第588話 再びエルフの里カムランへ
「……あ!」
可愛い声を俺は聞き逃さなかった。これはリースだ。
「どうした?」
「サトルさん。ソウルフォースの使い手……あたし、アテがあります!」
「え、マジで!?」
エルフ族にそういう人がいるのだろうか。そうだよな、魔法使いといえばエルフだし。そう推測したのだが――それは違った。
「思い出してください、サトルさん。身近にいるじゃないですか!」
「身近に?」
うーん、そんな人いたかなぁ。
今までいろんな出会いと別れがあったからなぁ……ん、でもまてよ。そういえば、つい最近も不思議な力を目の当たりにしたような。
そうだよな。
俺はもっと前から『ソウルフォース』の力を目の当たりにしている。
……あ、まさか!
「スイカ、か?」
「そうですよ! スイカちゃんは不羈魔法使い。賢者です」
そういえば、彼女もソウルフォースの使い手か。つい最近では、エルフの里カムランで会ったな。……ああ、思い出した。
ポウラ戦の時に使っていたな!
「なるほどね。あの子か」
メサイアも思い出したようで、スイカなら可能性があると納得した様子。そうだな、彼女を連れてくるしか方法はない。
「婆さん、ここからは俺たちは独自に動く。きっと世界を救えるさ」
「よかろう。お主たちに世界の命運を託す」
背を向けるベイリンは、クシナを連れていく。
「ばあさま。妾もついていく」
「うむ。クシナ、よい働きであったぞ」
……まさか、グルだったのか。
この際、細かいことはいいか。
今はスイカをこのドワーフの里に連れてくる方が先決だ。
「となると、フォルの出番か」
「兄様、わたくしの転移スキルでスイカさんを探すのですね?」
「そうだな。確か、スイカはエルフの里カムランに残ると言っていたはず」
「ほお、カムランですか。丁度いいですね! 座標を覚えていますので、転移できます」
「ナイス!」
よし、ならば直ぐに出発だ。そう思ったのだが、ベルが静かに挙手した。
「わたしはドワーフの里に残るよ」
「来ないのか、ベル」
「うん。この里に興味があるし、なにか手がかりがないか調べてみるよ」
「なるほど。万が一もあるかもしれないし、手分けすっか」
「うん。こっちは徒労に終わるかもしれないから、あまり期待しないで」
それでも、なにもしないよりはマシさ。
ベルにはドワーフの里の調査を任せることにした。
俺たちはフォルの肩に手を置く。
「では、エルフの里カムランへ転移します! グロリアステレポート!」
上位の転移スキル『グロリアステレポート』。
以前は失敗しまくって、パーティが散り散りになったこともあった。だけど、今はきっと大丈夫だ。
フォルは日々、成長している。
今回は成功する。俺はそう信じている。
◆
【エルフの里カムラン】
瞼を開けると、そこには見覚えのある光景が広がっていた。
アヴァロンよりも大きな建物が立ち並び、都市にも匹敵する街並み。そして、以前よりもエルフたちが出歩いているところを見ると、無事に平和になったようだ。
「どうやら、今回は性転換していないようですね」
ホッと安心するリースだが……いや、正直わからん。
そう思ったのだが、目の前のお店から見知った顔が現れた。
「あれ? そこにいるのサトルさん!?」
「お! 君はルクル!」
「はい。相変わらずポーション屋を経営しています」
会った時は美少女だったが、今は立派な少年。そう、男の子だ。
正直、中性的すぎて分からんけど。
「久しぶりね、ルクル」
「あ、メサイアさん! それに、リースにフォルさんも」
リースとフォルもそれぞれ挨拶を丁寧に交わす。ルクルのお店にはずいぶんとお世話になったしな。
少し回想していると、メサイアがルクルに事情を話した。
「私たち、スイカを探しているの。知らない?」
「スイカさんですか。うーん、見てませんね」
「そう……」
てっきりルクルのポーション屋に住んでいるのかと思ったが、違ったが。
今は宿屋で泊まっているのだろうか。
それとも既に旅立ったか……。
「あ……でも、ポウラが倒されてしばらくしたある日、スイカさんの慌てた姿を見かけました」
「慌てた姿?」
今度はリースが聞き返す。
「うん。たぶん、家に帰ったのだと思います」
「家って、どこでしょうか……?」
フォルが首を傾げる。
「……“聖地マーリン”かと」
「まさか、出身地って聖地マーリンなのか」
「だと思います、サトルさん」
言われてみれば『聖者祭』の時にミクトランが言っていたかも。
ルクルによれば、そんなことをスイカがぽつりとつぶやいていたという。となると、聖地マーリンへ向かうしかなさそうだな。
「フォル、マーリンの座標ってあるか?」
「残念ながらありません。わたくし、聖地マーリンへ行ったことがないのです」
なんてことだ。となると、徒歩で向かうしかないのか。
こうなったら目指すしかないだろう。
スイカの力がどうしても必要だ。
「……そういえば」
「どうした、ルクル」
「シベリウスさんなら行き方を知っているかもしれません」
シベリウスって、あのグレンの師匠か。花の都フリージアの花の騎士だったらしい老兵エルフ。でも、強いんだよなぁ。
どうやら、このカムランに滞在中のようだし、話しを聞いてみるかね。




