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第三十四話 ブライアン商会 誕生

『映画よ。まずは映画を作るのよ』


 頭の中でディーヴァの声が響く。彼女は何を言っているのだろうか。


『映画ならフィルムに収めて、再生すればいいのよ。流石にテレビは無理だからね。まずはアニメ映画を作って配給するわけ』 


 いや、何の映画を作るのかわからないんだけど。


『ヒュー・キッドを主役にしたアニメ映画を作るのよ。それも十分ほどでいいわ。今の時代じゃ一時間以上の映画なんて耐えられないでしょうしね』


 だからなんで映画を作るのさ? そんなことをして何の意味があるの?


「いや、ディーヴァの言うことはわかるぞ。つまり君を世界的に有名なキャラクターにすればいいのさ」


 ズルタンが言った。


「アメリカでもデスティニーワールドという遊園地があるだろう? そこのフェイトマウスは世界的に有名だ。彼みたいな作品になるよう努力すればいいのだよ」


 ズルタンはそう言い切った。さすがは元日本のビジネスマンだ。僕も理解しかけてきたぞ。

 つまり僕をモデルにした映画を作る。内容はわかりやすい正義の味方が活躍する話がいいだろう。それを各地に配給するんだ。


「だがただのヒュー・キッドではだめだ。チャールズ・ヒュー・モンローが変身する過程を見せないと意味がない。そうすることでモンローは恐怖の大王から、正義の味方へと生まれ変わるんだ」


 こちらはミルズだ。確かにヒュー・キッドの正体を知らないと意味がないだろう。問題はその映画を誰が作るかだ。


『ニューエデン合衆国のリベルターシティがいいと思うわ。あそこはすでに水力発電などで電気製品が復旧し始めているのよ。それにアメリカなら世界一と言う記憶は世界中の人々の遺伝子に深く刻み込まれているしね』


 ディーヴァが言った。なるほど、それがいいかもしれないな。


「で、誰がその映画を作るかだが……」


 全員黙り込んだ。そもそも映画を作るノウハウなんか僕たちにはない。映画なんてどうやって作るのかもわかっていないんだ。いくら僕が天才でも経験をしたことがないことは無理である。


『問題ありませ~ん。映画は真仁まさみ機械女帝マシン エンプレスに依頼するからで~す』


 ディーヴァが明るい口調で言った。機械帝国マシン エンパイアならあらゆる機材が揃っている。昔は奴隷を使って農業を発展させたが、今は娯楽に力を入れているそうだ。キャバレーにはジャズシンガーたちが歌い、過去の映画作品を上映しているという。


『問題はヒュー・キッドの映画を仕切る会社だね。普通の人間に任せても、今の時代じゃ自分たちの住む世界に固執する可能性がある。みんなの中でママが社長になってもらいたいな』


 ディーヴァがウンディーネに話を振った。これにはウンディーネも驚いた。


「なんで私が社長にならないといけないのかしら?」


『ママは歳を取ったらザリガニが脱皮するように若返るでしょう? 周囲の人間には偽装結婚をして代々親族が経営するように見せかければいいのよ。さすがに私たち人造人間メタニカル アニマルが表立つのはまずいでしょう? 私だとすでに海賊の中では名が知れているから無理だしね』 


 それもそうだな。ウンディーネは下半身さえ隠せば人間に近い。ただ会社経営を任せるには知識があるかどうか。


「そちらは私が念話で教えればいい。それにリベルターシティはヒュー・キッドを敬愛している町だ。そこからヒュー・キッドのアニメ映画を広めるにはふさわしいと思う」


 ズルタンが言った。話はとんとん拍子で進む。僕らは新たなるステージに上がることとなったのだ。


 ☆


 数日後、僕はウンディーネを抱きかかえて、リベルターシティにやってきた。

 町はますます発展を遂げている。僕は町に降り立った。

 するとジャガーの亜人がやってきた。50代ほどだろうか。


「初めましてヒュー・キッド様。カルロス三世と申します。この町の町長でございます」


「カルロス三世。確か初代はすでに亡くなったんだよね?」


「はい、二世も亡くなっております。ですが本日はどのようなご用件でしょうか?」


 僕はカルロス三世に事情を説明した。ウンディーネが会社を立ち上げ、僕を主役にしたアニメ映画を広めるためだ。まずは作品を機械帝国に依頼しなくてはならない。

 そして映画を広めなくてはならないのだ。

 それを聞いたカルロス三世は涙を流した。感動しているようだ。


「そのような大事業を私ごときに……。承知いたしました、この私があなたの覇業の手伝いをいたします!!」


「覇業じゃないんだけどね……。でも上映する機械が必要じゃないかと思うんだ」


 そう映画を上映するにはフィルムと機械が必要だ。

 フィルムは撮影用とプリントフィルムが必要になる。特殊な薬品と素材が必要だ。


「そちらは機械帝国が製造しているので問題ありません」


 カルロス三世が言った。12年前と違って、リベルターとはある程度の交易をしているようである。

 奴隷も三世代になれば解放されるそうだが、機械帝国の暮らしを知ったら離れるわけがない。

 離れるとしたら機械帝国で得た知識を他の町に使うだろう。


「なら絵を描く人が必要だな。もっとも海とも山ともつかないからなりては少ないかもしれない。ある程度僕らの会社で稼がなければならないな。難しいところだよ」


「まずはマンガから始めた方がいいのではないかしら?」


 ウンディーネが教えてくれた。確かにそうだな。いきなりヒュー・キッドのアニメ映画をやっても困惑するだけだろうしね。


「ここには新聞はないのですか?」


「新聞ならありますよ。週に一度、街の出来事と、周辺の出来事を記事にしておりますが」


 カルロス三世が答えてくれた。なら新聞にヒュー・キッドの漫画を連載するんだ。そこから人気を得て、キャラクターグッズを作る。リベルターだけでなく、いろんな町にヒュー・キッドの魅力を伝えるんだ。とズルタンが教えてくれた。


「まずはそちらから始めた方がいいですね。それと詳しい話は私の家で聞きましょう」


 カルロス三世に誘われて僕らは家に向かった。会社の名前はブライアン商会と名付ける。

 ウンディーネ曰く、日本語で無頼庵という意味があるそうだ。誰にも頼らない庵ということらしいが、僕にはわからない。


 ウンディーネは車椅子に座り、魚の下半身をショールで隠している。街の人間は知っているが、将来、他の町から来た人間が驚かないようにするためだ。

 町には町長の他に警察署長もいる。町の有力者には正体を明かしておこう。


「まずは話を作る人を探さないとね」


「それなら私が描くわ。こう見えても昔はマンガを描くのが得意だったのよ」


「そうなんですか。初めて知りました」


 現実逃避の為にね、と小声でつぶやいていたが、聞かなかったことにしよう。人には誰もが闇を抱えている。無理やり聞き出す必要はない。


「まずはさらっと描いてみたわ。こんなのはどう?」


 そう言ってウンディーネはさらさらと紙の上にペンを走らせた。そして完成した原稿を見せてくれる。どれどれ。


 ☆


 僕はチャールズ・ヒュー・モンロー。正義の心を常に持っているんだ。


 あっ、女の子が巨大なアライグマに襲われている。へーんしーん!! (ぴかっと身体が光って人間からシャムネコの頭に変身した)


 ヒュー・キッドに変身した僕は100万馬力で空も飛べるんだ!!


 えーい、ヒューパーンチ!! アライグマをやっつけたぞ。さあ大丈夫だよ!!


 え? お腹が空いているの? でもお金がないからご飯が食べられないのか。


 よーし、さっき吹っ飛ばしたアライグマを解体しよう。干し肉やソーセージを作ってあげるね。


 さあ完成だ、召し上がれ!! おや家族も一緒に食べたいのかい、どうぞどうぞ。


 今日も困っている人のお腹を満たせて大満足だ、いえい!!


 ☆


 何とも言えない気分になった。よく考えれば漫画家であるガリバー先生に頼めばよかったんじゃないかなと思えてくる。

 だけどこれを見たカルロス三世は大絶賛だ。同居している息子夫妻や孫たちも大喜びである。


「すごーい!! こんな面白い漫画は初めてだ!!」


「モンロー様の人徳がにじみ出ている最高傑作だ!!」


「もっと続きを読みたい!!」


 ……なんだかな。どうしてこんな風になった?


「みんな単純な話が好きなんですよ。今まで娯楽のない時代が長かったのですから」


 ウンディーネが説明してくれた。確かにキノコ戦争が起きて74年近く過ぎている。機械帝国ならともかく、世界中では映画はおろか漫画すらろくにないのだろう。むしろわかりやすい内容の方がいいかもしれない。


『確かにウンディーネの内容がいいニャー。私だと心が汚れちょるから、もうそらとぶオムスビマンみたいな作品は描けにゃいのよね』


 ガリバーの声が聴こえてきた。本職がそういうのなら僕は何も言わない。カルロス三世は毎週新聞にヒュー・キッドの漫画を連載することを約束してくれた。そして作者名はミラー・ブライアンということになった。ウンディーネの本名、魅羅を当てたものだ。


 こうしてリベルターシティの新聞、リベルタータイムスでは毎週ヒュー・キッドの漫画が連載されることとなった。

 結果は大人気になった。子供たちは毎週ヒュー・キッドの漫画を楽しみにしていた。

 ブライアン商会ではシャツにヒュー・キッドの絵を載せたり、お菓子のパッケージにヒュー・キッドのキャラを入れたものが大ヒットになった。

 

 さらに十数年後には単行本が発行され、これがリベルターシティ以外各地でも人気を博したのだ。

 大人たちはチャールズ・ヒュー・モンローが正義の味方になることに難色を示していたが、子供たちには関係なかった。やがて子供たちは大人になるとモンローの悪行が徐々に薄れていったのである。

 

 ニューエデン合衆国では絶大な人気を誇ったが、海外ではまだ漫画を買う余裕がなかった。精々アマテラス皇国や鳳凰フォングァン大国くらいである。

 実はこの作品は39話で終わらせるつもりでした。

 ですが急ぎ足でクラウトと決着をつけることは不可能であること、さらにモンロー19との対決が描けなくなるので、54話をめどにすることとなりました。

 39話まではヒュー・キッドを世界的キャラクターにする話になります。

 敵と戦うのではなく、キャラクター商品で世界展開するのは私でも予測しませんでした。

 捜索は本当にミステリーだと思います。作者ですら予測がつかないのですから。

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