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青嵐のレキシ2

 映し出された映像は――


 荒波の向こうでライオンが吠えるオープニング。


 さらに「映画泥棒は犯罪です」のパロディ映像が流れる。

 だが、そのクオリティの低いこと。

 かぶりものはダンボール製なのがまるわかりだし、泥棒と警察官(おそらく中身は真紅さんと透だろう)のダンスはぎこちない。


 それ以上にイラっとするのが、その映像を見ている二人の顔だった。妙にキラキラしたやりきった感満載の表情で互いにアイコンタクトを交わしている。

 いやいや、キミたちそんな満足いく内容じゃなかったから!


 ようやくオープニングが終わって本編に突入する。

 オープニングからこれじゃ本編はどんなに気合入ってるんだろうと思っていたら……


『青嵐の歴史は、平安時代にさかのぼる。』


 そこから始まったのは、ブルーバックに白い文字の普通のスライドショーだった。


「これ映画じゃないよね! 前フリの映像いらないよね!」


「「シィッ! 上映中はお静かに!」」


 ダブル眼鏡に怒られた。


『そもそもこの地は、地脈から噴きあがるエネルギーのおかげで豊かな土地柄に恵まれていた。しかし地脈の力は同時に魑魅魍魎をも引き寄せる。集まった妖怪たちを調伏するために、時の帝の命で陰陽師により青嵐神社が建立されたという。これが青嵐という地名の始まりである。』

 

 へぇー、そうだったんだ。


『陰陽師と妖怪の争いは一進一退を繰り返したが、平安時代末期に様相は一変した。大陸の戦神である二郎真君がこの地を訪れ、鬼神となって魑魅魍魎の王の座についたのだ。宮廷の力が衰えたことも災いして、魑魅魍魎たちが青嵐を制覇し、人間はわずかに神社の周辺に住めるだけになってしまった。』


 この二郎真君ってのが、真紅さんなんだよな。吼天犬とかっていう飼い犬を探して日本に来たって話だったっけ。


『人間側がふたたび勢力を盛り返すのは戦国時代になってからだ。この地域の大名となった鳳凰寺氏の命で討伐軍が結成された。目玉は南蛮から渡来した宣教師ドリス・ローレンスだ。ローレンスは従来のように魑魅魍魎と対決するのではなく、共存することを考えた。』


『彼が用いたのが、南蛮から持ち込んだ聖玉だ。聖玉は人間の願いを叶えるが、そのためには七十七体もの魑魅魍魎の力を借りなければならない。妖怪側に生存権を与えつつ、その力を制御するという絶妙なシステムは、鳳凰寺氏が倒れローレンス宣教師が日本を去った後も、青嵐神社とその巫女たちによって現代まで維持されてきた。』


 あの聖玉って舶来品なんだ。


『それが途絶えたのは、第二次世界大戦中のことだ。』


『空襲により青嵐神社が破壊され、巫女の契約が途絶える。戦中戦後のどさくさもあって、青嵐の地は再び荒れ果てた。その混乱に終止符を打ったのが、マーサ・ローレンスという一人の修道女だ。戦国時代に聖玉を日本にもたらしたドリス・ローレンスの子孫だというマーサは、失われた聖玉をみつけだして契約の巫女となり、魑魅魍魎の王である鬼神を人間に転生させた。おかげで魑魅魍魎の力は弱まり、青嵐は再び人の住まう土地となった』


 てことは、そのマーサ・ローレンスってのが前の理事長?


 理事長って外国人だったんだ。白髪のおばあちゃんだから全然わからなかったよ。


『その後マーサ・ローレンスはこの地にとどまり、次郎丸真亜沙と名乗って青嵐学園を設立した。その目的は転生した鬼神に学園生活を送らせることで荒ぶる御霊を鎮めること。マーサの意図したとおり、人間としての理性を得た鬼神は人間と魑魅魍魎の懸け橋になる存在として80年の長きに渡り生徒会長の職を続けてきた』


『言うまでもなく、その鬼神が人間に転生した姿こそが現生徒会長次郎丸真紅である』


『結論:つまり青嵐学園の生徒会長は未来永劫まで次郎丸真紅以外にありえない!』


『さらに結論:姫雪九郎の嫁は前前前世から可愛い座志木透ちゃん以外にありえない!』


 むう、最後以外はわかりやすいスライドだった。

 腕を組んでうなずいていると――


「最後のスライドは何です!? 透さん、あなた何勝手なことしてるの!」


「ちょっとくらいいいじゃん。ボクがどんだけ手伝ったと思ってるのさ。真紅ちゃんのケチ!」


 なんだか、小競り合いがはじまった。


「ケチとはなんです! あなたが九郎のそばにチョロチョロしてるのを見逃しているのは私の温情なのよ! なんなら成仏させてもいいんだから!」


「あー、ずっるい! すぐそうやって力ずくで弱い妖怪を従えようとするのやめてよね! 真紅ちゃんホントは生徒会長の器じゃないんじゃない!?」


 眼鏡同盟はどうやら決裂のようだ……うーん、思ったより早かったかな。


  *         *         *        


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