第589話 炎の騎士を探せ!
ルクルによれば、シベリウスはこのエルフの里カムランに住んでいるらしい。
以前は、花の都ネオフリージアにあるアーカム家のお世話になっていたと思うが――ああ、そうだ。“最後の修業”とかで結局、グレンを叩き直していたようだな。
そもそも、グレンがサボりすぎて破門になったのだが……それはまた別の話。
「場所はどこですか?」
リースがシベリウスの居場所をルクルに訊ねる。彼は少し考える素振りを見せつつも、直ぐに答えた。
「キャメルフォード通りですね」
「キャメルフォード?」
小動物のように首を傾げるリースは激カワすぎた。そのままお持ち帰りしたいね。
「ああ、キャメルフォードか」
「なんだ、メサイア。知っているのか」
「まあね。ほら、カムランの滞在期間って長かったし、私あっちこっち歩き回っていたから」
そういえば、そうだったな。
メサイアには『おでん缶自販機』を設置してもらったり、奔走してもらった覚えがある。その時に、街のことも詳しくなったのだろうな。
「それなら、姉様に案内していただきましょう」
フォルがそう提案すると、メサイアは「ええ、任せなさい!」と妙に張り切っていた。いや、機嫌が良いのか。
「じゃ、ルクル。俺たちはキャメルフォードへ行ってみるよ」
「はい、お気をつけて……あ、サトルさん」
「ん?」
「お店はいつでも使ってくださいね」
邪気が一切ない、澄み切った川のような笑顔を向けられ――俺はキュンとときめく。
……だ、だ、だが男だ!!
ポウラの性転換スキルで、女の子のままだったら惚れていたかもな。
◆
【カムラン:キャメルフォード通り】
どうやらキャメルフォード通りとは、ポウラが根城にしていた『ユーモレスク宮殿』の付近だったようだ。
思えば、俺は普通にこの道を歩いていたな。
閑静な住宅街が立ち並び、小規模な林も広がっている。
このどこかにシベリウスが住んでいるようだ。
ひとまず、虱潰しにエルフの住居を回っていく。しかし、一般エルフが住んでいるだけで――シベリウスの姿はない。
「……どこに住んでいるのでしょうか」
歩き回ってヘトヘトのリースは座り込む。
その傍らでフォルも腕を組んで困惑。
メサイアはすっかりやる気を失って、俺にもたれ掛かる。……って、近いし。息が掛かっていて、くすぐったいぞ。
「ねえ、サトル。お腹空いたわ」
「そうだな。もう夜も近い。そろそろ夕飯にすっか」
改めてシベリウスを探そうとしたのだが――通りの向こうから背の高いエルフがこちらに向かってきていた。
あの筋肉質な女性は……まさか!
「久しぶりだね、サトル」
「ゼルフィナか……!」
「そうだ。俺はゼルフィナ、よく覚えていたな」
そりゃ覚えている。俺とリースでコイツを倒したからな。
つーか、まだ残党が残っていたとは。
「ねえ、誰よ?」
「良い質問だ、メサイア。この筋肉モリモリの女性エルフは敵だ」
「え……敵って」
「ほら、ポウラ事件。あの時の幹部だ」
「そういうこと……」
当時、メサイアたちはルクルのお店で留守番していたからな。知らなくて当然だ。
それにしても、まさかここでゼルフィナと再会するとは。
でも、殺気も感じられないし、今のところは戦闘になる気配もない。警戒しておくに越したことはないけど。
「ポウラの復讐か?」
「違う。ポウラはお前によって撃破され、今は『大監獄ヘルヘイム』に収監されていると聞く。だからもうどうでもいい」
ヘルヘイムか……懐かしい場所だな。
というか、あそこって機能していたんだな。
随分と荒廃していたイメージだが、俺たちが知らぬ間に復旧したのかな。
「そうか。じゃあ、目的は?」
「ある人物を探していてな。お前たちが現れたとウワサを聞き、教えてもらおうと思ってな」
ゼルフィナはため息交じりに肩を落とす。なんだその苦労しているみたいな感じ。
聞き返すべきか悩んでいると、メサイアが声を掛けてしまった。……まあいいか。
「ある人物……?」
「グレン。グレン・アーカムを探している」
「グレン!? あの炎の騎士の……」
「そうだ。シベリウスの頼みでな」
ということはつまり、ゼルフィナはシベリウスの手伝いでもしているってことか。詳しく聞くと、どうやら路頭に迷っているところをシベリウスに拾われ、今は“付き人”として行動を共にしているようだった。
なるほどね、シベリウスがな。
となると、ゼルフィナについていけば会えそうだな。
「グレンを連れてこればいいんだな?」
「そうだ、サトル。それが条件だ」
「でも、なんでグレン? まさか“最後の修業”をサボったのか」
その通りだと言いたげに眉間に皺を寄せるゼルフィナ。マジかよ。グレンのヤツ、また逃亡していたのかよ。
仕方ない、無理やりでも連れてくるか。
シベリウスにさっさと『聖地マーリン』へ行く方法を教えてもらわないと世界が破滅するぞ。




