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もうひとつの不可思議セブン9

 透にしては、なかなかいい話だった。だったけど……


「まさか、それで終わりか? 全然オチがないじゃねぇか!」


「あーあるよ。オチある。それで、最後にはぐれ妖怪に噛まれた歯型がね、お尻の真ん中にこーんなハート型の傷になって残っちゃったんだ。座敷童子になった今でも消えずにずっと残ってるんだよ。おかしいでしょ」


「いやいや、オチってそういうのじゃないだろ!」


「そうかな? ちょっと可愛いくて気に入ってるんだ。見る?」


 お尻にハートの歯型? そういやコイツの裸は見慣れてるけど、さすがにパンツの中までは見たことがなかった。


「見ねぇよ! そんなもん!」


「何怒ってるの?」


「怒ってねぇし! いいか、オレがホントの『スベらない話』ってのを聞かせてやる! ネズミども、耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ!」


 息込んで檻の外を見回したところで、ふと気がついた。


 さっきまであたりを埋め尽くしていたネズミたちがすっかり減って、小さく痩せた鼠がぽつんと一匹。


 そして、オレたちを閉じ込めていた檻の扉がガシャンと音を立てて開いた。


「……もう出て行ってくれ」


「はい?」


「なんで全然怖がらないんだ。おまえらみたいな奴らがいると、こっちの力が弱まっちまう。とっとと四階から出ていきやがれ」


 どうやら、恐怖がこのネズミたちの餌だって推理は的中してたらしい。


 透のスベらない話はスベりまくりだったけど、怖がってないっていう意味では大爆笑を取ったのと同じ効果があったってことか。


「じゃあ、オレたちの勝ちってことでいいんだな。七不思議その六は達成ってことで」


「ああ、こっちの負けだ。早く行け!」


 *        *       *


 痩せ鼠に促されてエレベーターに乗ったオレたちは、無事二階まで戻ってきた。


 そこには、大人の色気ムンムンの水天宮玲子先生が待っていてくれる。


「難関と言われた第四、第五の不思議をこうも簡単にクリアするなんて。さすが七十七不思議の制覇者。やるわねぇ」


 絶世の美女に手放しで褒められるのは悪い気はしない。


 けれどオレ自身が活躍したわけじゃないので、素直に喜ぶ気にはなれなかった。


「七不思議はもう一つ残ってるんだろ。さっさと済ませようぜ」


「あら、なんだかゴキゲン斜めね。あー、そういうこと?


 すると、玲子先生が思いついたと言わんばかりに手を打った。


「座敷童子の昔話にジェラシーを感じていると」


「えっ、九郎ちゃんそうなの!?」


「そりゃそうよね。今もお尻に歯形が残ってるなんて、元カレの名前の刺青が入ってるみたいなもんだし。ヤキモチ焼いちゃうわよね」


「違わいっ! 誰がヤキモチなんぞ焼くか!」


 全然違わない。図星だった。さっきから腹の上のあたりがムカムカするのは、きっと嫉妬ってヤツだろう。


「え、ええと、あのはぐれ妖怪の男の子とは何にもなかったからね。まだ小さい頃の話だし、付き合ってたとか恋人だったとかってわけじゃなから。ボクの心は九郎ちゃん一筋だから」


 言い訳をする透の顔が、妙に上から目線でニヤケているのがまた気に食わない。


 オレは、透の尻を蹴り上げた。


「ほら、さっさと最後の七不思議に行くぞ。そうすりゃ、青嵐の主ってのが復活して聖玉との契約をチャラにしてくれるんだよな」


 玲子先生は妖しくうなずく。


「その通りよ」


 それを聞いた透は、餌をねだる犬のようにまとわりついてきた。


「そしたら九郎ちゃん、ボクを選んでくれるんだよね」


 聖玉との契約が切れれば、無事高校を卒業できる。それだけじゃない。彼女を作ってXXXすることもできるわけだ。しかし――


「誰が選ぶか、この中古!」


「ひどい! 中古じゃないよぉ! ぜんぜんバージンだってば」


 選ぶなら、真紅さんか白神先輩、もしくはクインティーか?


 ふと気がついた。さっきまでオレたちに指示をくれていたクインティーの姿がない。


「あれ? クインティーさんは?」


「ああ、ちょっと具合が悪くなったって休んでる。まあ、七不思議達成間近で病院に妖気が満ちてきてるからね」


「大丈夫なのか?」


「心配ないわ。あの子はそんなにヤワじゃないもの。それより、最後の七不思議はこっちよ」



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