6 〔ドライブ〕取引
ホムステン
「≪天上界≫の〈天界人〉は、〈命糸〉を新たに作り、魂と肉体を繋げて、定着をさせる事が出来るんだ」
かなみ
「…………作る?? 直すんじゃなくて??」
ホムステン
「切れてしまった〈命糸〉を修復させる事は、〈天界人〉の力を持ってしても不可能だよ。それは〈大自然の法則〉から外れてしまう事だからね」
かなみ
「大自然の法則ぅ?? 何なのそれ?」
ホムステン
「君が生き返れたなら教えるよ。話すと長くなってしまうからね」
かなみ
「…………ふ〜ん……そうなの?」
ホムステン
「ボクは君に〈天使付〉になって貰いたいんだよ」
かなみ
「ぬな? ……天使付ぃ?? 何なのそれ?」
ホムステン
「言葉の通りだよ。ボクは君(魂)と肉体を繋げる為に新たな〈命糸〉を作る。ボクの持つ力で君(魂)を肉体へ定着させる。そうする事で、本来ならば死んだ筈の君は、現世に生還する事が出来るんだ。君は晴れて〈天使付〉の人間となる。〈エーテル〉の少ない≪地上界≫で、実体化の出来無い〈天界人〉のボクは、君達〈地上人〉を構成している〈原質〉の〈クォーム〉を〈エーテル〉へ変換する事が出来る様になる。〈クォーム〉を〈エーテル〉へ変換する事が出来れば、君はボクの姿を見る事が出来るし、〈天界人〉の力をボクを媒体にして使える様になるんだ」
かなみ
「──私、生き返れるの?! やったぁっ!!」
ホムステン
「嬉しい気持ちは解るけど、喜ぶのはもう少し待って欲しいかな」
かなみ
「どうして?」
ホムステン
「〈天使付〉になった君に、ボクの手伝いをして欲しいからだよ」
かなみ
「ホムステンさんの手伝い?? 何をしたらいいの?」
ホムステン
「それはね……〈悪魔付〉を捜し出して、人間の肉体から〈悪魔〉を追い出して欲しい」
かなみ
「…………悪魔付ぃ?? 悪魔を祓う?? ……──あっ、分かった! 外国のエクソシストみたいに祓うの?」
ホムステン
「≪地上界≫で〈地上人〉によって行われている〈悪魔祓い〉とは違うよ。抑、〈地上人〉の考えた〈悪魔〉という悪しき存在は、空想の産物でしかなく、実在はしない。あれは全て〈神芝居〉と言ってね、君達〈地上人〉の言う所の〈神様〉のお芝居なのだよ」
かなみ
「…………えと…よく分からないんだけど……」
ホムステン
「分からなくてもいいよ。今は、未だね。ボクの言う〈悪魔〉と言うのは〈魔界人〉の事だよ。彼等は〈タウナール〉という〈原質〉で構成されている。今のボクの様に、〈地上人〉の肉眼では見え無いから、存在を認識する事が出来無い。それをいい事に〈魔界人〉は、手頃の〈地上人〉を見付けると、〈命糸〉を強引に絶ち切ってしまう。魂と肉体を無理矢理に引き離し、肉体から追い出した魂を喰らう。喰らった魂の記憶を手に入れた〈魔界人〉は、次に肉体を手に入れる。肉体を得た〈魔界人〉は、そのまま〈地上人〉として人間社会で生きるんだよ。そして、破壊衝動を抑えきれずに悪の限りを尽くすんだ」
かなみ
「…………悪い事をするの?」
ホムステン
「そうだよ。〈クォーム〉を〈タウナール〉に変換して、力を使ってね。ボク達は彼等を〈悪魔付〉と呼んでいる。〈天使付〉の君に〈天界人〉の力を使って、〈悪魔付〉を見付け出し、肉体から〈魔界人〉を追い出して欲しいんだ。それがボクの言う〈悪魔祓い〉だよ」
かなみ
「………………〈魔界人〉が離れた肉体はどうなるの? 魂は〈魔界人〉に食べられちゃったんだよね? 魂は肉体に戻るの??」
ホムステン
「魂は戻らないよ。肉体は死を迎えた時の状態に戻る。〈命糸〉を切られた時点で、死んでしまっているからね。〈魔界人〉に喰われてしまった魂は消えてしまうよ。〈魔界人〉に吸収されてしまうからね」
かなみ
「………………それじゃあ…そんなんじゃあ、助けたって意味無いじゃん!!」
ホムステン
「無意味では無いよ。≪地上界≫で悪さをする〈悪魔付〉を減らす事が出来れば、〈悪魔付〉が起こす事件件数が減少すれば、巻き込まれる〈地上人〉も減る事になるね。その分、世の中は平和になる。安心して平穏に日々を暮らせる様になる」
かなみ
「…………でも……──あっ、だったら! ホムステンさん、人間の身体を手に入れ様としている〈魔界人〉を捕まえる事が出来たら、被害も一番小さくて済むんじゃないのかな?」
ホムステン
「それは出来無い」
かなみ
「どうして? 出来無いって……何で??」
ホムステン
「≪地上界≫には〈エーテル〉〈タウナール〉の〈原質〉が少ない。〈天界人〉〈魔界人〉の姿を肉眼で見る事は出来無い。それは〈天使付〉になっても同じ事……。〈天使付〉に見えるのは、君意外の〈天使付〉と〈悪魔付〉だけ。行為を行う前の〈魔界人〉を捕まえる事は出来無い。〈魔界人〉が行為を終えた後──、〈悪魔付〉となってからしか、〈天使付〉の出来る事は無いよ」
かなみ
「──そんなのって……無いよ……。友達が──友達が目の前で〈魔界人〉に襲われていても、私は何も出来無いって事だよね!! 〈魔界人〉に〈命糸〉を切られて、魂を食べられて、身体を取られるのをだよ、黙って見ている事しか出来無い──って事だよね!! そんなの……嫌だよっ!!」
ホムステン
「こればかりはね、どうする事も出来無い」
かなみ
「〈天界人〉の力……ホムステンさんの力で何とか出来無いの?」
ホムステン
「≪地上界≫には〈天界人〉や〈天界人〉の力──〈天力〉を構成する〈原質〉が少ないからね。≪天上界≫で当たり前に使える〈天力〉も此処(地上界)では使えない。≪生と死の狭間の世界≫だから〈天力〉を使えているんだよ」
かなみ
「…………その〈天力〉を≪地上界≫で使える様にする方法は……〈天使付〉を媒介にして〈クォーム〉を〈エーテル〉に変換するしか無いんだね……」
ホムステン
「そうだね。──越前かなみ、ボクの話を聞いてくれて有難う。君の気持ちを教えて欲しい。……今も変わらず生き返りたいかい? それとも、このまま死を受け入れ、来世へ進むかい?」
かなみ
「…………うな? 来世へ進む──って? どういう事? 死んじゃうんでしょ?」
ホムステン
「死を迎えると魂は肉体から離れる。肉体は遺体として家族の元へ帰り、先祖代々から成る〈家墓〉に遺骨を納められ、尊葬されるね。──〈今世〉という名の部屋に居た魂は、襖を開け〈生と死の狭間の世界〉を通り、〈来世〉という名の部屋へ移動する。これが転生をする(生まれ変わる)という事だよ。──大宇宙に存在している何処かの星の何処かの世界の何処かの誰か……若しくは別の生物として、転生をする事になる」
かなみ
「…………地球じゃなくて、日本じゃなくて、日本人じゃなくて……人間でもなくて……って事??」
ホムステン
「そうだよ」
かなみ
「………………」
ホムステン
「越前かなみ、君はどうしたいんだい」
かなみ
「…………私……私は…………私は──、生まれ変わらない!!」




