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後日譚:社会人はツラいよ 4

「殺せ! いっそ殺してくれ!」


 オレの人格はもう崩壊寸前——とその時、救世主は意外なところから現れた。


 突然、部屋の中からガタガタという音。


 振り返ると、部屋のカーテンがゆらゆらと揺れている。


「えっ? 何!? 外に誰かいるの? ここ、二階だよね!?」


 さっきまで余裕綽々でオレをからかっていた瞳子が顔を青くして、不自然に揺れるカーテンをみつめている。


「あー大丈夫だよ」


 苦笑いを浮かべながら、窓に近寄ってカーテンを開けた。


 そこには、まるでロッククライミングでもしてるかのようにサッシにしがみつく女性の姿があった。


 ただし、女性の服装は普通のロッククライミングとはまったく違っている。


 胸元が大きく開いたブラウスからは豊満な乳房がいまにもこぼれそう。黒いタイトスカートから伸びる太腿は艶めかしい網タイツに包まれていた。


 まるでOL物のAVにでてきそうなお色気ムンムンのお姉さんだ。


「よぉ、姫雪チャン、やってる!?」


 そう言いながら、彼女はバンバンと窓ガラスを叩いた。ガラスを叩き割らんばかりの勢いに、オレはあわてて窓を開ける。


「はいはい、今開けますから、そんなに大声出さないでくださいよ」


 彼女の名前は白神一子、オレの会社の先輩だ。


 入社当時から何かと面倒を見てくれた姉御ポジションなんだけれど、唯一の欠点はその酒癖の悪さだった。以前から、酔っぱらうと壁を上って男子禁制の男子寮に忍び込んでくるんだ。


「白神先輩、いい加減にしてください! このあいだも次郎丸さんにみつかって怒られてたじゃないですか!」


 オレがたしなめても、白神先輩は聞く耳持たなかった。


「だって、姫雪チャンってば最近つきあい悪いじゃん。今日もさっさと帰っちゃうし。だから今日は、この部屋で宴会しちゃいまーす!」


「そんな無茶な」


 プーンとアルコールの臭いがする。どうやら本気らしい。酔っぱらった白神先輩に常識は通用しない。


 もちろん、オレだって美人の先輩とお酒を飲むのは嫌いじゃない。特に、酔っぱらった先輩はいろいろなところが緩くなるのでパンチラやらブラチラやら見放題になる。見つかったら寮母の真紅様に怒られるけど、それを差し引いてもお釣りがくるくらいだった。


 でも、今日はマズい。


 もし先輩が真紅様に見つかったら、芋づる式に瞳子のことまでバレてしまう。


「すんません、今日はオレの高校の同級生が遊びに来てるんです。久しぶりに会ったんで、今日は二人で飲みたいんですよ」


「ふーん、その幼馴染ってのは女子?」


「いやだなぁ、そんなわけないじゃないですか。そこにいる男子ですよ」


 慌てて、背後を指さした。そこには、スーツ姿の瞳子がいるはずだ。


「男? あれが男?」


「もちろんです、ちょっと小柄なんで女の子と間違われてるんですけどね」


「ふーん、男子のクセになんだって格好をしてんの?」


 あんな格好?


 不思議に思って振り返り、思わずウーロン茶を噴出した。


 そこには、キャミソールにミニスカート姿の瞳子が。


「お、おまえ何してるんだ!」


 なぜ、自分から女だとバラすようなことをする?


 瞳子は、慌てるオレの腕にしがみついてきた。


「だって、あの人スゴイフェロモンいっぱいな格好してるし、ボクだって負けてられないもん」


 いったい何と戦ってるんだ、こいつは?



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