恋と選挙と新キャラクター4
胸元の大きく開いたブラウスにスリットの入ったタイトスカート。豊満なボディを無理やり白衣に包み込んだその姿は、AVに出てくる女教師そのまんまだ。いや、それよりも何よりも……
「白神先輩、なにやってんですか?」
彼女は、ついさっきまで保健室で顔を合わせていた白神一子先輩その人だったんだ。
「先輩? キミ、1年C組の姫雪君よね。そりゃあたしはこの学園の卒業生だからキミたちの先輩だけど、先生にむかってその呼び方はないんじゃない?」
「???」
「あたしは、昨日付けでこの青嵐学園に赴任してきた養護教諭の水天宮玲子です」
女教師スタイルの白神一子先輩は、真顔でそう名乗った。
真紅さんが食って掛かる。
「何言ってんの、どう見たってあなた白神一子でしょ。なによ、養護教諭って」
しかし、女教師は涼しい顔だ。
「あら、理事長には承認いただいてるはずですけど? もしかして書類をご覧になっていない?」
「ぐぐ、それは……最近あんまり頑張らないことにしていて、人事のことなんかは校長先生におまかせしてるから……」
「なら、問題ないですね。実は、ここにいるベイカーさんに生徒会長選挙に立候補するように勧めたのはあたしなんですよ」
「先輩、じゃなくて、先生が? なんで?」
「ベイカーさんは日本に来てまもないので、日本や学園に慣れるにはには選挙活動をするのが一番だと思ったんです。でも何十年もこの学園に次郎丸さんと、昨日転校したばかりのベイカーさんでは勝負になりませんね」
「そりゃそうよ。私を誰だと思っているの!」
「だから、ハンデをもらえないかしら? 選挙活動期間のたた2か月で、ベイカーさんが全校生徒からの支持を取り付けるのは難しいでしょう?」
「どうするの? 選挙期間を延ばせっていうの?」
「そうではなく、この2か月で次郎丸さんとベイカーさんが支持を訴えるのは姫雪君一人だけにする」
これには、オレも透も真紅さんもビックリだった。
「ええっ!」
「何言ってるの、一子ちゃん!」
真紅さんはいぶかしげに尋ねた。
「それがどうしてハンデなの? 言っておくけど、わたしと九郎はもう名前で呼び合ってる深い仲よ。二人っきりで夜を過ごしたこともある」
「二人っきりで夜を過ごしたって、九郎ちゃん、それどういうこと!?」
透が悲鳴をあげる。
「いや、別にそんなことは……あるような、ないような」
おそらく篭り鼠の穴に落ちたときのことを言ってるんだろうけど……
透がいるとギャーギャー喚いて面倒くさい。とりあえず、腹を殴って黙らせた。これで、先輩たちの話についていける。
「他の男子ならともかく、九郎が私以外に投票するなんてありえません」
しかし、白神先輩改め水天宮養護教諭は挑発的な笑みを浮かべた。
「あら、男ってのは常に刺激を求めてるの。新しい女が来れば目移りするものよ」
クインティー・ベイカーも口をそろえる。
「そうデス。とくに日本の男の子はほとんどロリコンだって聞いてます。口うるさい年増よりも聞き分けのいい若い子のほうが好みなはずです」
それを聞いた真紅さんは、キッとオレを睨み付けた。
「そうなの!?」
「いやいや、一般的にそういう傾向はあるかもしれないけど、オレがそうってわけじゃ……」
「なによ、はっきりしないわね」
オレの返事に不満げな真紅さんは、水天宮先生とクインティーに向かって宣戦布告のように言い放った。
「いいでしょう。その申し出、受け手立つわ。とにかく、九郎が私より他の女を選ぶなんてありえない。特にポッと出の、胸がデカいのだけが取り柄みたいな女をね」
「そうだよ、九郎ちゃんは幼児体型のちっぱいが好きなんだからね!」
ゾンビのように起き上がった透の腹を踏みつける。
「人を変態みたいに言うな馬鹿!」
真紅さんの返答に、水天宮先生とベイカー嬢は顔を見合わせてニヤリと笑った。
「じゃあ、今から二か月後、生徒会長選挙の前日に、姫雪九郎君にどちらを選ぶか決めてもらう。負けた方は、おとなしく会長選挙を辞退すること。それでOK?」
「OKよ」
「それじゃあ、二か月の間は両陣営が一日おき交互に、姫雪君に対して支持を取り付けるための選挙活動をおこなうことにする。一方の陣営の活動に他方は口を出さないこと。これも異存ない?」
「異存ないわ」
なんだか、とってもイヤな予感がする。
これからの二か月、いったい何が待っているんだろう?
もしかして、これは恐ろしい地獄の六十日間の幕開けなんじゃないだろうか?




