もうひとつの不可思議セブン1
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残る三つの七不思議を制覇することにしたオレは、玲子先生とクインティーに連れられて病院の中央にあるエレベーターホールにやってきた。
「クインティー、説明してあげて」
クインティー・ベイカー嬢は柔らかな金色の前髪を掻き上げて、「イエス」と頷く。
「青嵐中央総合病院七不思議その五へは、このエレベーターで行きマース!」
彼女の声は単に片言というだけじゃなく、Lの響きに独特な響きがある。まるでガラスを弾いたような綺麗な音だった。
チンという音とともに開け放たれたエレベーターの前で、クインティーはまるでエレベーターガールのように微笑んだ。
「そんなわけですから、とっとと乗っちゃってください」
あまりのざっくりした説明に、透が悲鳴混じりに抗議する。
「ちょっと待ってよ! これから何があるのか説明してくれなきゃ、心の準備ができないってば!」
「あら透、いたデスか? ええと、別に透は無理に来なくてもいいんデスよ。七不思議は姫雪クンひとりが体験すればいいんデスから」
「そうはいかないよ。九郎ちゃんとボクは一心同体だもん!」
そう言いながら、オレの腕にしがみついてくる。ギュッと密着しても当たらない胸がなんとも寂しい。しかしそんなまな板の持ち主でも、七不思議制覇となればいた方がいいのは間違いなかった。彼女は座敷童子、それなりに名のある妖怪なんだ。
「まあ一心同体ってのは冗談としても」
「冗談じゃないってば」
「透、ハウス! さすがに、もう少し教えてくれよ。エレベーターに乗ってどこに行って、何をすればいいんだ?」
「しょうがないデスねぇ。姫雪クンには特別に教えてあげマス。まずは地下二階にゴーデス。そこで泣いている赤ちゃんを泣き止ませることが出来たら、みごと任務終了になりマース」
「赤ちゃん?」
「姫雪クンと透でパパとママになったつもりでおねがいしマース」
赤ちゃんを泣き止ませたら、七不思議制覇?
オレは、チラリと透に目をやった。
「ボクと九郎ちゃんでパパとママ……」透はうっとり目を輝かせながらとブツブツつぶやいている。しかし、ママというには透のある部分はあまりに平坦すぎた。
「ママ役なら、どう考えても透よりクインティーさんの方が適任だと思うんだけど」
「残念ながら、ワタシはお手伝いできないんデス」
クインティーはブルブル首と胸を振りながらそう言うと、半ば強引にオレと透をエレベーターに押し込んだ。
ところが、エレベーターの停止階を示すボタンは地下一階までしか表示がない。
「ちょっと待て、地下二階なんてないぞ」
「ハイ。地下二階は特別な階なんで表示されていないんデス。でもダイジョーブ。ちゃんとたどり着きマスから」
微笑みを浮かべたまま、金髪エレベーターガールは閉まるのボタンを押した。
エレベーターの扉が閉まり、ゆっくりと下へ向けて動き始める。
「マジか……特別な階ってなんなんだろう?」
透に訪ねてみたが、こいつはまだ「パパとママ、赤ちゃん、子作り……」とわけのわからんことをブツブツつぶやいている。
オレは、バッグの中から白い羽根を取り出してポケットに差した。
こうなったら、この幸運の羽根だけが頼りだ。




