恋と選挙と新キャラクター3
「大変、大変なんだってばぁ!」
真紅さんは掲示板を見上げながら仏頂面を浮かべている。オレは、会長と戦うという白神先輩の言葉を思い出しながら、肩をすくめてみせた。
「会長の他に立候補者がいたって言うんだろ」
「へっ!? どうしてわかったの?」
やっぱり、そうか。白神先輩は生徒会長選挙で真紅さんと戦うつもりなんだ。
でももしそうなったら、オレはどっちを応援すればいいんだろう?
真紅さんか? 白神先輩か?
総合的に考えて、真紅さんの勝ちは揺るがないような気がするけど……
「まあ白神先輩は本気で生徒会長をやりたくて、立候補したわけじゃないと思うんだよね」
オレの台詞に、会長と透は怪訝な顔になる。
「何でここに一子ちゃんの話が出てくるの?」
「そうです。いまはこのナンチャラという一年生をいかに粛正するかという話です」
一年生? ってことは立候補者は先輩じゃない?
それにしても対立候補に立っただけで粛清って、どこの独裁政権だよ。
オレは、掲示板に貼られた立候補者の氏名に目をやった。
○次郎丸真紅 3年
○Quinty Baker 1年
「白神先輩じゃなかったのか……一年生で立候補なんてすごいけど、クゥィンティ? 何て読むんだ。ファミリーネームはベイカーだろうけど」
「クインティーって呼んでください」
「へぇー、クインティーって読むんだ……って、えっ?」
振り返るとそこに、見知らぬ女子生徒が立っていた。
(こんなコ、ウチの学園にいなかったよな)
真紅さんと違って、オレは学園の全生徒を把握しているわけじゃない。それでも、彼女が昨日までこの学園に在籍していなかったことは断言できた。
陽の光を浴びてキラキラ輝く金髪ツインテール、透き通るような白い肌、宝石の様な青い目。そして、不自然なまでに突出した制服の胸。
ハーフなんて生易しいもんじゃない。バリバリの白人だ。
こんな目立つ子が同級生にいたのなら、たとえクラスが違っても気づかないわけがない。
「ワタシ、クインティー・ベイカーっていいます。昨日転校してきたばかりなんです。よろしくお願いしますね、姫雪クン」
「あ、ああ……って、なんでオレの名前を?」
「はい、ワタシの友達に教えてもらったんです。姫雪クンはとっても頼りになるナイスガイだから、困った時は相談するといいって」
「そ、そうなんだ。日本語上手だね」
「はい、これもその友達に教えてもらいました」
「へぇ、ちなみにその友達の名前って?」
なんとなく嫌な予感がする。オレが尋ねると、
「聞きたいですかぁ?」
そう言ってクインティーはオレの腕にしがみついてきた。
二の腕に柔らかい感触が伝わる。彼女はスタイルもインターナショナル。胸の大きさなら白神先輩にも負けていない。
「ちょ、ちょっと、九郎ちゃん、なにやってるの!」
「そうよ、学内で不純異性交遊なんて許しません!」
透と真紅さんが、慌ててオレとクインティーを引き離した。
クインティーはペロリと舌を出す。
「すいませーん、ワタシって気にいった男の人を見るとすぐ自分のモノにしたくなっちゃうんですよねぇ」
それを聞いた二人の顔色が変わった。
「会長さん、聞きましたか? 今この小娘、ボクの九郎ちゃんをモノにしたいとか戯けた事ぬかしやがりましたですよ。まったく、死ねばいいのに!」
「ホント、昨日今日転校してきた分際で生徒会長選に立候補ってだけでも生意気マックスだっていうのに、あまつさえ九郎争奪戦でも対抗馬になろうなんて思い上がりも甚だしい。ちなみに透がチラリとボクの九郎ちゃんとか妄言を吐いたことは正妻の余裕で見逃してあげますけど」
「へぇ、じゃあボクも、真紅ちゃんが九郎ちゃんのことを九郎って呼び始めたことを寛大な気持ちで許してあげるよ。ボクなんか一年も前からそうだったからね」
さっきまで味方同士だった透と会長が一触即発のにらみ合いをはじめる。
いったい誰が誰と戦ってるのか、さっぱりわかんなくなってきたぞ。
そんなカオス状態を収めたのは、予想外なところから出た鶴の一声だった。
「まったく、ピーチクパーチクうるさいわね。職員室の前で騒ぐんじゃないわよ!」
職員室のドアが開いて、白衣の女教師が現れたのだ。
「すみません! いま撤収しますんで……えっ?」
慌てて頭を下げたオレは、女教師の姿を見て目が点になった。
胸元の大きく開いたブラウスにスリットの入ったタイト。豊満なボディを無理やり白衣に包み込んだその姿は、AVに出てくる女教師そのまんまだ。いや、それよりも何よりも……
「白神先輩、なにやってんですか!?」




