていく。局地的に、ランク6の魔物を軽く数体は滅ぼせるだけの膨大な量の魔力が集結し、見る見る間に瀕死の肉体を癒していく。
同時に失われかけていたエミリスの意識も徐々に回復していき、その顔色は驚愕に彩られていった。
やがて治癒の光はゆっくりと収まり、街灯と星明かりが仄かに照らすだけの闇に戻った。エミリスは未だ驚きを顔に貼り付けた状態でゆっくりと体を起こし、切り裂かれ血が染み込んだ衣服の上から、傷があった部分を恐る恐る確かめた。
「……あんた……これ」
その素朴な疑問に特別答えることなく、私は立ち上がると改めて辺りを見回した。
記憶違いでなければ、ここは間違いなく孤児院があった場所だ。倒壊しているあの建造物だった物が肝心のそれだろう。
その崩れた建物の上に、小さな魔力の反応を感じた。私はそこへそっと近づいた。近づいた私に、そこにいた人物が顔を上げてこちらを仰ぎ見る。
あまり先を見通せない暗闇の中、近づいたことでその人物を正確に把握することができた。
「ザックか……」
ザックが生気を失い、泣き腫らしたように赤い顔で地面に座り込んでいた。私が彼の名を小さく呼ぶと、ビクッと怯えたようにして、腕の中のそれを自分の方に抱き寄せた。
ザックの腕の中にあるそれは、まだ子供である彼の体よりも明らかに大きいものだった。
それは人の体だった。私もよく知る人物の。
「……リシア司祭」
ザックに抱き抱えられているリシアの体は赤く染まっており、見ればあちこちが焦げているようだった。ただ体はどう見てもボロボロのはずなのに、顔には他人を安心させるような、穏やかで優しい笑みが浮かんでいた。
生き物の魔力を感じ取れる私は、あるいはただ気持ち良さげに眠りについているだけにも見えるその体から、とっくに命の灯火が消えていることを察せていた。
リシアの亡骸から視線を外した私は、再び周囲へ目を凝らした。更に二つの人間の死体を確認したことで、ここで一体何が起こったのか、おおよそを把握できた。
思えば、かつて私が力に覚醒した時も、今のような心境だったのかもしれない。記憶としては遠い過去のように感じるあれも、今となってはとても近く、隣に感じている。
冷えていく。まるで真冬の湖面に、身を沈めていくように。
燃えている。滾る嚇怒は儘に狂わんと欲している。
私は私を底に沈めて、僅かな理性を掬い上げて、そっと己に蓋をする。
決して溢れて、構わず全てを、焦がし尽くさないようにするために。
エミリスは未だ驚愕から立ち直れずにいた。
自分がリカルドから受けた傷は甚大であり、間違いなく致命傷であった。このまま十数秒で意識を喪失し、もう二度と浮上することはない。まさしく死を覚悟していた。
しかし現実はどうだろうか。あれほど深く刻まれた傷は、まるで始めから何事も無かったかのように、跡一つない白い肌を主張している。これで衣服まで元通りのままだったなら、傷を負ったことすら疑問に思うほどであった。
そして思考が平常の状態に快復し始めたことで、次の疑問に思い至った。
自分が無事でいる理由。すなわち目の前で使用された魔法、回復魔法について。
回復魔法とその使い手の存在が、エミリスの困惑をより増幅させ、立ち直れずにいた最大の理由だった。
本来回復魔法の使い手がこの場にいるなどあり得なかった。なぜなら、現在回復魔法を使える者は、世界に僅か四人しかいないとされているからだ。
そして、その内の三人は魔法協会の認定魔導師であり、全ての魔法使いの中で五指に入るほどの実力者と言われているのだ。それを知っているエミリスだからこそ、現状の理解に頭が追いつかずにいた。
しかし事実は事実、現実は現実と強引に消化した。そうすることでなんとか立ち直った。
エミリスは身体に異常かないことを確かめ足に力を込めると、自分の傷を癒した黒衣の男の方へと近づいた。
「プラウス……」
エミリスはその男の名を口元で小さく呟いた。
黒衣の男はそのか細い声に反応するように、頭だけをエミリスの方へ向けた。普段と変わらない佇まいを維持するその人物の顔色は、そこにある黒面に遮られて見通せない。
プラウスが仮面の奥から声を響かせる。
「エミリス、負傷は私の魔法で治しましたが、特に異常などはありませんか?」
「……え? えぇ、問題……ないわ」
自分が知るプラウスの口調と違っている。そのせいでエミリスな呆気にとられ歯切れが悪くなる。
とりあえず気になりそれについて質問する。
「……それよりあんた、そんな喋り方だったっけ?」
「ああ、これはアレですよ。ただの一過性のものですから気にしないでください」
本人はそう言うが、気にするなと言われてそうできるほど感じる違和感は小さくない。エミリスはこの件や回復魔法のことを含めて、色々と目の前の人物に問い質したい気分であった。が、それを口にするより早くプラウスが口を開いた。
「お互いに色々と語らいたいこともあると思いますが。それは後に、全てを終わらせてからにしましょうか」
プラウスがある方向に体を向ける。エミリスもそれに釣られてそちらへ視線を移すと、そこには暴力的な魔力の気配が渦巻いていた。
「特別手加減した覚えはありませんが、大した耐久力ですね」
二人の視線の先では、荒々しい気配の中に、禍々しい魔力を滲ませていた男の姿が浮かんでいた。
「……あァ、ちくしょう。本当はこンなトコで使う気なンざなかったてンのによォ……クソが」
エミリスは先ほどまで己が対峙していたリカルドの雰囲気が、まるで違っていることに気づき戦慄する。
「な、なによ……あれ……」
驚愕、不安、困惑、混乱、動揺、恐怖。一連の感情を一言で表したエミリスの表情が、見る見るうちに蒼白に変わっていく。まるで凶悪な魔物と対峙しているような感覚に肌が泡立ち、体が自分の意思とは無関係に震え出した。
「なるほど、魔物の魔力をその身に受け入れましたか」
プラウスの発言に、エミリスはハッとあることを思い出す。
「人工的な魔力増幅化!? でもそれって確か失敗した研究じゃ……」
魔法使いであるならば、いや、魔力という魅力的な力に触れたことがある者ならば、誰でも一度は望み、叶えたいと欲するもの。それは自身の魔力を増加させることだ。
人類の歴史に於いても過去から現在に至るまで、その欲求を叶えるためのありとあらゆる試みが行われてきた。そしてその中の一つに、一定の評価と結果を得たものがあった。魔物が持つ魔晶核を、人間の肉体に埋め込むのだ。
結論から言えばこの実験は失敗した。魔物が持つ魔力と人間の肉体は決して噛み合うことはなかった。そして、無理に適合させようとすれば被験者の肉体は変質し、異形と化した。その変化に多くの者は耐えられず死亡し、耐え切れた者もそのまま魔物と成り果てた。
結局この実験は国や魔法協会により禁忌と定められ、実験の詳細は闇に葬られた。
だがこの研究は一部では成功と見做されていた。なぜなら、魔晶核を埋め込まれ変質した被験者の魔力量は、実験の前後において増加していたからだ。
それ故に、 今現在でも、世界のどこかでこの研究は続けられていると言われている。
その悍ましい研究の成果。実際に目にしたことで、エミリスは驚愕と怖気を隠せなかった。
ただ、隣の人物の普段の変わらなさに、彼女はすぐに一定の落ち着きを取り戻した。
「かの実験の成否がどうであろうと、彼が如何にしてそれを手にしたのであろうと、私たちのするべきことは変わりませんよ」
禍々しい気を纏うリカルドに向けて、プラウスは軽い足取りで近づく。
己を戦闘不能にしかけた人物へと、リカルドからは剣呑な気配が突き刺さる。
「テメェ……よくもヤってくれたじゃねェか。絶対に」
「なぜこんなことをしたのですか?」
「……あ?」
「理由ですよ。どうしてエミリスやリシア司祭を殺そうと、いえ、実際に殺める真似をしたのですか?」
以前言葉を交わした時とはまるで違う口調。それを不可解に感じると同時に、リカルドは目の前の黒い人物から放たれる、得体の知れない謎の圧力に気圧され言葉に詰まった。
「獣や魔物でもあるまいし、問われた言葉を理解する頭は持っているのでしょう。いいから答えなさい」
続く言葉を挑発と捉え、リカルドは臆した己を叱咤する。
「ンなもんテメェらが気に入らン以外の理由があるかよ! カスが! 俺は今までもそうやって気に食わン奴らをぶっ殺して生きてきた! これからもだ! 雑魚は俺たち強者に逆らってンじゃねェ!!」
湧き出す懸念を怒りへと変え、告げられた問いへ吠えるように言い返した。
「……それがあなたの答えですか」
「ハッ! どれだけ粋がろうガ、今の俺に敵うわけねェだろうガ!!」
得た力を根拠に意気を高め、リカルドは地面を踏み込み互いの距離を一挙に縮めた。増幅した魔力を上乗せした魔闘術は、これまで以上に使い手の身体能力を高め、暴威となって押し寄せた。
建物すら軽々と切断しうる破壊力を持ちながら、正確無比に相手の体を捉えた斬撃。黒衣が二つに両断されるような幻視を見せかねないそれを、プラウスはすんでの所で上体を斜めに逸らして回避する。
獲物の体を捉え損ね斜め下に向かって抜けた大剣は、重力や慣性を感じさせない動きで逆側へと跳ね上がる。胴体の真ん中を的確に狙った再びの斬撃は、間合いの外への脱出を許さないほど高速で迫り、今度こそ確実にプラウスの肉体を捉えた、かに思われた。
一撃目と二撃目、コンマ何秒のごく僅かの時間の間に、リカルドの視界からプラウスの姿は消えていた。
呆気の声が漏れそうなほど動揺するリカルドの体に、脇腹部分から大きな衝撃が伝わり横合いに吹っ飛ぶ。意識の外からの予想外のダメージをくらい、リカルドは受け身も取れずに地面を転がった。
土煙に塗れ、唾を吐きながら立ち上がるリカルドは、数秒前まで自分がいた場所を睨みつける。そこには腕を横薙ぎに振り抜いた形で立つ、プラウスの姿があった。
腕をゆっくりと下ろしながら悠々と己の方へと体を向ける姿に、リカルドは奥歯を砕かんほどに顎の力を噛み締めた。
「スカしてんじゃねェぞクソガァアアアア!!!」
怒りと憎悪で身の内を満たし、雄叫びを上げながら力任せに突貫する。
常人ならば震え、体の自由を奪うほどの覇気と迫力を撒き散らすリカルドであったが、目の前の人物は全く動じることなく、力任せに振り回される斬撃を最小限の動きで躱していく。
剣が振るわれる度に隙だらけになる空いた体に、プラウスは的確に打撃を加える。その度にリカルドの口からは苦痛の呻きが漏れ、徐々に気勢を削ぎ落としていった。
「クソォ!! なンでだ! ナんで当たらねェ!? これは! この力は! 俺を最強にするンじャなかったのカよォ!?」
「どうやら人を笑わせるものがなんであるか理解できたようですね。知っていますか? 今のあなたの姿を側から見で“滑稽”と、そう言うのですよ」
「……ッ!? クソがァァアアアアア!!!」
苦し紛れで放った正面からの、隙だらけで大振りな攻撃。その一撃は、奇しくもこれまでで最大最高の威力を有していた。
しかしながらその渾身は、プラウスが何気なしに前に出した左手によって、軽々と受け止められた。
「なっ……」
「別に、わざわざ躱すほどでもないんですよ。こんなのは」
瞬間的に魔力を高め、プラウスは掴んだ大剣を握り潰す。剣だったものの破片が、バラバラと地面の上へと降り落ちた。
目の前で起きたあり得ない出来事の連続に、リカルドからは負の感情を含んだあらゆる感情が抜け落ちていく。そのまま声の出し方すらも忘れ絶句し、身体の状態反射で驚愕の表情を貼り付けたまま硬直した。
「私からすれば今のあなたは、ただただ愚かしく哀れでなりません。力に飲み込まれ、それこそ絶対だと執心し、我を通した結果知見の狭さを思い知り、最強などとという妄言を吐くにまで至った。正直見るに堪えません」
リカルドの胸部へとそっと手を伸ばし、内側の魔力の核を探り当てる。魔物の魔力を取り込み同一化したリカルドの魂は、禍々しく存在を主張していた。それを力で感じ取ったプラウスは、既に十分以上の魔力を吐き出し衰えたその魂に干渉する。
「もう眠りなさい」
贈る言葉とともに、プラウスは魔力の命脈を断ち切った。
魂と肉体は切り離され、生命力の供給を失った肉体は、ゆっくりと崩れ落ちて地に伏す。間も無く、リカルドは完全に絶命した。
命の喪失を見届けたプラウスは、己が奪った生命に軽く瞑目した。
先ほどまで、戦いの喧騒で騒がしかった空間が急に冷めていくことで、戦いの終わりを理解したエミリスが、重い足取りで勝者の方へと近づく。
「そいつは死んだの……?」
「はい、私が殺しました」
プラウスの簡潔な対応に、エミリスも「そう……」と特に感情を込めるでもなく、端的に相槌を返した。
決してリカルドの死を悲しんでいるわけではない。彼はリシアを殺めている。生きてても自分の手で殺していた。それにエミリス自身もこの戦いで二人の人間を殺している。そのことへの後悔もない。
ただ人間同士の殺し合いなどという、魔物との生存競争とは違う意味があったか問われる戦いに、空漠とした虚無感を抱いていた。
「とにかく戦いはこれで終わりました。後は事故処理を済ませましょう」
プラウスの提案に「そうね」と同意を示したエミリスは、共にリシアの亡骸を抱いたザックの元へと近寄った。
「ザック、リシア司祭の亡骸は私が預かります。あなたはエミリスとともにこの場から離れなさい」
「あんたはどうするの?」
「私は一度街の外を見に行きます。特に何もなければ支部長あたりに指示を仰いで」
「……まだ終わってない」
唐突に紛れた変声期を迎えたような低い声に、プラウスとエミリスの両者は会話を打ち切り、発言者へと顔を向けた。
「まだ終わってないってどういう意味よ?」
「……あいつらの目的は……っリナだった。あいつさえ渡せばそれで終わるって。……なのになんでこんな」
「……」
出された情報の意味にエミリスは理解が追いつかず黙り込み、対照的にプラウスは即座に広範囲に魔力感知を拡大した。
リナの魔力は常人と比べて途轍もなく小さい。魔力感知をしたところで、余程近くにいなければ他の反応に掻き消され、察知できないほどだ。それを理解しているプラウスは、直接彼女の魔力を探し当てるのではなく、今回起こった一連の事態と繋ぎ合わさるような違和感を探した。
多くの人間や生き物たちの大小様々な魔力が入り乱れる中、プラウスは名状し難い異質な魔力と、唐突に膨れ上がる異常な魔力を感じ取った。
想定外の出来事に、しかしこれは可及的速やかに対処しなければならないものであると、そう素早く判断を下した。
「エミリス、念のためあなたはザックと早急に避難してください。頼みましたよ」
「……え?」
困惑を露わにするエミリスに満足に応対することなく、プラウスは仮面の下で僅かな焦燥と険しさをを浮かべ、転移魔法を発動した。




