もうひとつの不可思議セブン6
* * *
クインティーに促されて、オレと透は再びエレベーターに乗った。
エレベーターは今度は上昇して四階に停止する。
ここも、階数表示には記載がなかった。一、二、三階と来て、次は五階になっている。「四」が「死」に通じて不吉だからってよくあるヤツだろう。
「青嵐中央総合七不思議その6は、『死階の覇者』デース。この病院にあるはずのない四階の支配者を打ち倒してくだサーイ!」
四階の支配者で「死階の覇者」か。なんとなく不気味だけど、ここまできたらやるしかない。
「よし、このまま一気に攻略するぞ!」
「うん、ボクも頑張るよ!」
オレたちは意気込んでエレベーターを出た。
――しかし、その30分後。
オレと透は、冷たい鉄檻の中に閉じ込められてしまっていた。
* * *
「我々は、失われし死階の覇者。忘れ去られた惨と悟の狭間を統べるものたちである」
鉄格子の前で、巨大なネズミが得意げに声を張り上げる。
どうやら、『死階の支配者』とはこのネズミたちのことらしい。正確には、ネズミの妖怪だ。三階と五階の間に巣食っていたネズミが、長い年月を経て妖怪化したんだろう。
エレベーターを下りたオレと透を待っていたのは巨大なネズミたちの群れだった。キーキーと叫び声をあげるおぞましい毛むくじゃらに囲まれたオレたちはこの檻の中に追い立てられ、あっという間に監禁されてしまった。
どぶ臭い息を吐きながら、ネズミたちは続ける。
「久しぶりに人間がやってきた、おまえたちで楽しませてもらうぞ!」
「病院が廃院になって人間どもがいなくなったせいで、我らの仲間のずいぶん減ってしまったからな」
「逃げようとしても無駄だ。これまで幾人もの人間が我々を駆逐しようとやってきたが、誰一人我が支配を覆すことはできなかった。おまえたちも、恐れおののくがいい!」
ネズミたちはいっせいにキーキーと鳴きはじめた。背筋が寒くなるような気持ちの悪い鳴き声だ。
これで数が減ったというなら、もとはいったいどんなだったんだろう。
「どうする、九郎ちゃん! このままじゃボクたちあのネズミたちの餌になっちゃうよ!」
透が悲鳴を上げる。
そう言えば、こいつはネズミとか苦手だったっけ。
「そうだな、きっとオレたちネズミたち食べられちまうかもな」
「そ、そんなぁ」
「病院が廃止になって餌が無くなったって話だから、ずいぶん腹を空かせてるだろうし。生きたまま手足をバリバリっと」
「うそぉぉぉ」
冗談で脅しをかけると、大きな垂れ目にみるみる涙が浮かんだ。オレの制服の袖を掴む手が震えている。
「……で、でも、それならボクが先に食べられて時間を稼ぐから」
想定外の健気な言葉にドキっとして、思わず顔をそむけた。
「あのなぁ、おまえ座敷童子だろ。なんでそんなにビビってるんだよ。大丈夫、食べられたりしないよ」
「でも、餌がなくてお腹が空いてるって」
「オレたちの身体を食べるつもりなら、もうとっくに食べられてるさ」
「……そうかな」




