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不可思議セブンティセブン2

 それからオレと会長は、青嵐学園七不思議の全てを体験するため、透の残したノートにしたがって行動を開始した。


 まず最初に二人が訪れたのは、旧校舎三階にある女子トイレ。


 ここは、学園七不思議のその1「トイレに潜む赤い着物の少女」の舞台だ。


 トイレの入り口で、オレは透ノートを開いた。


「ここに、学園七不思議の一番目が出現するそうです。ええと――


 青嵐学園七不思議その1「トイレに潜む赤い着物の少女」


 深夜、旧校舎三階の女子トイレを訪れると、奥から三番目の個室のドアが閉まっているという。その扉を三回ノックして「花子さん、遊びましょ」と三回呼びかけると、中から赤い着物を着た女の子が現れ、あなたを個室に引き込んでしまうぞ。その中は異次元につながっていて、入った者は二度と外に出ることができないから気をつけろ。


 ――いわゆるトイレの花子さんってヤツですね」


「これって、どこまで体験すればクリアってことになるのかしら? 異次元にいかなきゃダメなんだったら、相当ハードル高いことになるわね」


「異次元か……」


 二人して顔を見合わせた。


「ここはひとつ会長お願いします。さすがに男のオレが女子トイレに入るわけに行かないんで」


「そんなの、今回だけは特別に生徒会長の私が許可します。それに私は基本応援役でしょ。ここで応援しててあげるから、ドーンと行ってきなさい」


 しかたなくオレは、生涯初、女子トイレへの突撃を行った。


 そしてそこで、あることに気づいて愕然とした。


「会長! 大変です!」


「何? どうしたの?」


「小便器がありません!」


 背後から会長の怒声が飛ぶ。


「あたりまえでしょ、このヘンタイ! あんまりキョロキョロするんじゃないわよ!」


 罵られながらも三番目の個室の前に立った。透ノートに書かれている通り、その扉だけが閉まっている。続きにはこう書かれていた。


『扉を三回ノックして、三回花子さん遊びましょと呼びかけなさい』


 その通りにすると、個室の中から微かな声が、


「何して遊ぶぅ?」


 慌てて頁をめくった。


『何して遊ぶ、と聞かれたら首絞めゴッコと答えましょう。すると手が出て首を絞められます』


「マジかよ、カンベンしてくれよ。だいたい首絞めゴッコってなんだよ、それ遊びじゃねえだろ。遊びっていうのは、もっと、こう……」


 焦りながらも、必死で子供の頃にやった遊びの数々を思い出した。首絞めゴッコなんてわけのわからないモノより楽しい遊びは他にもいっぱいあったはずだ。


 中でも、オレの一番のお気に入りだったのは……


「そうだ、お医者さんゴッコだ。お医者さんゴッコしよう! オレがお医者さんでキミが患者さん、楽しいぞぉ!」


 …………

 ……

 しばしの沈黙。


 その後、突然、個室のドアが開いて、赤い服の少女が飛び出してきた。


「えーん! 変態だぁ! 女子トイレでお医者さんゴッコしようって変態がいるよぉ!」


 そのまま少女は女子トイレから飛び出すと、あっというまに廊下を突っ切っていなくなった。


 会長が不審気な目で九郎をみつめる。


「花子さん、泣いてたじゃない。姫雪君、いったい何をしたの?」


「何って、お医者さんゴッコに誘ったんですけどね……あ、でも、これでもう封印帳が朱色になってますよ。なんだ、こんなカンジでいいのか、良かった良かった」


 封印帳を眺めながらほくそえむオレに、会長の鉄拳が飛んだ。


「お医者さんゴッコって……幽霊相手に何やってるのよ、このド変態が!」


 オレの意識は、しばらく異次元を漂うことになった。

 


 それから二人は、旧校舎の西階段を降りて二階までやってきた。


「次は、この階段です――


 青嵐学園七不思議その2、「オバケ怪談」


 旧校舎の西階段、一階と二階の間は下る時は十二段なのに、上る時は十三段になるという。昔、階段から転倒して死んだ生徒の亡霊が、生きている生徒を妬んで幻を見せるのだそうだ。


 ――これも定番ですね。これなら簡単に済みそうだ」


 オレと会長は、階段の上下から同時に出発して段数を数えた。


「1、2、3、4……10、11、12段です」


「……10、11、12、13。こっちは13段よ」


 たしかに同じはずの階段の数が違う。でも、それだけだった。


「続きはどうなるの?」会長に促がされて、オレはノートを調べた。「ありません、これだけです」


「封印帳は?」封印帳の二ページ目は朱色に変わっている。「チェック完了してます」


 沈黙があたりを支配した。


 まあ、簡単に済むんならそれに越したことはない。それにこの七不思議なら生徒たちに被害がでることもないようでひと安心だ。


 そう自分を納得させて、次に進むことにした。


「じゃあ次に行きましょうか、会長」


 みると会長の肩が、プルプルと震えている。


「……会長?」


「いい加減にしなさいよ。これだけエンターテインメントが発達した現代に、階段の数が一個違うだけで誰かを脅かせると思ってるの? 私はそういう中途半端が大っ嫌いなの」


 泣く子も黙る生徒会長の罵声が、誰もいない階段に響き渡った。


「もっとやる気をみせなさい! ほんとに生きてる生徒が妬ましいんなら、『下りは12段、上りは1200段』くらいできるでしょ! じゃなきゃ、『下りは12段、上りはエスカレーター逆走』とか!」


 すると、どこからかうめくような亡霊の声が聞こえてくる。


「すみません……今度から、心を入れ替えて真剣に生徒を呪います」


 あーあ、やっちゃったよ。


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