カノジョ人形4
* * *
目が覚めると、もう夕方近かった。
「やべぇ、遅刻……って、今日は学校休みか……はっ、デジャブ? いや、デジャブじゃない!」
起き上がると右顎に痛みが走った。その痛みとともに、オレは昨夜の出来事を思い出す。
白神先輩の正体が付喪神、つまりは魑魅魍魎だったこと。学園七不思議を制覇して封印帳を埋めるように強要されたこと。それまで大切なものを預かると言われ、殴られて意識を失ったこと。
室内を見回したけど、白神先輩イコール人体模型の付喪神はとうにいなくなっていた。
「オレの大事なものっていったい何だ? 何を盗られたんだ」
大慌てで室内を捜索する。
封印帳は残されていた。八曜鏡も、透のノートもあった。
ってことは携帯? 財布? ひょっとして貯金通帳? 机にある鍵付きの引き出しを開けてみた。結構な額の入っている通帳と実印はそのまま残っている。
「なあ、オレの大事なものって何だと思う?」
透はまだ寝込んでいるのか返事はない。
(なんだろう。一番の大切なもの。AKBのサイン? 中学卒業のときの寄せ書き? それとも入学前に撮った家族写真か? いや、落ち着け、いい歳してなんで家族写真が宝物なんだ)
部屋の中をくまなく探すけど、なくなった物はみつからない。はたと思いついた。
(もしかしてこれは逆転の発想? なくなったのは物じゃなくて、例えば……)
「データかっ?」
デスクの上のノートパソコンに目をやった。そのハードディスクの中には、透がいない隙をついてコツコツと進めているエロゲー「ボクっ子調教日記」が収まっている。
「アレを盗られたら、……というか、他人の目に触れたら生きていけない」
そぉっと、透の眠っているベッドの様子をうかがった。
起きている様子はない。
オレはノートパソコン開いて電源ボタンを押した。ピコンという起動音がして、おもわず身震いが走る。幸い、透は気付いていないようだ。画面を覗き込んだ。
Cドライブ内の『ボクっ子調教日記』システムファイル、セーブファイルともに異常なし。
ホッとして椅子に座り込んだ。
「ってことは、本っ当にもうわかんねえよ! なあ、透、教えてくれよ! オレいったい何を盗られたんだ?」
返事がない。よっほど調子が悪いのか? そういえば熱があったんだっけ。
「おい、透、おまえ大丈夫か?」
もう一度ベッドを覗き込んで、オレの身体は凍りついた。
「もしかして、なくなったものって……これか」
さっきまでベッドの中で寝ていたはずの座志木透。
その姿が影も形もなくなっていたんだ。
章の割り振りの関係で、今日はちょっと短めでした。ゴメンナサイ。




