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第三十三話 スプーキー・キッズ 全員集合!!

「スプーキー・キッズ全員集合!!」


 僕はみんなを呼んだ。ここは中華帝国にある僕の研究室だ。暗くて狭くパイプが所々出ており、壁にはコンピューターが、真ん中には大きなガラスの瓶などがある。

 元々18歳の僕が世界中にいた108人の美女とにゃんにゃんするために作られたシェルターだ。

 結局失敗した挙句、肌を合わせた美女たちと自分の子供を毒ガスで殺害し、人造人間メタニカル アニマルに改造したのだから、ぞっとする。15歳の僕でも下手すれば心が獣になっていたかもしれないのだ。


「いきなりどうしたんだ? ヒュー・キッドよ」


 そこに丸い金属の塊が現れた。頭部には猫耳が付いており、目の部分は長方形の穴が開いており、二つの小さな光が灯っている。

 さらに下部には4つのプロペラ機が付いており、自在に空を飛んでいた。

 今の僕を人造人間に改造した張本人ミルズだ。頭の中身は杖技平蔵つえぎ へいぞうという日本人である。


「むふぅ。おひさしぶりですねぇ。元気してましたか?」


 今度はチンパンジーが現れた。普通のチンパンジーではない。チンパンジーの頭が3つに、腕が6本ある異形の存在だ。名前はアシュラで、日本名は杖技網厚つえぎ あみあつ。ミルズの孫だ。


「うん、元気にしていたよ。最後に会ったのはいつだったっけ?」


「う~ん、忘れたな。どうでもいいことだしね」


「そうだね」


 それでアシュラの会話は終わりだ。彼は研究に忙しいので、あまり僕たちと構っている時間はないのだ。


「最後に会ったのは12年前だ。まったくお前たちは時間にルーズすぎる」


 そこにミルズが注意した。機械の身体でもプルプル震えているので怒っていることがわかる。


「ところで君はスプーキー・キッズを全員集めると言ったな。話はオラクロ半島で終わったと思ったが?」


 そうオラクロ半島における事件はすべて念話で伝えている。

 僕らの仲間ゲルダが死んだこと。ウンディーネは身体を二つにねじ切られたけど、新しい身体を得たこと。そしてモンロースナックが僕のママであることを伝えていた。


「ゲルダの事は残念だったな。元々あいつは精神を病んでいたのだ。自分の息子が暴走し、孫に殺されたこと。そしてモンロークラウトの本性を知り、混乱してしまったのだろう。哀れなことだ」


 ミルズは嘆いた。ちなみにゲルダのオリジナル、龍雪花ロン シュエファは天寿を全うしたそうだ。頼れる孫に後を託し、満足のいく死を迎えた。羨ましいことである。


「ちなみにモンロースナックはここには来ないよ。彼女は僕と仲良くなる資格がないと言っていた」


 スナックはこれからもオラクロ半島の人間に対して、髪の毛を操る秘術を授けるという。あと26年後には箱舟が解放されるので、その前に彼等を迎え入れるよう教育しているそうだ。


「今回、僕らがスプーキー・キッズを集めるのは、そのことだよ。26年後に箱舟が開かれる。その子孫たちをどう迎え入れるかを課題にしたいんだ」


『あー、ごめん。私はパスね』


 これはディーヴァだ。彼女は海賊島バッドガイアイランドの女王だ。現在は数多くの海賊船が停泊し、様々な食材や物品を扱っている。


『というか念話があるんだから、わざわざ研究所に行く必要はないんじゃね? ヒュー・キッドはそこんところ気が利かないわよねー』


 彼女がけたけたソファーに座りながら、足を延ばして笑っている姿を思い浮かぶな。


「君の言う通りだけど、僕は直接会わないといけないと思うんだ。ゲルダの件も僕たちがきちんと話をしていれば暴走の兆しを察知できたかもしれないのに」


『イフの話をしても結果は変えられないわ。でもそれを反省するのは大事ね』


 ディーヴァが僕を慰める。本来は10歳で僕より年下だけど、僕より大人びているね。


「では、待つとするか」


 ミルズが言った。念話を送ったらディーヴァ以外は全員来るそうだ。

 来るのに三日かかったけどね。


 ☆


「では会議を始めるとしますか」


 ここは研究所にある応接間だ。僕とミルズ、アシュラと小さいウンディーネの他に、人面犬のズルタン、巨大なカラスのシンドバード、7匹の人間の頭部並みに大きいネズミのガリバー、植物の蔦で絡まった上半身隆々で下半身がないバオバブ、そして全身が金ぴかでサファイアの眼を持つハッピープリンスが集まった。


「……プリンス。今回の件は、ご愁傷様です。あまりに突然なことなので……」


「いいんだズルタン。私にとってゲルダは母と言うより、同年代の異性だ。気にすることはない」


 ハッピープリンスは慰めるズルタンに対してそう言い切った。プリンスとゲルダはあまり仲のいい間柄じゃないからな。慰めにもならない。


「それよりも大事なのはモンロークラウトだ。奴を殺さなければ未来はないのだろう?」


 プリンスが訊ねた。だけど僕は首を横に振る。クラウトを殺せばそれでいいわけじゃないんだ。


「クラウトは確かに人類抹殺を目論んでいるよ。でも今回ゲルダとキュニラスの件はクラウトとは関係ないんだ。この世界は僕を憎んでいる、憎み切っている。僕がノストラゴメスの大予言に記された恐怖の大王だからだ。僕が不幸になれば幸せになれると思い込んでいるんだよ」


「うーん。当時のノストラゴメスブームはすごかったニャー。テレビではいつも特番をやっていたし、本屋ではそっち関係の本が山積みだったギャー。ボクちゃんも漫画のネタにしていたけどねー」


 ガリバーが言った。この人は僕が大好きなそらとぶオムスビマンの作者なのだ。その一方でデモンダーXというロボットアニメの制作にも関わっている天才漫画家だ。


「うむ。わしも植物学者として世界中を見て回っていたがね。当時は植物たちが異様な状況になっていたぞ」


「バオバブよ。それは本当かね?」


「本当さ。植物の発育が異様だったね。春に咲く花が冬に咲いたり、とある国の外来植物が枯れ始めたりしていたな」


 外来植物は別の国から種などが運ばれ、その地に根付いたものである。中には悪意を持って外来植物をばら撒き、在来種を駆逐してしまう危険性があった。


「今思えば、世界中に埋まっていた神応岩スピリットガイアの影響を受けていたのかもしれぬ。なぜなら外来種はレアな在来種を駆逐し、価値を下げるからな」


 動物や植物に価値をつけるなんて意味不明だ。動植物が滅びるのは自然の摂理だ。わざわざ保護をする必要があるだろうか。そんなことを新聞のコラムに書いたら、ヴィーガン達が僕の家に銃弾をぶち込んだけどね。


「今世界はマウスピースたちが徘徊している。僕に嫌がらせをすれば幸せになれると思い込んでいるんだ。それも生身の人間じゃない、亡霊が相手なんだ。特定の人間を殺せば解決する問題じゃないんだよ」


 そう、ラスボスを倒して解決する話ではないのだ。例えモンロークラウトを倒したところで解決はしない。

 今回はキュニラスが登場したが、次回はどんなのが相手かわかったものじゃない。


「ところでゲルダやキュニラスの神応石スピリットストーンはどうなった? それを検査しなかったのか?」


 プリンスが訊ねた。そう僕は二人の遺体から神応石を回収して、アシュラに渡している。

 アシュラは前に出てゴホンと咳をした。


「結果的に言えば、ゲルダの神応石には異常な反応が出た。複数の人間の精神体がこびりついていましたね。そしてキュニラスは複数の神応石が出ました。さらに肉体の欠片を遺伝子鑑定した結果、やはり複数の異なる人種の遺伝子を検出しました。さらに神応石からはモンローを憎む声が聴こえてきましたね」


「わからんな。なんで世界はヒュー・キッド、いやチャールズ・ヒュー・モンローを憎むんだ? ノストラゴメスの大予言を信じるなんて大の大人にしては頭が悪すぎる」


 ズルタンが言った。日本人は僕の出生の秘密に対して理解してないのだ。僕は改めて説明することにする。


 僕はロザリア・ヒューとその父親の間に生まれた悪魔の子供であることを。

 みんなそのことを聞いて驚いていた。念話は自分が意識しなければ通じることはない。キュニラスの戦いではプリンスや他のメンバーしか聞いていないのだ。


「……君の事は改めてジョセフ殿から聞いていたが、実際に聞くと物凄い話だな……」


 ミルズが神妙な面持ちで答えた。


「ちょっと、そんな話をしなくてもいいのですよ。あなたが傷つく話をする必要はないのです」


 小さいウンディーネが言った。彼女は近くで僕の話を聞いている。僕を気遣ってくれたのだろう。


「そうだな。君がどんな生まれであろうと関係ない。オルディネ教では愛されることを重要視しているが、これから人を愛し、愛されればよいのだ」


 ズルタンが真面目な顔で言った。


「うーん、オルディネ教の影響が強いニャー。なんたってオルディネ教は近親相姦を嫌ってますからニャー」


「そうだな。儂もヨーロッパ辺りまで調査旅行に行ったことがあるが、モンローに対する憎悪が異常すぎたよ。一部の村では悪魔の子として顔写真を付けた藁人形を燃やして喜んでいたな」


「宗教は生活の基盤を支える重要なものだ。神の存在を信じるからこそ、人は自分の行いに気を付ける。かといって自分の不甲斐なさを他人に押し付けるのは感心しないがね。だからこそ弁護士の仕事は無くならんのだよ」


 ガリバー、バオバブ、シンドバードも口々に言った。


「僕は世界中を回って、お腹が減る人を助けてきた。でもマウスピースがそれを台無しにする。モンローセンプにしろ、モンローエクストラにしろ彼等の行為はマウスピースに比べれば他愛ないことだ。世界中の人間が僕を恐怖の大王として大地が記憶している以上、僕を憎む声は無くならないだろう。まったく頭が痛いよ」


 この件は終わりがないのだ。クラウトが人類抹殺を目論んでも、放置したくなるレベルである。


『おんや~、皆様、悩んでおりますな~』


 そこにディーヴァの声がした。お気楽だな。


『そもそもノストラゴメスの大予言が流行したのはマスコミのおかげでしょう? ならこちらもマスコミの力で対抗すればいいわけよ』


 彼女は何を言っているのだろうか?


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