魔物狩りの集う街
プラウスとして初めての魔物狩りを終えてからも、私は順調にハンター活動を続けていた。
母との約束で魔物狩りは週に二日までと決められてしまったので、それ以外の日は狩った魔物の素材を使って何ができるか試してもみた。残念ながら私には素材を加工する術がなかったので、すぐに残りの素材は売りさばくことになってしまったが、今までにない経験ができてなかなか楽しめた。売ったお金で父と母に贈り物を買ったら、二人にはとても喜ばれた。
そして私は現在、プラウスの格好をして座席に座りながら、窓の外を眺めていた。
今乗っているこの乗り物は、私の前世の知識にある機関車に似たものである。それを使って目的地まで移動していた。ラークシャル国内の主要都市には機関車を通すための鉄道が敷かれている。
今でこそ国内外の流通を支えるこの機関車であるが、これを走らせるための鉄道を敷くにあたって大きな問題が存在した。言うまでもなく魔物領域の存在である。当時国内にはそれなりの数の魔物領域が点在しており、都市間を結ぶ際の大きな障害となっていた。魔物領域の近くには当然多くの街が存在し、その恩恵によって生み出される富は馬鹿にできなかった。加えて鉄道を敷くためにその土地を開拓する必要があり、費用も莫大になることが予想されていた。そのためこの大事業を始めることに当時の王家も貴族も及び腰であった。しかし周辺諸国が次々と文明化に舵を切っていく中、時代に取り残されることを恐れた王家がついに重い腰を上げることにより、各貴族もその動きに追従していった。大きな出費は否定できずとも、自領に鉄道が敷かれないことに比べればと、多くの貴族が資金を拠出して魔物領域の駆逐が始まった。その後、紆余曲折あり無事鉄道は開通し、今日人や物の流通に大きく貢献を果たしている。
余談であるが、国境近くの魔物領域に関しては全くと言っていいほど手付かずだ。これは魔物領域が各国にとって緩衝地帯になっていることなどが理由である。
私は横に流れていく風景を眺めながら目的地であるカラッソについて考える。
流通目的で僻地を除いてほとんど姿を消した魔物領域ではあるが、この国にはそれ以外に大きな魔物領域が存在している。そこは大陸東側でも屈指の広さを誇り、私がかつてイザベルに連れ出された魔物領域もそこに含まれる。カラッソはその魔物領域に隣接した都市の一つだ。
カラッソという場所は魔物を狩れる都市の中では特に規模が大きい。理由は単純に、その地に生息する魔物のランクが高いからだ。低ランクの魔物も多く存在するが、深層まで行かずともランク7の魔物が闊歩するのはカラッソ近くだけである。そのためカラッソには低ランクから高ランクまで幅広くハンターが集まり、それに比例して人口も多い。
私がカラッソを目的地に選んだのはそれが理由だ。高ランクが集まるなら私の実力でもそれほど目立たず活動できる。実力を隠したい私からしたら絶好の狩場だ。
旅路は問題がないまま順調に進み、途中に転移魔法での帰宅を挟んで無事にカラッソへ到着した。転移魔法は便利な魔法ではあるが、一度も行ったことのない場所だと上手く飛べない。そのためせっかくだからと初めての遠出を楽しむことにしたのだ。即日帰還するので旅と言っていいかは微妙であるが。
機関車から降りて駅の中を歩き回る。
この国の駅は知識にあるものより無駄がないと言えば聞こえはいいが、端的に言ってしまえば殺風景である。駅というのはもっとごちゃごちゃと色々な物が売られているイメージが強かったけれど、乗車券を買う場所以外には共通点がなかった。それがこの国だけの事なのか、はたまたこの大陸で共通しているかは分からないが、とにかくそういうことらしい。
人が行き交う駅のホームを抜け、カラッソの中へと踏み出した。
カラッソの特徴はとにかく熱気がある。その一言に集約された。
駅を出る前から騒めきは聞こえていたが、街中からはまるでお祭り騒ぎのような人々の喧騒が耳に届いた。私が生まれていたときから住んでいるリシャール領都と比べ、人の多さは変わらないどころかむしろ少ないはずなのに、活気や賑わいは段違いだ。
これはおそらくハンターが多く集まる故なのだろう。ハンターというのは上品さを是としている騎士や規律を重視する兵士と違い、粗野や奔放さが目立つ人種だ。そういう人物が比較的多いハンターが集まるカラッソのような地は、自然とそういう者たちに適応した雑多な雰囲気が形成されるのだろう。
そんなカラッソの街並みを横目で見渡しながら、目的地であるハンターギルドを探した。ハンターギルドというのは街の行政を担う庁舎や領主邸より、ある意味探しやすい場所である。なぜなら街中でいかにもな武装をしている者たちが集う場所なのだ。ならば自然とそういう者たちが多い方向へ進めばいい。
そう考えてそれっぽい特徴の人たちの後ろをついて行った私の考えは正しく、すぐにそれらしい建物を見つけることができた。
ハンターギルドのシンボルは盾の前に剣と杖を交差してあるというシンプルなものだ。
剣は力を、杖は知を、盾は勇気を表している……かどうかは知らないが、このシンボルは大戦時に特に有名な勇者と聖女の持つ武具を描いているらしい。
私はそんなシンボルを建物の前面に掲げているハンターギルドの入り口をくぐった。
私がハンターギルドの施設に来るのは、実はリシャール領都支部を除いて初めてだったりする。転移魔法で移動する私にとって、ここは基本的に縁がない場所なのだ。魔物の素材は魔晶核を除いて父に売っていたので、そういう意味でも来る必要がなかった。領都支部で売らないのは単純にその手の人材に不足しているからだ。ハンターギルドの存在意義は、人類生存地域に存在する魔物への包括的な対抗措置のためである。ハンターギルド設立以前は今以上に各地に魔物が蔓延り、それを各国が自前の戦力だけで対応している状況だった。しかし同時に、それだけではどうしても手が回らない地域も存在していた。各国は自国の対応に苦慮し、国内の安定に人員を割くがために、その手の地域に関しては一向に改善が期待できなかった。その結果、国や公的な機関に属さない、独立した対魔物を想定した組織が設立された。それがハンターギルドの始まりと言われている。
ただ街道を歩けば魔物に遭遇する昔とは違って、今では人類生存圏に存在する魔物の数は随分と減った。そのため大陸東部ではハンターギルドが存在しない国も多いと聞く。ラークシャル王国にしても全盛に比べれば支部の数はかなり減少した。主要都市には未だに置かれているが、魔物の素材が持ち込まれることはほとんどないため、それを捌く人員も配置されていない。だからいつも閑古鳥が鳴いている。
そのハンターギルドの総本部は巡り巡って現在は勇聖国に置かれている。勇聖国の影響力が大きいのもあるが、一番の理由は大陸西側に接しているからだ。東側にも魔物はいるが、西側に存在する魔物の数や脅威度はその比ではない。勇聖国はその強力な魔物たちと戦うための最前線であるため、最終的にこの地に総本部は設置された。
カラッソのハンターギルドはリシャール領都のそれと比べて大きさも人の数も全然違った。領都が勝っているのは清潔さと見てくれくらいだろう。同じ組織なのに場所によってこれだけ違うのかと軽く驚かされる。人の出入りも激しいため、入り口から逸れて壁際から内部の様子を確認した。
壁の一部分には掲示板が置かれ、そこには魔物の情報や買取金額が掲示されている。また別のスペースでは机や椅子が置かれており、そこに数人ずつで固まり会話や休憩をしている。そして受付っぽいところには人が並んでいてハンターたちへの対応を行っている。魔物の素材なんかを渡されているわけではなく、なんらかのやり取りをした後に受付がプレートを返却して、それを受け取ったハンターが立ち去っていた。
一通り観察を終えた私は仮面の下で困った顔を作った。魔物狩りと言ったらハンターギルドである。そう思ってとりあえずここに来たわけなのだが、正直何をすればいいのか全く分からなかった。こういうときは職員の人に話を聞くのがいいだろうと思うものの、皆忙しそうに動き回っているし、同業者も迷いのない足取りでそれぞれ自分の目的を果たしている。なので話を聞こうにもどうしても気後れしてしまう。
私が困ったまま茫然と立ち尽くしていると、近くで誰かが会話を始めた。
「あの、あなたって魔法使いの方ですよね。先ほどからずっとそこに立っていますが、お一人ならば俺たちとパーティーを組みませんか?」
どうやらパーティーの勧誘らしい。一人でいるとパーティーへの勧誘が行われるというのがここでの通則のようだ。勉強になる。これなら私も誰かに声をかけてもさほど鬱陶しがられないかもしない。
そう思って動こうとしたところで、今のと同じ人物の声が聞こえた。
「ええっと、聞こえてます……よね? 仮面しているあなたに話しかけているんですけど……」
仮面をしているという発言に反応して、私は自分以外にそんな珍妙な人物がいるのか視線を動かす。そうするとすぐ近くに私の方を見ている青年がいた。そして私の近くには私以外に仮面の人物がいなかった。
得られた情報からもしかしなくても、話しかけられているのは最初から自分だったと察した私は、その青年に向き合った。
「すみ……すまない。まさか自分が話しかけられているとは思ってい……なかった。それで、パーティー勧誘という話だったか?」
「すみ……? ええっとはい、魔法使いっぽい人だったので誘わせてもらいました。あっ、でも他にパーティーを組む予定があるなら断ってもらっても全然構いません」
「いや、別にパーティーを組む予定はない。それと見立ての通り魔法使いで合っている。だが私は今まで一人で活動していてな。この街に来るのも初めてなんだ。だからパーティーを組む代わりに色々とここでの勝手を教えてくれると助かる」
「勝手をですか? わかりました。とりあえず俺のパーティーメンバーがあっちにいるので移動しましょう。あ、俺の名前はウェントです」
「私はプラウスだ」
短く名乗ってウェントという名の青年に付いて行く。ウェントが向かったのは、さっき確認した机や椅子が並べられていて雑談が可能な場所だった。
ウェントが「ここです」と指し示した机には三人の男女が座っていた。
「これが俺のパーティーメンバーです。ちなみにパーティー名は炎の剣と言います」
私は「そうか」と短く答え、ウェントと同じようにして空いている席に座った。
「ねえウェント、その人が私たちのパーティーに加える人? 仮面付けてるけど大丈夫?」
「リザ、そういう言い方はやめろって。それに加入じゃなくて、一時的にパーティーを組むだけってちゃんと言っただろ」
「えー、そうだっけ?」
呆れたように「そうだよ……」と答えるウェントを横目に見て、私はリザと呼ばれた人物に視線を向ける。彼女は短めの金髪に青い目をした女性で、机に立てかけている武器と背中に背負う矢籠から彼女が弓士であることがわかる。弓というのは魔法があるのでそれほど人気のある武器ではない。それでも今日まで長く使われ続けている武器である。その理由は、身体強化の魔法や魔闘術と相性が良いからだ。魔法と違って威力が身体能力に依存する弓は、少ない魔力で効果的な成果を上げることができる。未だに後方火力要員として魔法にその座を譲らせることのない、ある意味不動の武器と言える。
「それよりも、さっさと自己紹介を済ませちまおうぜ。俺の名前はニックだ。よろしくな」
「よろしく頼む。既にウェントに言われてしまったが、私の名はプラウスだ」
次に紹介を受けたのは槍を携えた男性だ。短い茶髪で快活そうな印象を受けるが、見える部分の身体は引き締まっており、よく鍛えられているのがわかる。槍は弓と違ってポピュラーな武器だ。剣という圧倒的人気の武器の次かその次くらいによく使われている……というのが今まですれ違ったハンターから得た情報だ。とてもサンプルが少なく偏った調査内容である。どの武器がどれだけ人気があるかなど正直知らない。私の経験則としては強い人は強いということしか分からないのだ。見た目はあてにならない。特にあの母と姉とシャノンのせいだろう。
「最後は私ね。私の名前はエミリス・レーンフィル。あなたと同じ魔法使いよ!」
立ち上がりながら高らかに名乗りを上げたのは、水色の髪を背中まで伸ばした少女だ。自分の実力に自身があるのか、それが表に出ているように思える。なんとなくメアリーに似ているかもしれない。メアリーの方が一億倍可愛いけど。
「エミリスは王都の学園の卒業生でもあるんです。こう見えても優秀な魔法使いなんですよ」
「風の魔法を上級まで使えるわよ! ……ってこう見えては余計よ!」
学園の卒業生というのならやはり優秀なのだろう。と言っても、魔物狩りとして活躍するなら最低でもそれくらいの実力を持たなければ厳しいのも事実だ。ハンターは誰でもなれるが実力が無ければ続けていけない。そういう稼業だ。中級までの魔法が通用するのは大体ランク8までである。それ以上となると最低上級を使えなければ話にならない。ランク8以下でも食うのに困りはしない筈だが、基本命懸けの魔物狩りの対価に釣り合うかは微妙なところだ。それなら別の働き口を探した方がいいと考える人が多い。
そんなことを考えているとエミリスから質問が飛んできた。
「ねえ、あんたが使える属性と等級を教えてくれる? 仮とは言っても、実力の足らない奴をパーティーに加えるわけにはいかないのよね」
「おい、エミリス。リザにも言ったがそういう言い方は」
「ウェントは黙ってなさい! 私たちは遊びでやってるわけじゃないの! 命を預ける相手の実力が足りませんじゃ話にならないのよ!」
エミリスの発言に、ウェントは反論する余地がないのか黙りこくる。リザやニックも同意見のようで、ウェントを擁護する素振りは全く見せない。
私は心の中で素直に感心する。おそらくウェインを含め、彼らには己の実力に対して誇りと自負心があるのだろう。だから半端なやり方は許さないし、それを堂々と口に出して言ってのける覚悟がある。今までどんな経験をしてきたかは知らないが、この短い時間でもそれはよく理解できた。
その事実に、試しでこのパーティーに入ることになった私は運がいいかもしれないと、仮面の下で口元が緩んだ。
「さっ、それじゃあ教えてくれるかしら?」
「ああ、私が使う魔法の属性は火と闇だ。どちらも上級まで使える」
エミリスの質問にあっさりと答えた私を見て四人の目が軽く見開かれた。
「ふっ、ふーん。なかなかやるわね。私ももう少しで水が上級まで使えるから、あなたを私と同格の魔法使いと認めてあげるわ」
「いや、全然同格じゃないでしょ。プラウスさんの圧勝でしょ」
「だな。さすがにそれで同格は無理があると俺も思うな」
強がるエミリスにリザとニックがすかさず突っ込み、エミリスはぐぬぬと唇を噛み締める。そして私がそれなりの実力者だと知れて持ち直したウェントが、話を振ってきた。
「そういえば、プラウスさんは俺たちに色々と聞きたいことがあったんですよね? できる限り答えるのでなんでも質問してください」
「それならまずこの場所、ギルド内で何をするのか教えてほしい。ここにはハンター登録した時に来ただけで、それ以外で何ができるのか知らないんだ」
「登録以外でギルドを利用したことがないってことですか? 討伐した魔物はどうしたんですか?」
「必要な分だけ回収して知り合いに渡している」
「そ、そうですか。では俺が説明しますね。ここハンターギルドでは、討伐した魔物の売却とパーティーの結成ができます」
「……終わりか?」
「はい、主なことはその二つに限られると思います。近辺に出現する魔物の情報が得られたり、指定された魔物の素材を納品する依頼や、ランクの高い魔物の討伐依頼が出されたりしますが、知らなくても活動に支障はないと思います。ああ、そういえばランクが高いと調査や護衛依頼もあったりしますね」
どうやら私が思っていたよりもかなり単純な仕組みらしい。いや、魔物狩りと言うのだから魔物を狩るのが仕事というのは理解していたが、それにしてもほとんどそれだけとは。なんだか拍子抜けしてしまう。
「他にも聞きたいことはありますか?」
「そうだな……それならもう二つほど教えてほしい。あなたたちのパーティーは前衛後衛のバランスがいいと思う。実力も見たところ十分手練れと言えるほどだ。そんなあなたたちが新しくパーティーメンバーを増やす理由はなんだ? そしてなぜ仮面を付けた怪しげな人物をわざわざ誘った?」
私が彼らの立場なら、仮面付けて声まで偽っている人間に背中など預けたくはない。そして彼らはハンターとしての自分に誇りを持っているようだった。なら実力以前に、最低限の信頼すら築けない相手とはパーティーは組めないはずだ。それなのに私の素性について一切気にした様子がない。それが気になった。
「あー、パーティーメンバーを増やす理由ですね……? それはですね、えっと……」
「ちょっと! 隠すべきことでもないんだからハッキリ言いなさいよ!」
「そ、そうだな。──では話します。……俺たち炎の剣は、最終的に西の大陸に行きたいと思っているんです」
西の大陸。その言葉を聞いたとき私の口から「ほう」と感嘆の声が漏れた。
ウェントは若干恥ずかしそうにしているが、エミリスを始め他の三人は堂々としていることから本気であることが窺える。
西の大陸……通称魔王大陸。
かつて大戦で数多の魔物を支配下に置き、人類を絶滅寸前までに追い込んだ魔物。後に魔王と呼称されるその個体が誕生したとされている大陸だ。それが海を越えた先に存在している。
その大陸に生息する魔物の脅威度は、私が住まう大陸の西側の魔物に匹敵、あるいはそれ以上とされ、その上限は未だ知れていない。ドヴェルグは推定ランク2とされる魔物の存在が確認されたと言っていたので、それより上が存在したとしてもおかしくはない。つまり魔王大陸とは、正しく魔王級の魔物が跋扈する土地なのだ。
そこに集まる魔物狩りの実力は、私たちが住む大陸に比べれば当然高い。シャノン級がそれほどいるとは思わないが、母くらいの実力者ならゴロゴロいると思う。
そんな人外が集う魔王大陸を目指すというのは、人によっては大いに笑われることになる。だからウェントは恥ずかしそうにしていたのだろう。
「……プラウスさんは笑わないのですね。俺たちが西の大陸を目指していると言っても」
「笑いはしないさ。それで、あなたたち炎の剣が西の大陸を目指していることは分かったが、それとパーティーメンバーを増やすことに何の関係があるんだ?」
「はい。……今の俺たちでは、西の大陸に挑むには全然実力が足りていません。だから各々地力を上げることは当然として、パーティーの実力を底上げするには仲間を増やすのがいいと思ったんです」
「なるほど。それで私を誘ったのか」
「その通りです。そしてもう一つプラウスさんを選んだ理由ですが、それは単純にプラウスさんが強いと思ったからです」
その言葉に私は疑問に思う。実力と言われても私は彼らに戦うところを見せたことはない。使える魔法の属性や等級だってここに来て初めて教えた。彼らが私の強さを判別する材料は後は外見くらいのもののはずだ。
もしかして私お手製のこの衣装が評価されたのかと、少しドキドキしながら問いかける。
「……私が強いと思った根拠は何だ。……外見か?」
「いえ、佇まいです。俺は何となく魔力の流れが分かるんですけど、プラウスさんの魔力の流れはとても自然で、実力者が持つそれだと思ったんです」
全然違った。少し恥ずかしい。
それにしても、魔力の流れで実力者かどうか判別できるとは知らなかった。というより意識したことがなかった。でも言われてみれば私の身近にいた強者と言える人たちは皆そうだったかもしれない。試しに今この場にいる人たちの魔力を探ると、確かに母や姉様に比べると不安定だ。
私はまた一つ賢くなったと思うと同時に、魔力の流れを感じ取れるというウェントに感心する。
「ふむ、魔力の流れがわかるのか。それは大したものだ」
「俺が持つ数少ない特技の一つなんですよ。プラウスさんもそうですよね?」
「ああ、だが予め私が実力者だと分かっていたなら、エミリスの初めの発言はなんだったんだ。ウェントが魔力の流れを読めることをエミリスたちが知らないわけではないだろう?」
「それとこれとは話が別よ。ウェントのことは信用しているけど、それで初めて会う相手まで信用できるほど私はできた人間じゃないのよ」
鼻を鳴らしながら言うエミリスに私は「なるほど」と答えた。
ハンターの流儀は知らないが、自分の口から自らの実力も語れない人間を信用することはできない。きっとそういうことなのだろう。
私は聞けたいことを聞けたと話を締めくくる。
「私のために時間を使ってもらってありがとう。色々と教えてくれて助かった」
「全然構いませんよ。そういう約束でしたから。それでパーティーとして活動するのは今からでも問題ないですよね?」
「ああ、一時的な加入だがよろしく頼む」
こうして私はカラッソに来て、初めてパーティーを組むことになった。




