後日譚:社会人はツラいよ 5
いったい何と戦ってるんだ、こいつは?
すると今度は白神先輩が反対の腕を取って尋ねてきた。
「ふうん、この子が男の子? っていうか、確かこういうの男の娘っていうのよね。この子と二人で飲みたいってことは、姫雪チャンももしかしてそういう趣味?」
なんだか、ややこしいことになってきたぞ。
美女と美少女に挟まれるなんて、本来なら鼻血がでそうなシチュエーションだけど、全然そんな気分になれなかった。
「そういう趣味って、そんなわけないでしょ! オレが好きなのは女の子、女が大好きなんです!」
オレの必死の弁明に白神先輩は大爆笑だ。
「ヒャハハハ、お腹痛い。何、女好き宣言してるわけ? 大丈夫、姫雪チャンが女好きだってのは、いつもあたしのパンチラ狙ってる肉食獣みたいな目つきでよぉくわかってるから」
先輩の言葉に、瞳子が悲鳴のような声を上げて腕を締め上げた。
「九郎ちゃん、ホントなの!?」
「ホントじゃねぇよ!」
「またまた、パンチラ大好きなくせに」
「先輩、テキトーなこと言わないでください! 瞳子も、これ見よがしにスカートチラチラするんじゃねえ!」
瞳子は、ただでさえ短いミニスカートをつまんで無理やりパンチラを作り出そうとしはじめた。まったく、目のやり場に困るっつうの。
「やっぱり彼女、どう見ても女の子じゃん。これが男子って……どうせ次郎丸をごまかすためにむちゃくちゃな嘘ついてるんでしょ」
「あ、やっぱりバレますか?」
「当たり前よ。これ気づかないのって次郎丸くらいなもんでしょ」
そう言うと白神先輩は肩をすくめた。
そういえば、先輩と真紅様は同じ高校の同級生で、何やら因縁があって犬猿の仲だと聞いたことがある。
それなら、瞳子のことは見逃してくれるかもしれない。てゆうか、そもそも先輩がここにいること自体規則違反なわけだし。
オレは深々と頭を下げた。
「すいません。コイツ、オレの高校の同級生らしいんです。事情があって住むところがなくて、しばらく面倒見てやりたいんですよ。このことは会社や先輩には内緒にしてもらえませんか?」
「うーん、どうしようかな。でもさ、姫雪チャンは気が付いている? 彼女、女の子は女の子だけど、普通の女の子じゃないわよね」
すると突然、先輩はわけのわからないことを言い始めた。
「瞳子が普通の女の子じゃない?」
それを聞いた瞳子は慌てて反論する。
「そんなことないよ。そりゃたしかにボクは普通よりちょっと胸が淋しいかもしれないけど、全然普通の女の子だよ。覚えてないの? 高校のときルームメイトだったでしょ」
「それは、その……」
目の前にいる、おかっぱ頭の小柄な少女。
三日前に「高校の同級生だった瞳子だよ」といって現れた彼女について、実はオレには何の記憶もない。
ただ一つだけ、思い出したことがあった。
「おまえ、誰だ?」
「何言ってるのさ。瞳子、座志木瞳子だってば」
「オレの高校の寮は……男子寮だった」




