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お嬢様たちの恋のバトルが過熱して、結果として色気が出てしまう  作者: 神泉 朱之介


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五話・4

 日曜日、試験当日。


 朝の九時にパートナーカードを持って教室へと集まった従育科の生徒は十一人で、その中には倉木に壬卦、そして意外なことに鳳凰寺もいた。


 肝心のパートナーは寝坊しているらしくまだ来ていなかったが本当に意外だ。


 こいつのドジっぷりは有名なのに、パートナーになってくれる人がいるなんて。


 パートナー参加している知り合いの上育科生は、朱音以外にはナルシズム全開の大吉しかいない。


 ほぼ白一色で固めたいつもの服装かと思いきや、今日はスパンコール入りだ。


 胸元のバラも珍しく黄色。


 まあこいつの存在自体が珍種だから、今更驚きはしないけど。


 集まった約二十人を前にして教壇に立つ深閑は普段と変わらぬ隙のないメイド服姿で、隣には理事長が寝惚け眼で突っ立っていた。


 ……いや訂正。


 寝惚け眼というか、半分寝てる。


 あのアニメ柄の服、たぶんパジャマだし。


 どうやら無理矢理連れてこられたっぽいな。


 うつらうつらとしている理事長兼事務員を氷柱のような鋭い目で一睨みした深閑は、効果無しという結果に表情は変えず雰囲気だけを重苦しいものに変えて、視線をこっちに向けてきた。


 頼むから教え子に八つ当たり気味な冷凍視線を浴びせるのは止めて欲しい。


 しばしの間生徒を威圧して、深閑はそっと掛けていた眼鏡を直し、


「まずは上育科の皆さん。

 従育科試験の為に大事な休日をご提供頂き、ありがとうございます。

 理事長に代わりまして私から謝辞を述べさせて頂きます。

 ……理事長に代わりまして」


 繰り返して、むにゃむにゃと口を動かしながらぼけーっとしている理事長を一睨みする。


 そこのアニメ柄理事長、涎は拭け。


 いくらなんでもあんまりすぎるから。


 試験だってのに相変わらずな二人の先生に、春輝はつい気が緩みそうになる、が、


「それでは、これより六月の従育科試験の内容を発表します」


 ……深閑は一言で、場の空気を一気に張り詰めさせた。


 いよいよだ、と春輝は握った拳に力を入れる。


 これから何を言われるのかは分からない。


 けど、精一杯やれるだけやろうと、堅く心に決め。


「今回の試験は『主人に尽くすこと』、ただそれだけです。

 午後五時までの間、パートナーの命令を執行して下さい」


 あっさりと、音を立てて決意が崩れ落ちた。


 待て。


 今、なんて言った?


『尽くす』?


『命令を執行』?


「終了後、パートナーの上育科生から簡単な感想と五段階評価を承ります。

 五時に鐘を鳴らします。

 従育科生はくれぐれも粗相の無いように。

 では、解散」


 あまりにアレな内容に春輝が呆然としている間に、深閑は都の首根っこを引きずるようにして去ってしまった。


 解散する前に撤回して欲しいという悲痛な願いは、もう聞いてくれる相手がいない。


 俄にざわつく教室の中、顔から血の気が引いていく感覚に春輝は目眩を起こしそうになった。


 いっそ貧血で倒れた方がいいよ、と頭の中で誰かが囁いているよーな気もする。


 その理由は……考えるまでも無い。


 ギギギ……、と錆びついたブリキの玩具みたいに首を回して、横に立っている朱音の顔を見る。


 見たくないけど、見ないままにしておくのも怖いので、恐る恐る覗き込む。


「……予想以上に面白いことになったな」


 くすりと微笑を溢す悪魔がいた。


「さーて、何をして貰おうかな?

 とりあえず無駄に校庭十周とかさせてみようかな?

 それとも手当たり次第に構内でナンパさせるとか?

 ああ、深閑先生にセクハラっていうのもポイント高そうねー?」


 ウキウキと、未だかつて無いくらい楽しげな表情の朱音が、今にもスキップを始めそうな雰囲気で歩いている。


 その口から呟かれる言葉に、春輝は背筋に嫌な汗を浮かべていた。


 これはどんな罰ゲームなんだろう。


 選りに選って、朱音の命令を聞く?


 それも四半日近く?


 駄目だ、試験終了の前に廃人確定だ。


 真っ白になって燃え尽きる姿が想像されて、しかもちっとも笑えない。


 何でこんなことにと早くも後悔しまくりだ。


 このままだと殺される。


 精神的にボロクズのようにされる。


 そうなる前に先手を打って牽制しようと、春輝は浮かれ気味に横を歩く朱音へと声を掛けた。


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