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【コミカライズ】全自動攻撃【オート】スキルで俺だけ超速レベルアップ~女神が導く怠惰な転生者のサクッと異世界攻略~  作者: 桜井正宗
第十五章 サクリファイス

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第594話 力が乱れた不羈魔法使い

 暗闇のせいでスイカの顔や表情、姿をまるで確認できないが――声は間違いない。


「よ、よう……スイカ。久しぶりだな」

「その声、サトルさんですね。みなさんの気配も感じます」


「そうなんだ。君に用があって来た」


「あたしに、ですか?」

「そうだ。世界の破滅を救う為に協力してほしい」


「なるほど……」


 と、スイカは短く返事。少し間があって心配になったが、彼女は続けて「ついてきて」と言った。……ついて来いって、どうやって?


「あ、あのぅ、スイカさん。なにも見えなくてどこへ行けばいいのか――あぅ」


 適当に歩いたのか、俺にぶつかるリース。闇雲に動くと危ないぞ。

 しかし、こう何も見えないと危険すぎるな。モンスターに襲われたら面倒だぞ。と、いっても俺の場合はオートスキルで迎撃できるが。



「そうですね。さすがに歩行が難しいでしょう。あたしの家に案内しますので、歌声のする方へ来てください」



 その手があったか!

 しかも、家が近いのか。となると……ここは“聖地マーリン内”ということか。


 スイカの歌声を頼りに、俺たちは前へ進む。


 それにしても、このハイテンションな歌はなんだ?

 どこかで聞いたことのあるような歌だ。それに、この言語もどこかで……?



「ね、ねえ……サトル」

「どうした、メサイア」


「スイカの歌って別の言語よね」

「そうみたいだな。……たぶん、ドイツ語かなぁ」

「どいつ語?」


 って、そりゃこの世界にドイツ語が分かる奴なんていないよな。俺も詳しいわけじゃないが……。いや、だが、スイカの歌は明らかにドイツ語だ。わずかだけど聞き取れる。

 どうして彼女がドイツ語の歌を?


 聞いてみようとする前に、家にたどり着いたらしい。


 扉の開く音がして――ようやく明かりを前にした。



「おぉ、光が! 家の中は明かりが許されているのですね」

「ええ、フォルトゥナ様。聖地マーリンは闇に閉ざされていますが、家の中だけは別です」


 ようやくスイカの姿が見えた。

 以前と変わらない魔法使いの姿。ほとんど全身が黄緑という不思議なビジュアルをしているが、この薄暗い中では黒いローブを羽織る魔法使いにしか見えない。

 でも、正確には『賢者』らしい。


 スイカは、奥の部屋に案内してくれた。

 椅子はなくて地べたに座るようだ。


 俺たちは腰掛け、改めてスイカに話した。



「実は、ドワーフの里キララウスで厄介なことになってな」


 説明をはじめようとすると、スイカは左手を向けて止めてきた。


「読み取ります」


 なにか“力”を感じて、それが魔力であると理解した。もしかして、不羈魔法使いの力か……?


 そして、スイカは全てを理解したのか左手を下ろした。



「なにか分かったか?」

「はい。生贄の儀式(サクリファイス)を阻止したいのですね」



 俺含めみんな「おぉ」と口をそろえて驚いた。……さすがだな。

 あの一瞬で理解してしまうとは。


 確か――『ソウルフォース』だっけ。



「さすがスイカさんです……!」


 ぱちぱちと拍手をするリース。まんざらでもないようで、スイカは珍しく照れていた。以前に比べると感情の発露も増えてきたな。うん、そうだ。あのベルよりも表情が豊かになった。

 というか、ベルがクールすぎるんだけどな。



「君の力、ソウルフォースで『物』に魂を宿して欲しい。そして、生贄に捧げる」



 世界救済のプランを伝えると、スイカは静かに首を横に振る。おい、マジか。その答えは想定外だったぞ。



「どうしてよ。スイカ、あなたならできるでしょ?」



 痺れを切らしたかのようにメサイアが言う。しかし、それでもスイカの返答は“ノー”だった。なんてこった。



「な、なぜ?」



 今度はフォルも詰め寄る。それから、リースも心配そうに見つめる。すると、スイカは目を伏せ――諦めたかのように理由を話した。



「……聖地マーリンから出られないんです。それに、力も以前に比べて弱くなりました」

「なぜ? 詳しく話してくれ」


「お母さまの亡霊が聖地マーリンを闇で覆ってしまったから……」



 母親の亡霊だって?

 スイカの母親が聖地マーリンをこんな風にしてしまった、ということなのか。



「続けてくれ」

「あれは……ポウラ撃退後の数日後でした。なぜかソウルフォースに乱れ(・・)が起きたんですそれからです。聖地マーリンがこのような闇に包まれたのは……」


「あの数日後に? なにがあった?」



 だが、スイカは「分からない」と落ち込むだけ。彼女にも分からないことがあるんだな。

 俺はリースに視線を向けるが、同じ反応だった。


 そんな中でメサイアだけは違った。



「……もしかして」

「なにか思い当たる節があるのか?」

「ええ、サトル。たぶんだけど、ソウルフォースって万物の力でしょ」

「そうだな。火、水、風、地、闇、光などあらゆる自然が源になっている」


 ――って、なんで俺詳しいんだよ。

 いや、思えばバテンカイトス……勇者ユメの相棒がソウルフォースの使い手。もしかしたら、ユメの闇スキルを会得した影響があるかもしれない。



「それって……『花の騎士』に通じない?」

「ん、花の騎士ってフリージアの――そ、そうか!」



 あの騎士たちは、それぞれの属性を持つ騎士たちだ。そんな騎士たちの一人に“異変”があった。


 つい最近会ったばかりの『グレン』だ。アイツが“女体化”してしまったせいで、均衡(バランス)が崩れてしまった――というわけか。



「え、それってつまり……ポウラのせいってことですか?」

「正解だ、フォル。ポウラの性転換スキルでグレンが女体化。そのせいで、花の騎士の力が崩れ……ソウルフォースが乱れたってところだろう」



 あの騎士たちがそんな重要な存在だったとはな。知らなかった。

 更に、聖地マーリンが闇に染まった影響もあるというわけか。

 とはいえ、まだ仮説の域は出ないのだが――大体、そんなところだろう。

 スイカも割と納得しているようだし、可能性は高い。



「……炎の騎士であるグレン様が女体化を……」

「ポウラを監獄へ護送中にくらったらしい」


「ならば、グレン様の戻さないと」



 それがもう無理そうなんだよなぁ。シベリウスの『最後の修行』とやらを強制的に始めるようだし。今更撤回なんて無理だろう。

 それに、もう時間もない。あと数時間もすれば世界は破滅する。



「いや、それよりもスイカにソウルフォースの力を使ってもらう方が早い」

「分かりました。では、まずは母を鎮めましょう。せめて、聖地の闇を払えればソウルフォースもマシになりますから」


「協力するさ。世界のため、聖地のために」



 いったい、なぜスイカの母親が亡霊化したのかも気になるしな。案内してもらおう。

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