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その後のメガミたち 3

 *     *     *


「おまえってちゃんと写真に写るんだな」


 オレは、買ったばかりのスマホを覗き込んでつぶやいた。


 画面の中では、透がベッドに寝転んで漫画を読んでいる。ちょっとみ小学生男子にしか見えないこいつは、実は緑水寮に住む座敷わらし、つまり魑魅魍魎の類だ。


「やだな、九郎ちゃん、勝手に撮らないでよ。そーゆーの、盗撮っていうんだからね」


 いっちょまえに口を尖らせながらスマホを奪い取ろうとする。


 まだ四月だっていうのに、タンクトップにショートパンツという露出過多な服装。ゆるゆるの腋から胸の突起がチラチラしているが、強い精神力で見ない……フリをした。


「あ、でも顔認証はされないんだ」


「え~、ホントに?」


 高性能スマホは、妖怪の顔は顔だと認識しないらしい。妙に納得していると、透のショートパンツの股間部分に四角いマークがついた。


「ん? なんか、おまえの股間のトコ、顔認証されるぞ」


「ちょっと、ドコ撮ってるのさ。九郎ちゃんのエッチィ」


「エッチじゃねぇ。真紅さんとか白神先輩ならともかく、おまえ相手にそんな気分になるかっつうの」


「ふーん、真紅さんねぇ」


「なんだよ」


「まぁ、いいけど。でも、九郎ちゃんの弱点はボクが一番知ってるんだからね」


 そう言うと、透は床にペタンと女の子座りをして甘く握った両コブシを頭に乗せた。細い腕から真白い腋の下があらわになり、鎖骨の窪みにうっすらと汗が光る。


「透はご主人様のペットだニャン、ご主人様のしたいように弄んで欲しいニャン」


 こ、これは……さすがに来る。


 膨らんだ股間を悟られないようにそっと足を組んだ。つもりだったが、それを目ざとくみつけた透はニンマリと微笑んだ。


「ほら、もうエッチィ気分になった。瞬殺じゃん」


「瞬殺じゃねえし!」


 得意げな透を蹴り倒すと、柔らかな白い腹をぐりぐりと踏みつけた。


「ちょっと、痛いよ。九郎ちゃん、痛いってば」


「うるせぇ、だいたいおまえは猫じゃなくて犬だろ」


「怒るトコそこ!? ヤダ、苦しいよ。九郎ちゃん、許してぇ」


 許してという透の声は、言葉とは裏腹に妙に艶めかしい。足の裏でうごめく白い腹が次第に熱を帯び、汗で湿ってきた。


「許して? そんなこと言って、ホントはオレに踏まれて喜んでるんじゃないのか?」


「ヤダ、そんなのヘンタイでしょ。ボク、ヘンタイじゃないよ」


「ウソつけ、そんな蕩けた顔しやがって」


 なんだか、オレまで妙な気分になってくる。ヤバい。足が止まらない。このままじゃヤバいことになるかもしれない。とうとう一線を超えてしまうのか?


「九郎ちゃん、今日なんか顔が怖いよ……本気、なの?」


 透の問いかけには答えず、無言のまま足を腹から太腿へと滑らせる。


「あん、そこ……ダメ……ダメだってば、九郎ちゃんは清らかじゃなきゃ……」


 宝玉と契約を交わしたオレは、みんなが一緒に過ごせる世界を望んだ。そのおかげで、真紅会長は鬼神から人間の姿に戻ることができた。


 そして契約の対価はオレの純潔。


 恥ずかしながらオレは生まれて今まで一度も女子とごにょごにょしたことのない正真正銘のDTだ。高校生的には自慢できることじゃないかもしれんが、オレのDTは世界を救うDTなんだ。


(だからって、こんな中途ハンパでやめられるかよ。まあいいさ、どうせ肝心なトコで会長か先輩の邪魔が入るんだろうし)


 そんなオレの心を見透かしたかのように、


「今日は真紅ちゃんも一子ちゃんも来ないよ」


 透は潤んだ目で言った。


「なんで?」


「真紅ちゃんは今日はシロ―の餌を買いにペットショップに行くんだって」


 シロ―というのはこの間捕まえた白蛇のことだ。残念ながらまだ白い烏の方を捕まえられなくて「アトランダム大百科」に哮天犬の場所は聞けていない。


 でも会長はのんびりやることに決めたらしく、白い蛇をペットとして寮で飼うことにした。最近はいつも肩に乗せて歩くほどの気に入りようだ。


「一子ちゃんは……よくわかんない。最近また保健室に戻ってるんだよね」


 白神一子先輩は保健室の人体模型の付喪神だ。想い人だったオレの親父が死んだことを知って、親父との思い出深い保健室を出てしばらく寮に住んでいた。


 保健室に戻ったってことは、親父のことを吹っ切れたのかな? ならいいんだけど……いや、ちょっと待てよ。


「じゃあ、今日はオレと透の二人だけなのか?」


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