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14.ヒロインと悪役令嬢は、“親友”らしい






「レベッカが主人公であるこの“華の命~永遠の愛を君に~”というゲームは、プレイヤー…、そのゲームを攻略する人の選択肢によって、未来が変わりますの。だから、色々な形の終わりがありますわ」

「はい」

「ですから、ゲーム内での決まったエンディングというものはないのです。なので、私が覚えている攻略対象のエンディングによってレベッカが使っている魔法は全部違いましたわ。フランシス・セウェル様のルートでは白魔法を使っていましたが、クルシュマン先生のルートでは突然変異ということでなんかよく分からない魔法を使っていました」

「え‥‥」

予想外の言葉に絶句する。

白魔法…?突然変異…?

白魔法がなにかはよく分からないけれど、どう考えても物を消失させることと関係あるようには思えない。ということは、私は突然変異…?

でも突然変異ってどういうこと?

「だから、レベッカは突然変異でも白魔法の使い手でもないと思いますわ」

「え、そうなんですか?」

「たぶんですけれど。確かに、攻略した相手によってレベッカの魔法の属性は違いました。ただ、私が前にも言ったように“隠しキャラ”のルートはゲームの中でも特別ですの。ゲーム全体においての謎が解き明かされるルートなので、攻略制限がかかっていますわ」

「攻略制限?」

「ええと‥。リーウのルートをプレイするためには、他のキャラのハッピーエンドを全部クリアしないといけないようになっているんですの。そういうのを攻略制限って言うんですわ」

「リーウが特別だってことですか?」

「そうですわ。だから、たぶんそのルートを思い出せばレベッカの魔力がゲーム内で正確にどう描写されていたかが分かると思いますわ。でも、そのルートだけがどうしても思い出せなくて…」

「そうなんですね…」

意気込んで聞いた割には曖昧な答えに、拍子抜けのようなものを感じる。聞かないですんでホッとしたような、残念なような気持ちだ。

私自身は魔法が使えても使えなくてもどちらでも構わない。でも、もし私がろくな魔法を使えないなら、この学園に在籍している意味も、“レベッカ・コールウェル”としての価値もなくなってしまう。

それがハッキリと分かったときに私がどうなるかなんて、考えたくもない。

だから、将来を考えると時々息が詰まるように不安な気持ちになるときがある。

ロレーナが、ゲームでの中の私の能力を思い出してくれれば、そんな不安を感じることもなくなるのだろうか。




「レベッカ」

「はい」

そう思っていれば、それを察したのかロレーナに名前を呼ばれた。

なんだかいつもと違って笑みの欠片もなく真面目な顔をしているから、私も自然と背筋が伸びて身構えることになった。え、え、何の話だろう。

「私、レベッカはすごい人だと思いますわ」

「…へ?」

真面目な話かと思って覚悟していれば、いきなりそんな宣言をされる。

何の話?

「頭も良く、努力家で、美人で、性格は天使みたいに優しくて、いつもふんわりお菓子の匂いがする。もう本当に、さすがは乙女ゲームのヒロインーーと、いいたいところですが」

「いいたいところですが?」

「それだけではなく、レベッカは数多あるヒロインの中でも一番素敵な人ですわ。これは“ミズノ ミライ”時代から思ってきたことです。というか、ヒロインとかとはまったく関係ないところでレベッカのことが大好きですわ」

「え、あ、」

「私、最初、“ミズノ ミライ”としての記憶を取り戻した時には本当にショックを受けたんです。自分がここまで誰かを傷つけることが出来るなんて思いもしなくて。だからどうしても自分を抑えられなくて、衝動的にレベッカに謝りにいったんですわ。けれど、心の中ではここまでのことをしておきながら許してほしいなんて烏滸がましいということはきちんと分かっていました」

「‥‥」

「だから、レベッカが許してくれたとき、正直に言いますとコイツ頭おかしいだろって思ってしまいましたわ」

「そんなこと思ってたんですか⁈」

「そして、絶対に信じてくれないだろうなと思っていた私の前世の話や、この世界がゲームだという話をレベッカが信じてくれた時には、失礼ながら勉強はできても頭はとても弱くて常識がないんだと思ってしまいましたわ」

「失礼ながらどころの騒ぎじゃありませんよ!?」

「だから、大丈夫なんですわ」

「な、何が大丈夫なんでしょう…」

何も大丈夫じゃない。

これまでのロレーナの言葉でもう既に私の心はボロボロなんですけど。

ま、まさかロレーナに常識がないと思われてたなんて…。

それ、ただ馬鹿って言われるよりも落ち込むんだけど…。

「大丈夫ですわ。だってレベッカが仮に一切魔法を使えなかったとしても、ポンコツな魔法しか使えなかったとしても、」

「ポンコツ‥」

「はい、ポンコツでも。それでレベッカが私にとってすごい人ではなくなるわけではないんですわ。私にとってレベッカは、いつでも尊敬できる人ですもの」

「、」

ロレーナによって心がボコボコにされていたけれど、ロレーナの温かい言葉に胸が熱くなった。

これこそ、“落として上げる”ということかな。

じわっと、意識していないのに頬に熱が集まった。ここまで賞賛されたことなんてないから、純粋に嬉しい。

「最初はレベッカとこんな平和な関係になれるとは思ってませんでしたわ。でも今では、レベッカと仲良くない日を想像するほうが難しいですもの。私にとっては、レベッカが魔力を使えようが使えまいがどうでもいいことですわ。だから、そこまで自身の魔法の適正について悩まないでくださいな」

「…ありがとうございます。おかげで元気が出ました。私も、ロレーナのことが大好きですよ」

私も、思ってなかった。

まさか、私がロレーナと仲良くなれる日がくるなんて。

「ふふっ、それでも面白いですわね」

「何がですか?」

「一応、私はヒロインを虐める悪役令嬢。そして、レベッカはヒロイン。なのに、こんなに仲良くなれるなんてびっくりですわ」

「そういえば、そうでしたね。でも、いいんじゃないですか?お話通りじゃなくても。私達が、初めての“ひろいん”と“あくやくれいじょう”の友達になればいいんですよ」

「それも、楽しそうですわね」

お互いに顔を見合わせて笑い合う。

でも、今ではこんなにお互いの距離が近い。爵位とか、力とかがなくなったとしても、それでも一緒にいてくれるだろう相手。友達。



もしかして、これが良く言われる親友というものなのかな、とこっそりと思った。

少し前までは恐怖の対象だったアメジストの瞳が、今では見ると笑顔になれる。それはとても不思議なことで、でも嬉しいことだった。










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