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魔道のマナー  作者: 青梨
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その後色々

「あのぉ〜、ミーナちゃん? そろそろお母さんも会話に混ぜてくれると嬉しいなぁって、お母さん思うなぁ〜?」


 私とメアリーが楽しそうに会話している最中に、背後からそんな言葉が掛けられる。その声にメアリーはびくりと肩を硬直させたのを見て、私は母を睨みつける。


「母様、私はまだ母様がしたことを許したわけではありません。いくら私のためだったとはいえ、今回のこれはやり過ぎです。しっかり反省してください。それとメアリーを怖がらせないでください」

「ここ怖がってないわ!わたしは全然怖がってないからねっ!」


 強がるメアリーを優しく撫でると、メアリーは顔を赤くしながらもそれを受け入れた。

 母は私の態度にしょんぼりしている。しかし今回は母が悪いのだからと私は心を鬼にする。


「ミーナ様、アナベル様を許してあげてください。今回の事はアナベル様もミーナ様を思ってのことだったのです。アナベル様ほどの達人ならば、その覇気と威圧でそこらの者なら屈服させることができるでしょう。しかしこの場にメアリー様がいらっしゃり、ミーナ様も来られたことでそういった手段を取ることができず、会話の主導権をイザベル様に渡すことになってしまったのです。それがなければきっとイザベル様に非を認めさせた上で、場を丸く収めることができたでしょう。そうなればイザベル様もカールストン侯爵家ももうミーナ様に手を出すことはない。アナベル様はおそらくそういう心算だったのです。当家の騎士を叩きのめしたのも、自分がミーナ様の側にいると周囲に知らしめる意味があったものと思われます」


 ギルベルトが母に助け舟を出したので、疑いのこもった目で母の方を見ると、その通りだと言わんばかりに頭をブンブンと上下に振っている。どうやら本当らしいので仕方なく私は母を許すことにした。


「……母様にそういう理由があったのは理解しました。だからその件については許します。ですが、多くの無関係な人を巻き込んだことはちゃんと反省してください」


 しゅんとしてしまった母様の側に行き私は母様の手を握る。


「でも私のためにあれだけ怒ってくれたのはすごく嬉しかったです。ありがとうございます母様」

「うっゔぅ……ミーナちゃああああああん!!!」


 泣き出しながら私に抱きつく母。そんな母の頭を私は撫でる。本当に困った母だが、きっと私はこんな母だから好きなのだ。

 そしてもう一人の家族も呼ぶ。


「メアリーもこっちにおいで」


 私の言葉に迷う素振りを見せたもののメアリーはこちらに来た。私が手を伸ばしメアリーもその手を握ると母にまとめて抱きしめられた。


「メアリーちゃんごめんねぇ……。私のせいでイザベルと喧嘩することになっちゃって……。……そのっ、私のことはもう一人のお母さんだと思ってもいいからね? メアリーちゃんが寂しいときは私とミーナちゃんが一緒にいるから」


 急にそんなことを言われて「はっ、はい」と曖昧に頷くメアリー。そのメアリーを私と母がさらに強く抱きしめた。メアリーは苦しそうにしながらも笑っていた。それを見て私と母も笑顔になった。


 結果論とはいえ、メアリーと仲良くなれたことで、私的には大幅プラスな一日となった。



 この後、名残惜しくもメアリーとは別れ私と母は部屋に戻った。部屋に戻った私は母に森であったことを話した。初めての魔物に恐怖したこと。私の力のこと。その力で魔物を倒したこと。そして騎士の人のこと。

 特に母が驚いたのは、私がランク6の魔物を倒したことについてだった。

 母は私が魔法を使えることはさっき知ったわけだが、その話にはさすがに懐疑的だった。

 だから私は母の前で回復魔法を使用し、母に使ってみせた。そうしたら母はさらに驚いて、その後私をめちゃくちゃに褒めた。私が魔法を使えるようになったのがそれほど嬉しかったようだ。

 その後は騎士の人のこともしっかり話した。

 今回のことで気づいたが、母は何かあると暴力的な手段に訴える可能性がある。だからちゃんと話しておかないと、母に騎士の人がボコボコにされてしまいかねない。

 母は一度は私を魔物に殺させようとした騎士の人に眉をひそめていたが、私を命懸けで助けてくれたことを伝えたら、その人にもお礼を言わないとねと笑顔で納得してくれた。


「それでミーナちゃん? 何かお母さんに言うことはあるでしょう?」


 そんなものあっただろうかと首を傾げる。すでに全部話したような気がしたのだが。

 何を聞かれているのか分からない様子の私に、母はにっこりと笑って私の小さな頭に両手の拳をぐりぐりと押し付けた。


「どうして魔物と戦うなんて危険な真似をしたのかしらぁ〜? それにイザベルに強制されたからって、予めイザベルの目的がわかってたのにどうして素直に従ったのぉ〜? ミーナちゃんがそういうことはしない子だって知ってるけど、嘘泣きでもなんでもしてもっと周囲の人に頼るべきじゃなかったかしらぁ? 私はもっとミーナちゃんは自分のことを大事にするべきだと思うの。……万が一にもミーナちゃんがいなくなったら私……」


 途中から手が止まり、最後のには泣き出してしまった母を見て、私は無性に申し訳ない気持ちになった。心配させてごめんなさいと謝りながら私は母に抱きつき、母も抱き返してきた。

 その状態でしばらくいると母はやがて泣き止み顔を上げた。


「……ミーナちゃんには私を心配させた罰を与えます」


 この一言により私はこの後一週間部屋に閉じ込められ、母の前で勉強させられることになった。






 私が懲役を終えてからも色々あった。

 あれからイザベルやベルトランには絡まれていない。というよりその二人はすぐに王都へ行ってしまったのだ。メアリーを置いて。

 置いて行かれたメアリーは悲しそうにしながらも強がって見せたので、私と母が存分に甘やかした。部屋に招いて一緒に食事をしたり同じベッドで寝たりした。ベッドの中ではメアリーはやたらと甘えたがった。

 メアリーは偶にイザベルと眠ることがあったそうだ。その時には寝る前に本を読んでもらったりその日起きたことを色々話したりしたそうで、そのことを話している内に泣いてしまった。私と母はそんなメアリーを間に挟んで、両側から抱きしめその状態で眠った。

 イザベルは私と母にとっては嫌な相手でしかないが、メアリーにとっては血の繋がった唯一の母親だ。その代わりは私の母にもできても、それは所詮代わりでしかないのだ。そのことを思い知った私は、密かにいずれイザベルとメアリーを仲直りさせると心に誓った。


 後で知ったことだが、騎士の人もこのタイミングでいなくなっていたらしい。自称私の騎士なだけで、公式にはカールストン家の騎士のため護衛として同行することになったのだろう。

 まともに挨拶もできなかったけど、また再会できることを星に願うことにした。


 そして久しぶりに父も帰って来た。父が帰ってきたのはイザベルたちが王都へ出発した翌日で、やたらと残念そうにしていた。私は父にも母と同じように私が体験したことを話した。その場にはメアリーもいて二人して色々と良い反応をしてくれた。メアリーが驚いてくれてこれで姉の家威厳が保てると私は胸を張った。

 父は私の話を聞いて、私のために魔晶核を用意してくれると言ってくれた。しかし私はその提案を断った。魔晶核はランクの低いものでもそれなりに高価であるし、それに毎日魔法を使って魔晶核を消費するという予定もない上に、必要なのは私が持ち運べる量だけだ。予備に用意しておくととしてもそんなに量はいらない。そんな理由で断ったが、父はそれなら必要な分だけでも強引に決めた。これは私の命を守るために必要なことだと譲らなかったのだ。なので私は父の好意だと思い、意見を翻すことになった。


 それから姉様たちも帰って来た。姉様たちは母親の実家に里帰りしていたそうで、その時のことを色々と話してくれた。私もメアリーを交えて色々と姉様に話をした。姉様は私が魔法を使えるようになったことよりもメアリーとのことを喜んでくれて、メアリーも恥ずかしそうに姉様と話していた。

 その時に私はそういえばどうしてダミアンはいないのかと質問した。あの姉にべったりな弟は、私と姉様がお茶会をしているときだけはいない。私の質問に姉様はどうしてでしょうねと困ったように笑っていた。


 他にも母様に連れられて、魔物狩り組織であるハンターギルドリシャール支部に行った。ここにはおかしな受付嬢がいて色々と話を聞かせてもらった。私はその中で特に母の武勇伝が気になった。母は恥ずかしそうにしていたが、私の知らない母のことを聞けて私は満足だった。

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