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その後のメガミたち 2

「ハハハ、じゃあお昼にしましょうか」


 それからオレたちは日当りのいい芝生にビニールシートを敷いて、会長の持ってきてくれた弁当を食べた。


「あ、おいしいです。このサンドイッチ」


「ホントだ」


「ホントだって、会長が作ったんじゃないんですか?」


「そうだけど、味見してお腹いっぱいになっちゃったら一緒に食べられないし」


 あー、味見しないってのは飯マズの典型パターンだよね。


 でもこうして学園のアイドルと二人っきりでランチなんて、数か月前なら考えられなかったことだ。


 感動に胸を震わせていると、会長が不満そうにこちらをみつめていた。


「ええと会長、オレ何か気に障ること言いました?」


 会長はうなずく。


「姫雪君、あのね、いつまで私のことを会長って呼ぶつもりです?」


「あ、そうですよね。もう理事長になったんですよね」


「ちがいます!」


「じゃあ、主将? それとも真紅様とか?」


「真紅」


「えっ?」


「し・ん・く」


「で、でも」


「透ちゃんのことは透って呼ぶでしょ。私だって呼び捨てにして欲しい」


 なぜそこで透がでてくるのかわからないけれど、会長は有無を言わせぬ口調でそう言った。そのくせ言い終わるとうつむいてしまい、いっこうに顔を上げようとしない。


 覗き込むと、まるで雪国の子供のように頬が真っ赤になっていた。


 なんだか、おかしくなった。


「なに笑ってるのよ」


「いや、思い出したんです。前に二人で篭り鼠の穴に落ちたことがありましたよね」


「え、ええ、そんなこともあったわね。あれも今になっては、いい思い出だけど……」


「あのとき思ったんです。会長も、普通の女の子なんだなって」


「普通の女の子? そんな、私は青嵐の鬼神で、それ以前に二郎真君っていう神様なのよ」


「でも、女の子です」


「そう……かな?」


「あのときオレが言ったこと覚えてます? 頑張るのやめようって」


「ええ」


「だからもう頑張るのやめます。白い蛇なんか探さなくったって、会長はきっと大丈夫です。もしオレの純潔になにかあっても、鬼神に戻ったりしないと思います。まぁ、そもそもオレみたいにモテない奴の純潔に価値があるとは思わないですけどね」


「そんなことないわよ。姫雪君はすごく……」


「あ、オレのことは九郎でいいですよ」


「えっ?」


「その代わりオレも、『真紅さん』で。さすがに先輩ですからさんづけはマストです」


 すると、会長改め真紅さんはにっこり微笑んだ。


「うん、まあ、まずはそのくらいからよね」


 その笑顔は、いつみてもこの世のものとは思えないくらい美しい。


「じゃあ、真紅さん。今日はもうこのままピクニックにしちゃいましょう。のんびりピクニックデート。せっかくこんなに天気がいいんだから」


「ピクニック……デート……」


 真紅さんの声が震えた。


「あ、すいません、オレ調子に乗っちゃいました? 図々しかったですよね、オレごときが真紅さんとデートなんて」


「ピンチよ。すごく危険。デンジャラスな危機的状況だわ」


「なんなんです? 新手の妖怪ですか?」


「姫雪君……じゃなくて、九郎の純潔がピンチ……もう我慢できない!」


 そう言うと、学園一の美少女はオレに覆いかぶさってきた。


「ちょっと、真紅さん、なにするんですか!」


「何って……あんまりよくわからないけど……とりあえずはキスから?」


「キス!? 待って、待ってください」


 真紅さんの整った顔が近づいてくる。


 まさか、本気でキスするつもりか?


 あわてて体を起こそうとしたけど、ものすごい力で押さえつけられてまったく動けなかった。そりゃそうだ。見た目はきゃしゃな女子高生だけど、その中身は二郎真君。戦の神様なんだ。


「ちょ、ちょっと、マジすか!?」


 もう逃げようがない。オレは観念して目をつぶった。


 そもそも、よく考えたらオレに抵抗する理由はないんだ。青嵐学園理事長で、生徒会長兼剣道部主将を務め、しかも入学から三年連続ミス青嵐に選ばれるという黒髪ロングの美少女、次郎丸真紅様がファーストキスの相手なんてこれ以上のことはない。


「キス、するね」


 ほどなくして、唇に冷たい感触があった。


 キスって、こんなにひんやりするんだ。


 しかも、なんだかもぞもぞ動く。キスってただ唇をくっつけるわけじゃないんだ。でも、なんか動きが変じゃね?


 そう思って目を開けると、オレの唇の上に乗っていたのは……


「へ、へびっ!」


 白い蛇が、オレの唇の上を這いずり回っていた。


「げっ、げげげげぇっー!」


「きゃーっ!!」


 元鬼神の平手が、オレの唇から白蛇を叩き落す。巻き添えを食らってオレの身体は数メートル吹っ飛び茂みの中に突っ込んだ。


「九郎! 九郎! しっかりして!」


 頭上で、真紅さんの声が響く。


 しかし、答えることはできなかった。オレの意識はしだいに遠のいて、漆黒の闇の中に引きずり込まれてしまった。


 薄れゆく意識の中で思った。


 ……やっぱりこの学園はハーレムじゃない、お化け屋敷だ……

 


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