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コドクの二人1

(3)


 気がつくと、オレは暗闇の中で倒れていた。


 辺りを照らしているのは微かな星明りだけだ。ふと横を見ると、目の前に抜き身の日本刀が突き刺さっている。


「うわぁっ!」


 驚いて飛び起きた。アチコチに痛みはあるけど、大きな怪我はないらしい。


(いったい何が起こったんだ?)

 わけがわからなくて頭を振った。ふと見上げると、頭上に丸く空が見える。次第に記憶が戻ってきた。


(そうだ、オレは生徒会長と一緒に突然地面にできた穴に落ちたんだ。でも、なんで急に穴が開いたんだろう。やっぱ、会長が三階から飛び降りた衝撃が原因かな)


 とりあえず立ち上がろうと地面に手をついた。その右の手に柔らかい感触が――


(ん……も、もしかして)


 今までに触った事のない感触だけど、なんとなく心当たりがある。


 なんだか、ドキドキしてきた。 


 暗闇の中を凝視した。そこにあったのは、青嵐学園理事長の孫にして生徒会長兼剣道部部長、さらには三年連続ミス青嵐学園に選ばれた完全無欠の美少女、次郎丸真紅の左胸だ。


「な、な、な、」


 白神先輩ほど大きくはない、かといって透ほど小さくもない、驚くほどジャストサイズな膨らみ。胸だけじゃない。星明りに照らし出された漆黒で艶めく髪、透き通るように白い柔肌、女神のように整った顔立ち、さらに落下の衝撃でスカートが破れ艶かしい太腿が覗いている。


 その完璧なまでの美しさに、オレの目はしばし釘付けになっていた。


 しかも、どうやらその美人は落下のショックで気を失っているらしい。


 慌てて会長の胸から手を離そうとした。


(な、なぜだ? 手が言う事を聞かない?)


 手を離そうとすると、指がどういうわけか反対に握る動作をしてしまう。さらに悪戦苦闘を続けるうちに、オレの手はいつのまにか会長のハリのある乳房を揉みしだいていた。


(ち、違うぞ。オレは決してエロい気持ちでこうしてるんじゃない。コレはきっと、漫画とかでよくある、主人公が初めて銃を撃った後に引き金から手が離れなくなるってヤツだ。つまり完全な不可抗力なんだ)


「あ、ああん」


 会長の口から吐息が漏れ、うっすらと瞼が開いた。


「……姫雪、くん……あなた、何してるの?」


 反射的に手が離れ、オレは一瞬で穴の隅まで飛び下がった。


「いえ、何もしてません、誓って何も! それより会長さん身体は大丈夫ですか!?」


 全力でごかました。幸い、どうやらセーフらしい。生徒会長はその美乳をさんざん弄ばれていたことに気付く様子はなく、頭を一振り二振りして立ち上がった。


「問題ありません」


 それから、忌々しそうに頭上を眺めてつぶやいた。


「この穴は篭り鼠の仕業ね。やっかいなことになったわ」


「こもり……ねずみ? 生徒会長が飛び降りてできた穴じゃないんですか?」


「失礼なこと言わないでよ。いくら三階から飛んだからって、こんな大きな穴が開くほどデブじゃありません。篭り鼠というのはね、地面に落とし穴を掘って人間を閉じ込めてしまうモグラの妖怪、学園七不思議その53にあたる低級霊なの」


「その53って、七不思議が一体いくつまであるんですか?」


「……全部で77よ」


「多っ! ってゆうか、むしろラッキーナンバーっぽくなってるじゃないですか」


「そんなこと私に言われても知らないわよ。とにかく、ここをでるまで一時休戦しましょう。篭り鼠を面白がらせるのもシャクだし」


 そう言うと、生徒会長は地面に刺さった御神刀を抜いて鞘に納めた。どうやら殺人鬼に追われる命の危険は去ったらしい。けど、状況はまったく飲み込めなかった。


「ええと、どういうことなんです?」


 恐る恐る尋ねると、会長はやれやれと肩をすくめた。


「篭り鼠はね、いがみあう人間たちを一つの穴に閉じ込めて、争い合うのを穴の外から眺めて楽しむっていう低俗な趣味の持ち主なの。きっと、私たちが敵同士だとでも勘違いしたんでしょう」


「なるほど。じゃあ、そのモグラの妖怪はオレと会長がいがみあってると勘違いして、オレたちをこの穴に閉じ込めたってわけですか――って、ちょっと待ってください。勘違いって、会長さっきまでオレのことをメチャクチャ追いかけてましたよね。別に勘違いでもなんでもないじゃないですか」


「えっ? ああ、ソレ?」


 会長の手が刀の柄にかかった。素早く腰を沈めると、そのまま一気に踏み込むんで袈裟掛けに切り付ける。


「えっ!?」


 きらめく刃がオレの脳天から股下へとイッキに振り下ろされた。


(死んだ? オレ、死んだ?)


 オレの身体を金属の刀が一直線に通り抜けた――はずだった。


「あ、アレ?」


 けれど血の一滴も流れていない。


「なんで? なんで死んでないんだ?」


「言ったでしょ、クダリ刀は怪異を切る刀だって。だから絶対に人を傷付けることはできないの」


 次郎丸会長は、得意気に白刃を鞘に納めた。


 怪異を切る刀――ありえないような話だけど、これもこの目ではっきりと見てしまった。今日は一体いくつの「ありえない」を経験するんだろう。アレ? でも、それじゃあ?


「じゃあ、いったい何でオレを切ったんです?」


 切れない刀であれだけ必死に襲い掛かってきたのはなんだったのか? そう尋ねると、会長はフンと鼻で笑った。


「姫雪君は全然気がついてなかったみたいだけど、あなたには魅了の呪いが掛かっていたの。たぶん封印帳を盗んだ犯人に掛けられたんじゃないかしら。だから私が、クダリ刀でその呪いを破ってあげたってわけ」


「じゃあ、今までオレのこと追いかけていたのは……」


「もちろん、魅了の呪いを解いてあげるためよ。まさか、私が封印帳を盗まれた腹いせに姫雪君を殺そうとしていた、なんて馬鹿げた勘違いをしていたわけじゃないでしょうね」

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